東京海上日動の自動車保険支払い漏れ

自動車保険の「付随的な保険金の支払漏れ」に関しては、2005年に金融庁より多くの損害保険会社に行政処分が出され、既に全て決着したものと思っていました。
それが、突然、東京海上日動火災保険株式会社での過去の自動車保険の支払い漏れについて、マスコミにて取り上げられ、自社でもニュースリリースしていました。
最初は、対人臨時費用保険金にスポットがあたっていましたが、遅れて対物臨時費用保険金と人身傷害臨時費用保険金も取り上げられていました。
「対人臨時費用保険金のお支払いについて」
http://www.tokiomarine-nichido.co.jp/j0201/pdf/140207.pdf
東京海上日動火災保険株式会社 ニュースリリース 2014.2.7)
「人身傷害臨時費用保険金・対物臨時費用保険金のお支払いについて」
http://www.tokiomarine-nichido.co.jp/j0201/pdf/140210.pdf
東京海上日動火災保険株式会社 ニュースリリース 2014.2.10)
いずれもマスコミが先で、自社リリースが後でした。
普通に考えれば、対人臨時費用保険金の指摘があれば、対物臨時費用保険金と人身傷害臨時費用保険金もあるのではないかと容易に推測できるのに、マスコミに後れをとって対物臨時費用保険金と人身傷害臨時費用保険金の公表しているあたりは、東京海上日動が余程慌てて場当たり的に対応した感が否めません。
 
さて、対人臨時費用保険金について整理してみます。なお、対物臨時費用保険金と人身傷害臨時費用保険金も同様と思われます。
東京海上日動ニュースリリースには以下のように記載されています。

○従来より、臨時費用保険金は、お客様に実際の損害が発生し、お客様からご請求をいただいたものについて保険金のお支払いを行っておりました。
○しかしながら、お客様対応の向上を目的として、2003年7月に運用方針を変更し、対人事故発生時には一定の臨時費用保険に係る損害が生じていると見なして原則お支払いすることにいたしました(*)。
○なお、2008年7月には、保険約款を変更し、一定の条件を満たす場合には、お客様の費用負担の有無に係らずお支払いが可能となるようにするとともに、併せて臨時費用保険金のお支払いのみの場合には次年度保険料に影響が生じない運用変更も行っております。

2008年7月1月改定の総合自動車保険(トータルアシスト)の約款は入手できるのですが、それ以前の約款は入手できませんでした。
そこで、2003年6月時のSAPの標準約款(普通保険約款 賠償責任条項 第12条)と比較しつつ、上に書かれていることを整理し、下表のようなことだろうと推測しました。

つまり、2008年6月以前は必要な臨時費用が生じたなら被保険者は対人臨時費用保険金を請求をする必要があり、その保険金請求がなければ対人臨時費用保険金は支払わないということになっていました。ただし、それは約款上の話であって、約款よりも顧客有利な運用を2003年7月以降は行っていたということです。
2003年6月以前は約款どおり運用しており、その観点で支払漏れがないか2005年当時に確認を行ったということです。
 
マスコミの書きぶりでは、東京海上日動の論理を説明せず、一方的に保険会社を悪者にしたいように感じます。記者のレベルが低くて、裏付けの確認を十分していなかったり、理解が及ばなかったりしているのかもしれません。
いずれにせよ、今回の件はどういうことなのか正確に理解しておきたいところです。