保険の基本問題に関するWG(4/24)議事録

4月24日に開催された金融分科会第二部会 保険の基本問題に関するワーキング・グループの議事録が公開されています。4月30日のブログ「保険の基本問題に関するWG(4/24)資料」では、その時の配布資料を軽く書きましたが、漸く議事録が公開されて議論の内容を知ることができます。
「保険の基本問題に関するワーキング・グループ(第51回)議事録」
http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/dai2/gijiroku/20090424-2.html
金融庁 審議会・研究会等 > 金融審議会 > 議事録・資料等 2009.5.15)
 
前半は、配布資料に関する説明で、後半がその配布資料を元にした議論です。議論というよりも、配布資料の内容に関する質疑応答といった感じです。
外国の制度・状況に関する調査は、口頭説明でも配布資料とほぼ同じレベルで、現状の実態調査にとどまっており、踏み込みが足らないと思います。前回のブログで私が書いた『これはこれで国によって制度が異なることが分かって参考になりますが、もう一歩踏み込んでその制度の違いによりどんな課題が解決されているのか/どんな問題が生じているのかが見えないと実際にどうすべきかの判断材料になりません。』と書きましたが、議事録を読んでも同じ感想を持ちました。
この点は、WGのメンバーも同じようなこと思ったらしく、(社)全国消費生活相談員協会常任理事の丹野氏から下のように言われています。

ただし、本当に淡々とご報告だけなんですね。もうちょっと踏み込んで、例えばこの点ではここが参考になったとか、日本では例えば募集文書で言うと、契約概要と注意喚起情報とその他を始めたけれども、それのお手本になったこの国では実はこうなっているなど、もうちょっと踏み込んだご報告があるとうれしいなというふうに期待してお聞きしていたんですけれども、その辺がないというのがありまして、そこら辺につきまして、例えばどこがどういうふうに参考になるというふうにお考えなのか、ちょっとお教えいただきたいというふうに思っております。

これに対する金融庁の石田保険企画室長の回答は下のとおりです。

もうちょっと踏み込んだというところについて、いろんなご議論あり得ると思いましたので、できるだけ客観的に、当然、行った人間の主観がその中に入っているわけですけれども、そうは言いましても客観的に聞いてきたこと、持って帰ってきたことを、できるだけバイアスなくお伝えすることはお伝えして、ご議論をいただければという考えのことから、こういう格好でご説明させていただきましたので、その点ご理解いただければというふうに思います。

確かに当事者のバイアスなく事実を報告することは大切です。しかし、この回答はピントがずれていると思います。
丹野氏の指摘は報告者の意見を求めているのではなく、外国の制度のうわべだけではなく、何故そのような制度にしたのか/その制度によって契約者・保険者はどのような影響を受けてどうなったのかを踏み込んで調べてこなかったのか?ということかと思います。
何故なら、今後、外国の制度を参考にすることにした際に、それらは必要な情報だからです。単に形式だけ外国の制度のうわべの真似をしてもうまく機能しないだろうことは明白です。将来の日本の保険制度改定にあたって参考にする前提で調査をするのなら、そこまで調べて報告しなければ意味がありません。
この点に関して、この議事録内ではそれ以上議論されていないので、持ち越されたのか、捨てられたのか分かりません。私は非常に重要な点だと思うのですが。
 

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本題とは外れますが、昨今世間で郵政で騒がれている元凶とも言える簡易保険の不払い問題に関して、お役所の体質を知る上で興味深いやりとりがありました。
質問したのは、生活経済ジャーナリストの高橋氏です。

現在、簡易保険で大量の保険金支払いが発生しております。大変深刻な状況だというふうに私は受けとめておりますけれども、これについて、金融庁としてのご対応はいかにというところをお伺いしたいということが1点です。

これに対する金融庁の長谷川保険課長の回答が下です。

かんぽ生命は現状、総務省金融庁で共管して監督をしておりますが、今回、明るみになりました簡易保険における不払いの問題は、民営化前の旧郵政の時代のものというふうに聞いておりまして、この点については、基本的に総務省の問題というふうに理解をしております。

縦割り行政を象徴する見事な回答です。
生命保険と簡易保険は、生活者サイドの視点からすれば同列のものです。生保業界で不払いの不祥事があれば、簡易保険も同様ではないか?と考えて、生保業界の状況・問題点を総務省に連絡して早急に簡易保険で問題が起こってないか調査してもらう…ということをまったく考えませんでしたと告白しているようなもんです。まぁ、事実そうなのでしょう。
この分では、共済,少額短期保険業者も叩けば埃が出る状態ではないかと疑われます。