自動車関連情報の利活用と自動車保険

走行距離連動型自動車保険(PAYD)は一部の保険会社がやっていますが、国土交通省の検討会でPAYDやそれ以上のことが取り上げられていました。
「「自動車関連情報の利活用に関する将来ビジョン検討会」の開催について」
http://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha06_hh_000041.html
国土交通省 報道・広報 > 報道発表資料 2014.2.19)
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自動車保険関係の記載としては第1回検討会(2014.2.24開催)の議事録に以下のようにあります。

○ 自動車損害保険の商品設計にあたっては、すべての自動車ユーザーに対して公平、公正であることが必要であることに留意し今後の検討を進めるべきではないか。
また、公正な保険の実現のために、不正請求等、保険を悪用する者を排除できるような仕組みを検討するべきではないか。

また、「【資料2】自動車関連情報の利活用の現状について」に以下の内容がありました。
 
 
 
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この検討会は今後具体的な検討を行うこととしており、2014年4月下旬に開催予定の第3回で一般社団法人日本損害保険協会の委員がプレゼンテーションをすることになっています。
どんな話が出てくるのか興味深いです。
ただ、技術の利用ばかりが先走って、リスク細分のやり過ぎで保険が複雑になるのなら、あまり感心しないです。そういうのは、後になって、また不払いや不適切な募集ということになるでしょうから。
 

Facebookのいいね!で保険料割引−チューリッヒの自動車保険

Facebookに関して最近やや下火になってきたような気がするのですが、チューリッヒ保険会社が興味深い取組みを行いました。
Facebookで『いいね!』をすると、自動車保険の保険料を割り引くというものです。
なお、チューリッヒ保険会社には「スーパー自動車保険」と「ネット専用自動車保険」の2種類(バイク保険は無視しています)の自動車保険があり、多少の違いがあります。そのうちの「スーパー自動車保険」の新規契約に対して適用するようです。
「業界初 Facebookの『いいね!』で契約時に500円割引
 「スーパー自動車保険」で「いいね割引」を開始」
http://www.zurich.co.jp/aboutus/news/release/pr140306.html
チューリッヒ保険株式会社 ニュースリリース 2014.3.6)

「いいね割引」は、Facebookの『いいね!』機能と商品の割引を連動させた、保険業界初の取組みです。2014年6月1日以降が保険始期日となる「スーパー自動車保険」について、インターネット上での新規契約※を対象に、お見積り額にお客様が納得し当社のFacebookに対する『いいね!』を押すことで、契約時に一律500円の割引が適用されます。
   − 略 −
※ 新規契約とは純新規(初めての自動車保険のご契約)または、他社からの移行および複数所有新規契約を指します。

同社はおそらく他社からの契約奪取用に価格競争力のある「ネット専用自動車保険」を作り、その比重が増えているのではないかと思います。その一方で比較的保険料の高い「スーパー自動車保険」の方は漸減しており、収支残に悪影響を及ぼしているのかもしれません。
また、同じ保険会社の自動車保険で両方とも個人を対象としたものであるにもかかわらず、ロードサービスの有無や補償内容・保険料等に差異のある自動車保険があることによって、チューリッヒ自動車保険としての宣伝がし難くなっているのではないかと思われます。なんとなくですが、広告の露出も減ったような気がしますし。
そこで、「スーパー自動車保険」の販売をてこ入れするために、広告費分の社費を原資とした付加保険料の割引として、この割引を創設したのではないかと思います。
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ただ、割引適用の運用に関して、いいね!を取り消してから再度押した場合にも適用するかどうかとか、Facebookのアカウントと自動車保険の保険契約者の同一性の確認はどうするのかとかの問題も考えられます。
また、継続契約には適用しない点で既に「スーパー自動車保険」に加入している契約者からの苦情は免れないと思います。
今後どうなるのか、非常に興味深いです。
 

