生保・損保の自主ガイドライン(未成年の死亡保険)

7月7日のブログ「「保険検査マニュアル」の保険法対応(案) 」で、「保険検査マニュアル」が改定されようとしていることを書きました。検査マニュアル内の「Ⅱ.保険募集業務の適正性」の↓の箇所が新設となっています。
2.生命保険関係 (3) 他人の生命の保険契約等

① 他人の生命の保険契約及び未成年者を被保険者とする生命保険契約に関し、保険契約の不正な利用の防止等による被保険者等の保護の観点から、目的・趣旨に沿った保険契約を確保するための取組みを行っているか。例えば、以下のような取組みを行っているか。
  (略)
ハ.被保険者が未成年者である場合、「未成年者を被保険者とする生命保険契約の適切な申込・引受に関するガイドライン」((社)生命保険協会)等を踏まえた保険契約の不正利用を防止するための措置

3.損害保険関係 (7) 他人の生命の保険契約等

① 他人の生命の保険契約及び未成年者を被保険者とする死亡給付のある保険契約に関し、保険契約の不正な利用の防止等による被保険者等の保護の観点から、目的・趣旨に沿った保険契約を確保するための取組みを行っているか。例えば、以下のような取組みを行っているか。
  (略)
ハ.被保険者が未成年者である場合、「傷害保険等のモラルリスク防止に係るガイドライン」((社)日本損害保険協会)等を踏まえた保険契約の不正利用を防止するための措置

早い話が、この部分については、生損保とも業界の自主ガイドライン準拠の取扱いとすることが求められています。そこで、両方のガイドラインにどんな事が書かれているか未成年に関する部分を中心に見てみました。
「未成年者を被保険者とする生命保険契約の適切な申込・引受に関するガイドライン
http://www.seiho.or.jp/standard/pdf/miseinen.pdf
「傷害保険等のモラルリスク防止に係るガイドライン
http://www.sonpo.or.jp/about/guideline/pdf/index/00393.pdf
 

各社単体での保険金額制限

【生保】

a.適切な付保保険金額の上限の設定
会員各社は法令および「保険会社向けの総合的な監督指針」も踏まえ、保険契約者または被保険者の収入・資産・逸失利益等を勘案した妥当な保険金額を付保するための社内基準の設定に取組んでいるところであるが、未成年者、特に15歳未満の方を被保険者とする死亡保険については、被保険者同意の取得が困難なケースがあることも踏まえ、モラルリスクを排除・抑制する観点から、未成年者の死亡によって生ずる経済的需要を勘案した妥当な引受保険金限度額を社内基準として設定する(設定にあたっては、金融審議会第二部会保険の基本問題に関するワーキング・グループの議論等も参考にすること)。
また、引受保険金限度額以内であっても、モラルリスク上の懸念があると判断される場合には、引受を行わない、あるいは引受保険金を減額するなど慎重な引受判断を行う。

【損保】

(3)「被保険者が未成年者(満15歳未満)」の契約を含む被保険者の同意を取り付けていない契約形態(注1)の傷害保険等に関する死亡保険金額の考え方(指針) (注1)「保険契約者=被保険者の場合」は除く。
各会員会社における販売商品・契約形態等に応じ、次の考え方(指針)を参考に、モラルリスク防止のため適正な社内引受基準額を定めるものとする。
  (表 略)

生損保で書きぶりは異なるものの趣旨はほぼ同じです。
昨年度から、未成年の保険金額は 1000万円を上限とする生損保が増えてきています。それは明らかにこのガイドラインと整合します。
 

情報交換制度の利用による通算での保険金額制限

【生保】

会員各社は法令および「保険会社向けの総合的な監督指針」も踏まえ、保険金額の決定に際しては、生命保険協会の「契約内容登録制度」および「契約内容照会制度」を利用する等、モラルリスクの排除のため効果がある方法を採用する体制を整備しているところであるが、未成年者、特に15歳未満の方を被保険者とする生命保険契約については、未成年者保護の必要性の趣旨を勘案し、「契約内容登録制度」・「契約内容照会制度」の照会結果を十分に踏まえてより慎重な引受判断を行う。

【損保】

②契約内容登録制度による重複保険契約の管理
契約内容登録制度を利用し、自社の引受け契約分と他社の引受け契約分を合わせた合計保険金額が過大に設定されていることが判明した場合には、募集経緯を確認のうえ、必要に応じ保険契約者に対して保険契約の是正等を求めることが望ましい。

こちらも、趣旨は生損保で違いはありません。こちらがうまく機能すれば、各社単体での保険金額制限は不要となると考えられます。とは言え、契約締結後の事後チェックですから、そううまくいかないでしょうけど。
理想を言えば、生保・損保・共済・少額短期保険業者すべてを通算すべきですが、それは非常に困難そうな気がします。
 

被保険者の法定代理人の同意

【生保】

未成年者、特に15歳未満の方を被保険者とする生命保険の契約締結時においては、被保険者本人の同意の取得が困難であるケースも想定されるため、親権者等の法定代理人の同意を取得する。
(15歳以上の場合には、既婚の場合等を除き、本人及び親権者等の法定代理人の同意を取得する。)

損保のガイドラインには、これに相当する記載がありませんでした。当然のことだからでしょうか。
 

未成年者向け商品の開発

【生保】

未成年者、特に15歳未満の方を被保険者として販売する商品については、販売対象層の保障ニーズに合致したラインアップを用意すること、すなわち、貯蓄、医療、死亡等の消費者ニーズを勘案した商品を提供できる体制の構築を行うことが重要である。なお、商品開発にあたっては、消費者の声等を勘案して、より消費者のニーズに適合した商品の開発に努める。

損保のガイドラインには、これに相当する記載がありませんでした。今更、未成年を被保険者とする商品を開発するつもりも必要性もないからでしょうか。確かに、既にこども総合保険や学生総合保険があるので、これ以上は第二分野の商品は要らないと思います。
 

保険金支払い時のチェック

【損保】

保険事故(死亡や重度の後遺障害)発生の報告を受けた場合には、モラルリスクのおそれがないか等について慎重かつ厳正な判断を行うこととする。

これに当たる項目は、生保のガイドラインには記載がありませんでした。入口の生保・出口の損保と言われますが、この項目が損保側だけにあるのを見るとなるほどと思います。
生保の査定はほとんど知らないのですが、どの程度調べるのでしょうか。