地震保険イ構造の記述

地震保険の改定について、損害保険料率算出機構が公開した資料を見ていて気づいたことがあるので書こうと思います。
今回の改定では、構造区分の判定基準の見直しがなされました。それによって、イ/ロ構造の判定基準が変更されています。それによって、「地震保険基準料率表」の建物の構造区分の項が変更されています。
余談ですが、「地震保険基準料率表」については当初の11月28日版と異議申立により再提出した3月25日版は、日付以外にまったく違いがないようです。
 
つい先日の3月25日に届け出た「地震保険基準料率表」において、料率区分は以下のとおりとなっています。

3 建物の構造区分
建物の構造区分は、下記の基準に従い、算出前提条件による。
ただし、下記(1)の地震保険契約において、この地震保険を付帯する保険契約の保険期間の始期がこの基準料率の実施日の前日までの場合における建物の構造区分の基準は、なお従前の例による。
(1) 下記(2)以外の地震保険契約
 構造区分 | 基準
 イ構造  | 耐火建築物、準耐火建築物および省令準耐火建物
 ロ構造  | イ構造以外の建物
(2) 特約火災保険契約(注)に付帯する地震保険契約
   (略)

耐火建築物、準耐火建築物および省令準耐火建物の要件は、「地震保険基準料率表」には書かれていません。それは"算出前提条件による"ということなのでしょう。この書きぶりでは、「耐火建築物」「準耐火建築物」「省令準耐火建物」のいずれかに該当した場合のみ、イ構造ということになります。
イ構造に該当する建物は、損保料率機構が3月25日に出したニュースリリース資料によると、以下のとおりです。

1.下記のいずれかに該当する建物
 (a)コンクリート造建物
 (b)コンクリートブロック造建物
 (c)れんが造建物
 (d)石造建物
 (e)鉄骨造建物
2.耐火建築物(建築基準法第2条第9号の2)
3.準耐火建築物(建築基準法第2条第9号の3)
4.省令準耐火建物(注)
(注)独立行政法人住宅金融支援機構の業務運営並びに財務及び会計に関する省令第39条第3項に定める耐火性能を有する構造の建物として、同機構の定める仕様に合致するものまたは同機構の承認を得たものをいいます。

さて、イ構造とは、耐火建築物、準耐火建築物および省令準耐火建物 と「地震保険基準料率表」で定めていますが、↑の書きぶりでは1.の部分について「耐火建築物」「準耐火建築物」「省令準耐火建物」のいずれに該当すると読めばいいのでしょうか?どうせどれかに該当するのだからイ構造で良いではないかというのは、定義に基づいて運用する世界の中では乱暴すぎる考え方です。
思うに、「地震保険基準料率表」の建物の構造区分の規定の書き方が適切ではないのが、この不整合の原因です。今回の構造区分の見直しの趣旨を踏まえて規定を記述するなら、イ構造を以下のように定めるのが妥当かと思います。
イ構造 | 耐火建築物、準耐火建築物、省令準耐火建物または耐火もしくは準耐火に相当する構造の建物
 

  
念のため、現在の地震保険についても触れておきます。
現在の地震保険2006年9月26日に届け出た「地震保険基準料率表」(2007年10月1日始期から適用開始)が適用されています。
この「地震保険基準料率表」においては、料率区分は以下のとおりとなっています。

3 建物の構造区分
建物の構造区分は、下記の基準に従い、機構の定めるところによる。
 構造区分 | 基準
 イ構造  | 耐火構造の建物および準耐火構造の建物
 ロ構造  | イ構造以外の建物

建物がどんな構造なら耐火構造準耐火構造に該当するのかは、「地震保険基準料率表」には書かれていません。それは"機構の定めるところによる"ということで、具体的な基準については別の資料になっていて、そこには火災保険の耐火(A,B構造または特,1,2級)/非耐火(C,D構造または3,4級)と同じである書きぶりになっているはずです。
耐火構造準耐火構造の定義は、損保料率機構が11月28日および3月25日に出したニュースリリース資料によると、以下のとおりです。これなら、「地震保険基準料率表」と不整合は生じません。

1.耐火構造の建物
 (a)コンクリート造または耐火被覆鉄骨造の建物
2.準耐火構造の建物
 (a)外壁がコンクリート造の建物
 (b)土蔵造建物
 (c)鉄骨造建物で、外壁が不燃材料または準不燃材料の建物
 (d)準耐火建築物