自動車の衝突回避装置と保険料リスク区分

アメリカンホーム保険会社がやろうとした衝突被害軽減ブレーキ装置割引ですが、去年、日経ビジネスでその可能性について既に取り上げられていました。
「自動事故回避技術、普及は「ガイアツ」頼み?」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20121113/239378/?P=2
日経ビジネスONLINE 総合トップ > IT・革新 > 記者の眼 2012.11.15)

トヨタで安全技術を担当する吉田守孝常務役員は「安全技術の普及にはアセスメントと保険制度が重要」と指摘し、国内保険会社に安全技術の説明をしているという。だが、現時点で国内自動車保険大手に問い合わせると「衝突回避などの安全技術で保険料を割り引くにはまだ実績が少ない」と口を揃える。
保険が割引になれば、安全技術へのコスト負担は和らぎ普及が加速する可能性は大きい。突破口を開く保険会社はどこなのだろうか。ある国内自動車メーカーの幹部は「海外で実績を積んできた外資が先行するのでは」という見立てを披露する。

 
先日の記事も併せて読むと、日経ビジネスでは実績がないことと規制が阻んでいることが問題であるように認識していると思われます。
私はそれはちょっと違うのではないかと思っています。
まず第一に実績がないことは、自動車メーカーと保険会社がタッグを組んで実際の多数の事故データを元に衝突回避装置が仮にあったとしたら事故が回避できたか/回避できないとしても損害額が軽減したかをシミュレーションをして、料率を算定することは不可能じゃないと思います。
そして、そのシミュレーションの精度が十分高ければ、金融庁はおそらく割引を認めるのではないかと思います。
つまり、自動車メーカーはその気のようですから、後は保険会社が本気で取り組めばクリアできるのではないかと考えています。
 
しかし、保険会社は自動車保険の悪い収支を改善したいと考えており、割引を設ける状況ではないような気がします。
勿論、余程の自動車メーカーからの圧力があれば状況は変わるかもしれませんが。
また、自家用普通乗用車・自家用小型乗用車に関しては、型式別料率クラスがあるので、ある型式で衝突回避装置の装着率が高まり、その型式の損害率が低下すれば料率クラスが下がることにより、わざわざ割引を導入しなくても自動的に保険料が下がることになります。
 
個人的には、装置による割引が増えることは保険料制度が再び複雑化するため、好ましくないと思っています。
前々回の参考純率改定でこの手の割引が減ったのに、逆行する動きとなってしまいます。
また、実際に衝突回避装置の装着有無やどの衝突回避装置であれば割引の対象になるかという確認もあまり簡単なものではなく、また仮に割引が適用できるのに適用していなかったケースが発生した場合に数年前に主に火災保険で問題となった保険料の取り過ぎ問題が再び起こります。
ただ、自動車の衝突回避装置の装着は、今の感じでは大勢となりそうですから、いずれ保険の対応がなされる時が来るかもしれません。