各社の自動車保険ノンフリート等級制度改定年月

以前に「自動車保険参考純率(等級制度)改定(2011年9月届出)」(2012.6.3)で書いた等級制度について、各社の導入時期を調べてみました。

やはり多少ばらけています。この導入のタイミングの相違を利用すれば、事故有であっても事故有係数が適用されないケースが生じたことになります。今はもう不可能ですが。
あと、導入をするかどうか私が疑問を持っていた共済もどうやら導入した模様です。
 

アメリカンホーム−自動車保険に走行距離のリスク細分追加

アメリカンホーム保険会社がファミリー自動車総合保険について2014年5月からリスク細分項目に年間走行距離を追加する改定を行う旨のニュースリリースがされていました。
以前に「アメリカンホーム自動車保険の衝突被害軽減ブレーキ装置割引の勇み足(2013.10.13)」で書いた時には、同社は年間走行距離別料率も同時に撤回したのですが、今般改めて年間走行距離別料率のみを導入することにしたようです。
アメリカンホーム『ファミリー自動車総合保険』で、2014年5月1日より「年間走行距離区分」を導入」
http://www.americanhome.co.jp/news/20140224.html
アメリカンホーム保険会社 ニュースリリース 2014.2.24)
内容は一般的なもので、特に注目すべき事項はなさそうです。
また、2013年7月8日に同社がニュースリリース(7月29日に撤回済み)した内容のうち年間走行距離区分の導入について説明しているものと同一です。
 

イーデザイン損保−自動車保険に地域・走行距離のリスク細分追加

イーデザイン損害保険会社が2013年9月に自動車保険の改定をしました。
自動車保険改定のお知らせ−2013年(平成25年)9月1日実施−」
http://www.edsp.co.jp/company/company_009/2013/2013_06_23.html
イーデザイン損害保険会社 お知らせ 2013.6.23)

1.保険料の算出方法を改定
 イーデザイン損保自動車保険では、ご契約されるお車や主に運転される方の情報などに基づいて保険料を算出していますが、さらにお客さま1人ひとりのリスク実態に合った保険料となるように、お車の「前年走行距離」「主な使用地」に基づいて保険料を算出するよう改定します。
2.搭乗者傷害保険・医療保険金の支払方法を改定
 搭乗者傷害保険・医療保険金(入通院給付金)について、ケガの部位・症状に応じた金額をお支払いする方法から、一律5万円をお支払いする方法に改定します。
3.その他、約款や保険料水準などの改定

おそらく、最大の目的は保険料の増収と損害率の改善ではないかと思われます。
ただ、詳しく試算していないし、今となっては改定前の保険料との比較はできないので私の推測ですが。
しかし、イーデザイン損保は開業時は事故ありでも契約できることや若年層でも加入しやすいことを謳っていたのですが、最近はあまりそのことを前面に出していません。
ダイレクト系損保ではどの会社もターゲットとしていないので良い方針かと思ったのですが、ボリュームが小さくて収入保険料の拡大が難しいのか、損害率が高くて収益に問題があるのか、あるいはその両方の問題があったのではないかと思います。
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と、ここでイーデザイン損保自動車保険改定のことを書いていますが、既に2014年4月にも自動車保険の改定がされているようです。
そちらの方はお知らせに記載されていないので、大した改定はないのではないかと思いますが、今のところ調べていません。
  

高齢者募集に関する規制

金融庁のサイトにて2013年12月10日に「保険会社向けの総合的な監督指針」の改正案が公表されました。その内容のほとんどが統合的リスク管理態勢に関するものなのですが、高齢者に対する保険募集の規制強化もありました。
「「保険会社向けの総合的な監督指針」及び「保険検査マニュアル」等の一部改正(案)の公表について」
http://www.fsa.go.jp/news/25/hoken/20131210-2.html
金融庁 報道発表資料 2013.12.10)

