チューリッヒの火災保険と改定(2022年10月)

今更の話題ですが、2022年3月からチューリッヒ保険会社が火災保険を販売開始しました。
どんな火災保険かと思って、約款を見てみたら、ほぼ標準約款の住宅総合保険でした。
正式名称を見てみたら、「【価額協定保険特約(建物新価・家財新価用)付き「住宅総合保険」」でした。
しかし、標準約款に特約として存在する破損・汚損の補償も付けることができません。
一方、標準約款にない補償としては臨時費用と個人賠償責任がありますが、これらはどの火災保険にも普通にあるものです。
補償としては目新しいところは何もないし、寧ろ大手社が標準約款からプラスαで補償を拡張している内容がないので、微妙なところで他社の一般的な火災保険よりも補償は劣っていると言えそうです。
 
補償以外の面では…
住総なので、当然、住宅物件のみ引受です。もちろん、併用住宅は不可です。
あと、持ち家である建物を保険の目的物としており、家財のみの引受は不可です。建物と同時に家財を付保するのはです。
建築年月が1981年5月以前の古い物件は引受不可です。
保険期間は1年のみで、長期契約は不可です。
保険料の払込方法は一括払のみ、支払方法はクレジットカード払のみです。
保険料の額については、後で触れます。
そして、最も大きなポイントは、インターネットで手続きをできる点です。
とは言っても、自動車保険のように見積り~契約締結を一気に完結できるということではありません。
見積りはインターネット上で簡単にできますが、その後は、書類を同社にアップロードする必要があります。そして、同社で契約条件の確認をし、問題なければ契約締結というステップとなっており、見積りから契約締結までに数日がかかります。
契約にあたって構造級別が正しいかなどの確認は一般消費者には無理なので、このステップは仕方がないことであり、同社が劣っているというわけではないです。
 
そして、保険料の額についてですが、2022年3月に販売開始した時はニュースリリースで“ダイレクト型ならではのリーズナブルな保険料”と謳っておりますが、2022年10月始期で料率改定をしており、かなり値上げしています。
ある条件で、改定前と改定後の保険料(建物のみ・T構造)を見積もっていたところ、+43%もの値上げになっていました。
2021年5月の参考純率改定で損害保険料率算出機構が当局に届け出た改定率は、住宅総合保険で平均+10.9%とのことですから、随分上げており、もはやリーズナブルと言える水準ではないと思います。
 
商品開発自体はかなり簡潔に行われており、参考純率から外れたことはほとんどないので、当局の認可は商品面に関しては比較的容易に取れたのではないかと思います。
個人的な感触としては、ここんところ災害の当たり年が続いているので、リスクを極力回避する形で、ミニマムスタートを切ったんだろうなという気がします。
新たに火災保険という大きなマーケットにある分野に進出したにしては、広告とかを出して、お金をかけて販売を促進しようという気配も見えませんし。