日本興亜損保の株主総会開催差止の仮処分申立(其の参)

自らを"日本興亜損保の真の発展を願う株主有志"と名乗る松澤氏らと日本興亜損害保険株式会社との統合を巡る争いが続いています。今度の臨時株主総会株式会社損害保険ジャパンとの統合について可決されるのを阻止するのが、松澤氏らの当面の目標と考えられます。
 
「日本興亜損保の株主総会開催差止の仮処分申立(其の弐)」(2009.12.15)では、損保ジャパンの1,280億円の劣後債のことが株主に知らされていないを根拠に臨時株主総会の差止を狙ったが、日本興亜損保は8日間延期したことについて書きました。
その後、松澤氏らは16日にこの差止要求を取り下げました。そのことは、松澤氏らのサイトでは書かれていませんが、日本興亜損保が以下のとおりリリースしています。
「仮処分命令申立の取下げについて」
http://www.nipponkoa.co.jp/news/whatsnew/2009/news2009_12_16_torisage.pdf
日本興亜損害保険株式会社 ニュースリリース 2009.12.16)
これによって、この件については一先ず決着し、松澤氏らは成功しなかったと見ることができます。恐らく、株主総会の場でこのことについて糾弾するでしょうが、軽くあしらわれておしまいになると思います。
 
この次の手として、松澤氏らが取り上げたのが株式移転比率の根拠の妥当性です。15日の時点では以下のとおり公開質問としていました
「統合比率の「公正さ」について」
http://nk-y.blogspot.com/2009/12/blog-post_15.html
日本興亜損保の真の発展を願う株主有志 2009.12.15)

「統合比率の公正さ」に関する公開質問状

    • Open Letter on the "Fairness of Stock Transfer Ratio" --

日本興亜損害保険株式会社(以下日本興亜損保と言います。)は、株式会社損害保険ジャパン(以下損保ジャパンと言います。)との株式移転による経営統合を計画するにあたり、メリルリンチ日本証券株式会社(以下メリルリンチ社と言います。)に、日本興亜損保普通株式1株に対し、共同持株会社の普通0.9株を割り当てる事に関し、財務的見地から公正であるか否かについて意見書(以下「本件意見書」と言います)の作成を依頼し、日本興亜損保の取締役会は2009年7月29日にその意見書を受領しました。
(略)
したがって、数々の前提条件がついた極めて限定された状況の中で(これを日本興亜損保は、「一定の条件の下」と表現しています。)メリルリンチ社は「公正である」との意見を提出したのです。
(略)
c. 本意見書を作成するにあたり、弊社は、貴社の指示により、相手会社の提供する金融保証保険に関し、貴社又は相手会社から弊社に提供された代替予想損失についての検討を行っておりません。
(略)

  1. メリルリンチ社に意見書作成を依頼するにあたり、損保ジャパンが提供する金融保証保険に関する代替予想損失について、どのような理由があって検討事項から外すように指示したのでしょうか。
  2. 検討事項から外したうえで公正であるという意見書をもらう事が、どのような形で、日本興亜損保株主の利益の最大化につながるのでしょうか。株主の利益につながらない事を知りながら、取締役会が決議を行っていた場合、そのような取締役会の決議は不適切であると考えます。

しかし、日本興亜損保のリリースによると、どうやらこれをベースに臨時株主総会開催差し止めの仮処分命令申立をしたようです。
「仮処分命令申立書の受領について」
http://www.nipponkoa.co.jp/news/whatsnew/2009/news2009_12_22_juryo.pdf
日本興亜損害保険株式会社 ニュースリリース 2009.12.22)

平成21年12月22日に当社代表取締役に対し、当社の個人株主6名から、平成21年12月30日開催予定の当社臨時株主総会について開催差し止めを求める仮処分命令申立がありましたことをお知らせいたします。

物凄く簡略化すると、1:0.9 の株式移転比率は損保ジャパンの金融保証保険の損失予想を考慮に入れずに決定されたものであるため妥当ではない!という理屈であると私は思っています。
これは、他の株主にはあまり響かない主張であることは想像に難くありません。
根拠のない個人的な感覚ですが、金融保証保険の損失予想のリスクを考慮しても、1:0.9 の比率は日本興亜損保側にとって有利な数字だと思います。また、1:0.9 の株式移転比率が妥当ではないと主張するなら、再度の検討が必要となりますが、おそらくこれよりも良い数字が出る見込みは薄いでしょう。
また、現時点において、損保ジャパンと統合をする/しないという選択肢しかないのであれば、株主の立場としては前者の方が良い結果になりそうと予想すると思います。
本当に会社の将来を考えて損保ジャパンとの統合に反対するのであれば、実現性のある第3の選択肢がない限り誰も支持することはないでしょう。