Ⅱ−4−5−1 顧客に対する説明責任、適合性原則
Ⅱ−4−5−1−1 顧客保護を図るための留意点
保険会社は保険募集にあたって顧客保護を図るため、以下の項目に留意する必要がある。
(1)〜(3)(略)
(4) 高齢者に対する保険募集は、適切かつ十分な説明を行うことが重要であることにかんがみ、社内規則等に高齢者の定義を規定するとともに、高齢者や商品の特性等を勘案したうえで、きめ細やかな取組みやトラブルの未然防止・早期発見に資する取組みを含めた保険募集方法を具体的に定め、実行しているか。
その際の取組みとしては、例えば、以下のような方策を行うなどの適切な取組みがなされているか。
① 保険募集時に親族等の同席を求める方法。
② 保険募集時に複数の保険募集人による保険募集を行う方法。
③ 保険契約の申込みの検討に必要な時間的余裕を確保するため、複数回の保険募集機会を設ける方法。
④ 保険募集を行った者以外の者が保険契約申込の受付後に高齢者へ電話等を行うことにより、高齢者の意向に沿った商品内容等であることを確認する方法。
また、高齢者や商品の特性等を勘案したうえで保険募集内容の記録(録音・報告書への記録等)・保存や契約締結後に契約内容
に係るフォローアップを行うといった適切な取組みがなされているか。
これらの高齢者に対する保険募集に係る取組みについて、取組みの適切性等の検証等を行っているか。

 
そして、パブリックコメントの結果が公表されており、ちょっと気になったので取り上げておきます。
「「保険会社向けの総合的な監督指針」及び「保険検査マニュアル」等の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等について」
http://www.fsa.go.jp/news/25/hoken/20140228-2.html
金融庁 報道発表資料 2014.2.28)

これはどう対応するのか迷う保険会社が出てきそうな気がします。
それにしても規制自体に唐突感がありますが、これは高齢者をターゲットに保険募集をするような募集人がいたということでしょうか。それは凄くありそうで、嫌な感じです。
一方で、高齢者に対する規制を厳しくすることは健常な判断力のある高齢者が保険加入をする妨げにもなりそうで、それはそれで苦情が寄せられそうな気がします。
 

監督指針改正−反社会的勢力対応

株式会社みずほ銀行の提携ローンであった反社会的勢力問題とか損保業界でようやく暴力団排除条項の導入がされてきたこととかがあってか、金融業界の監督指針の改正がされるようです。
「「主要行等向けの総合的な監督指針」等及び「金融検査マニュアル」等の一部改正(案)の公表について」
http://www.fsa.go.jp/news/25/20140225-1.html
金融庁 報道発表資料)

金融庁は、今般の提携ローンの問題も踏まえ、平成25年12月26日、反社会的勢力との関係遮断に向けた取組み策を公表した。これらの取組みを推進するため、以下のような構成で(1)反社会的勢力との取引の未然防止(入口)、(2)事後チェックと内部管理(中間管理)、(3)反社会的勢力との取引解消(出口)に係る態勢整備等についての着眼点を追加する、所要の改正を行う。
a.組織としての対応
b.反社会的勢力対応部署による一元的な管理態勢の構築
c.適切な事前審査の実施
d.適切な事後検証の実施
e.反社会的勢力との取引解消に向けた取組み
f.反社会的勢力による不当要求への対処

「保険会社向けの総合的な監督指針」や「保険検査マニュアル」では、概ね対応が強化されるよう変更されていますが、一点『被害者救済の観点を含め個々の取引状況等を考慮しつつ、』が挿入されている部分だけは反社会的勢力対応よりも被害者救済を優先するよう甘く変更されています。
これは、保険約款の暴力団排除条項において、賠償責任保険については免責対応しないことや警察からの情報を得られにくいことを配慮したものではないかと思います。
確かに監督指針だけ先走って厳しくなっても無意味です。損保業界からするとこのタイミングでの監督指針等の改正は妥当と感じられます。