日本興亜損保の自動車保険改定(保険法対応)(其の壱)

日本興亜損害保険株式会社は、2009年12月1日始期で自動車保険を改定します。その改定後の自動車保険の約款等を同社サイトにて参照できるようになっているので、見てみました。
その内容を見たところ、今回の改定の主旨は保険法対応のようです。ついでに商品改定も行われていますが、おまけと言っても良い程度の内容です。
「Eco-Net約款」
http://www.nipponkoa.co.jp/eco-net/index.html
日本興亜損害保険株式会社 Eco-Net約款)
ちなみに Eco-Net約款 と名付けられていますが、同社が従来から作成していたご契約のしおり(安心ガイド)と内容は同じものであり、それのPDF版に対して名前だけを変えたもののようです。なお、日本興亜損保は1つ前の改定(2008年12月)から、ご契約のしおり(安心ガイド)のPDF版をサイトにて公開しています。
 
日本興亜損保の証券添付約款(ご契約のしおり)の良いところは、従来の自動車保険からの改定点を説明している点です。今回作成の証券添付約款はその部分が従前のものよりもカットされており、1世代前との違いのみになっていますが、それでも記載のある分だけはるかにマシです。と言うのも、多くの契約者は前年と同じ内容で自動車保険を継続するため、契約内容の細かい違いについて知る機会がほとんどないからです。そのため、証券添付約款に改定による変更点を載せることには意義があると思います。
そこで挙げられている改定点につき、順に見ていくこととします。ただし、最初の 1 は単なる平明化であって、商品そのものの改定ではないのでパスします。
 

2 初回保険料の口座振替に関する特約の改定
初回保険料の振替時期について、お客様のご希望によりご契約期間が始まる月の翌月とすることができます。なお、分割払でこの方法をお選びいただいた場合、最終回の振替えがご契約期間終了後となるケースがありますのであらかじめご了承ください。

初回口振特約の改定です。振替時期は特約内で明記していないので、これは特約そのものの改定ではなく、内規にて運用している部分の改定のようです。おそらく、初回保険料払込み前の保険金支払に関する特則(新特約第4条)の新設は、この改定によるものと思われます。
他にも、積特の場合の読替規定(旧特約第2条第4項)の撤廃がありますが、これは積立を販売中止にしたことによるものでしょう。特約から読替規定を認可レベルで落としたということは、積立自動車の販売再開はないことを意味すると思います。
 

3 補償内容などの改定
1 対物賠償保険
次の対物賠償事故につきましては、ご契約金額が「無制限」であっても、お支払いする保険金の額は1回の事故につき10億円を限度とします。
●「ご契約のお車」または「ご契約のお車が牽けん引中のお車」に業務として積載している危険物の火災、爆発または漏えいによる事故
●航空機に対する事故

危険物の積載・牽引時の対物賠償に対して無制限ではなく一定のバーを設けるのは、2008年8月3日の首都高速5号池袋線タンクローリー横転・車両火災事故の影響によるものと思われ、各損保が同様の対応を行っているようです。無論、危険物の積載・牽引は免責にする約款の場合は、対応不要です。このあたりは、6月17日に「東京海上日動の自動車保険7月改定」で書いたことと同じです。

2 人身傷害保険
(1) 補償を受けられる方が提起された加害者への損害賠償請求訴訟により、弊社の約款に基づいて算出した損害額を超える損害額が認められた場合、訴訟により認められた損害額から既に受領済の損害賠償金などを差し引いて保険金をお支払いします。ただし、次のいずれか低い額が限度となります。
●人身傷害保険のご契約金額(所定の重度の後遺傷害が生じた場合はご契約金額の2倍の額)
●弊社の約款に基づいて算出した損害額
(2)損害額のうち補償を受けられる方の過失割合のみを保険金請求できる取扱いを廃止します。
(3) 「人身傷害に関する交通乗用具危険補償特約」をセットされた場合、これらの特約の補償を受けられる方が別居の未婚のお子様のマイカーにはねられたことによるケガを補償の対象とします。

日本興亜損保は人身傷害そのものが他社のものに比べて、若干変わっているような気がします。(1)と(2)はそれに関係がありそうですが、近いうちに他社と内容の比較をしてみることにして、今回はパスします。
(3)は地味な補償範囲拡大のようです。今回、他にもたくさん変更点がある中でこれを取り上げて記載する意図がイマイチ分からないです。

3 事故・故障代車費用補償特約(実損支払)
支払対象期間について、「事故発生日などから30日後の日まで」から「代車のご利用開始日からその日を含めて30日、かつ、事故発生日などの翌日から起算して6か月以内を限度とする日まで」に延長します。
なお、上記の支払対象期間の延長などを踏まえ、特約保険料を引き上げさせていただきます。

これも補償範囲拡大です。
確か、このあいだ損害保険料率算出機構が行った参考純率改定では、この特約は参考純率から外れたように覚えています。次の改定でどうするのでしょうか。
 

4 危険物割増の廃止
「ご契約のお車」または「ご契約のお車が牽けん引中のお車」に危険物を積載する際の保険料の割増を不要とします。

これは、今までは「危険物の積載・牽引」は通知事項で通知があれば割増料率をとって担保することができたのですが、保険法では通知は一律事後に遅滞なくすれば良いこととなりました。それに伴って、事故があった場合のみ通知されるモラルリスクの懸念があるため、通知不要とし割増料率も撤廃し、その分の保険料を薄く全体に乗せることにしたのでしょう。
保険法対応で標準約款では、「危険物の積載・牽引」と「競技・曲技・試験」に関しては、これまで通知事項だったものを免責事項に変更しました。日本興亜損保は、「競技・曲技・試験」のみを免責事項に移すこととし、「危険物の積載・牽引」に関しては普通保険約款で担保する代わりに料率を上げるという対応を取ったようです。