金融庁は、2025年9月30日に「令和7年保険業法改正に係る政令(案)に対するパブリックコメントの実施について」にて、保険業法施行令の改正案を公表しました。
改正内容
主な改正内容は次の2点です。
- 改正法において措置された特定大規模乗合損害保険代理店の業務運営に関する体制整備義務と同様の体制整備義務を、大規模な乗合代理店である生命保険募集人に対して措置
- 保険仲立人の活用促進に向けた対応として、保険仲立人の保証金の最低金額等を引下げ
また、軽微な改正として、保険業法第100条の2の2(顧客の利益の保護のための体制整備)に第2項が挿入されたことで繰り下げが生じた項番号の対応や漢字表記への変更(“てん補”→“填補”)があります。
体制整備義務に関する変更
保険業法施行令第40条(生命保険募集人に係る制限が適用されない場合)が次のとおり改定されます。これによって、保険業法第282条(生命保険募集人に係る制限)第3項の適用範囲が狭まります。
| 現行 |
改正 |
(生命保険募集人に係る制限が適用されない場合) 第40条 法第282条第3項に規定する政令で定める場合は、次に掲げる場合とする。 一・二 (略) |
(生命保険募集人に係る制限が適用されない場合) 第40条 法第282条第3項に規定する政令で定める場合は、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当する場合(当該生命保険募集人が法人(法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。)であって各事業年度における所属保険会社等から保険募集の業務(法第294条の3第1項に規定する保険募集の業務をいう。)に関して受領した手数料、報酬その他の対価の額が内閣府令で定める額以上であることその他内閣府令で定める要件に該当する場合にあっては、当該各号に掲げる場合のいずれかに該当し、かつ、当該生命保険募集人が、内閣府令で定めるところにより法第294条の4各号に掲げる措置に準ずるものとして内閣府令で定める措置を講ずる場合)とする。 一・二 (略) |
ちなみに、保険業法第282条(生命保険募集人に係る制限)は、次のとおりです。
(生命保険募集人に係る制限)
第282条 生命保険会社(外国生命保険会社等を含む。以下この編において同じ。)又はその委託を受けた者は、他の生命保険会社の生命保険募集人に対して、保険募集の委託又は再委託をしてはならない。
2 生命保険募集人は、他の生命保険会社の役員若しくは使用人若しくはこれらの者の使用人を兼ね、又は他の生命保険会社の委託若しくはその委託を受けた者の再委託を受けて保険募集を行い、若しくは他の生命保険会社の委託若しくはその委託を受けた者の再委託を受けて保険募集を行う者の役員若しくは使用人として保険募集を行うことができない。
3 前2項の規定は、生命保険募集人が2以上の所属保険会社等を有する場合においても、その保険募集に係る業務遂行能力その他の状況に照らして、保険契約者等の保護に欠けるおそれがないものとして政令で定める場合には、適用しない。
また、法第294条の4とあるのは、今般の保険業法改正で新設された以下の内容です。
(特定大規模乗合損害保険代理店の業務運営に関する措置)
第294条の4 特定大規模乗合損害保険代理店(損害保険代理店のうち、2以上の所属保険会社等を有する法人であって各事業年度における所属保険会社等から保険募集の業務に関して受領した手数料、報酬その他の対価の額が内閣府令で定める額以上であることその他内閣府令で定める要件に該当するものをいう。第二号及び第四号において同じ。)は、内閣府令で定めるところにより、次に掲げる措置を講じなければならない。
一 保険募集の業務を行う営業所又は事務所ごとに、当該営業所又は事務所において保険募集の業務を行う役員又は使用人に対し、これらの者が法令等(法令、法令に基づく行政官庁の処分又は定款その他の規則をいう。次号において同じ。)を遵守して保険募集の業務を実施するため必要な助言又は指導を行う者(同号において「法令等遵守責任者」という。)を設置すること。
二 本店又は主たる事務所に、法令等遵守責任者を指揮するとともに、特定大規模乗合損害保険代理店の役員又は使用人に対し、これらの者が法令等を遵守して保険募集の業務を実施するため必要な助言又は指導を行う者を設置すること。
三 保険募集の業務に係る苦情を受け付けるための体制の整備、当該苦情の処理に関する記録を作成しこれを保存することその他の保険募集の業務に係る苦情の適切かつ迅速な処理を確保するために必要な措置として内閣府令で定める措置
四 第100条の2の2第2項に規定する兼業特定保険募集人である特定大規模乗合損害保険代理店にあっては、次に掲げる措置
イ その行う保険募集の業務以外の業務(第100条の2の2第2項に規定する保険募集の業務以外の業務をいい、保険金の支払の請求に関するものに限る。以下この号において同じ。)が保険金の支払に不当な影響を及ぼさないよう適切に監視することその他の当該特定大規模乗合損害保険代理店が行う保険募集の業務以外の業務により当該特定大規模乗合損害保険代理店又はその所属保険会社等が行う保険関連業務に係る顧客の利益が不当に害されることを防止するために必要な措置として内閣府令で定める措置
ロ その行う保険募集の業務以外の業務に係る苦情を受け付けるための体制の整備、当該苦情の処理に関する記録を作成しこれを保存することその他の当該特定大規模乗合損害保険代理店が行う保険募集の業務以外の業務に係る苦情の適切かつ迅速な処理を確保するために必要な措置として内閣府令で定める措置
五 その他内閣府令で定める措置
保険仲立人の保証金の最低額のを引下げ
保険業法施行令の以下の2千万円の箇所が1千万円に変更されます。
(保証金の額)
第41条 法第291条第2項に規定する政令で定める保証金の額は、2千万円とする。ただし、保険仲立人の最初の事業年度終了の日後3月を経過した日以後においては、当該保険仲立人の各事業年度開始の日以後3月を経過した日(次条及び第44条において「改定日」という。)から当該各事業年度終了の日後3月を経過する日までの期間を対象とする保証金の額は、当該各事業年度開始の日の前日までの過去3年間に当該保険仲立人が保険契約の締結の媒介に関して受領した手数料、報酬その他の対価を合計した金額(当該金額が2千万円に満たない場合は2千万円とし、当該金額が8億円を超える場合は8億円とする。)に相当する額とする。
(保証金の一部に代わる保険仲立人賠償責任保険契約の内容等)
第44条 保険仲立人は、法第292条第1項の保険仲立人賠償責任保険契約(次項において「賠責保険契約」という。)を締結する場合には、損害保険会社その他内閣府令で定める者を相手方とし、その内容を次に掲げる要件に適合するものとしなければならない。
一~五 (略)
2 前項の賠責保険契約を締結した保険仲立人が法第291条第1項の保証金の一部の供託をしないことができる額として内閣総理大臣が承認することができる額は、当該保証金の額から2千万円を控除した額に相当する金額を限度とする。
項番号の繰り下げ対応
上記で、軽微な改正と書いた項番号の繰り下げ対応の元となったのは、保険業法第100条の2の2(顧客の利益の保護のための体制整備)の以下の箇所です。第2項の新設によって、従来の第2項と第3項が繰り下げられました。
(顧客の利益の保護のための体制整備)
第100条の2の2 保険会社は、当該保険会社、当該保険会社を所属保険会社等とする兼業特定保険募集人又は当該保険会社の親金融機関等若しくは子金融機関等が行う取引に伴い、当該保険会社、当該兼業特定保険募集人又は当該子金融機関等が行う保険関連業務(第97条、第98条及び第99条(これらの規定を第199条において準用する場合を含む。)の規定並びに他の法律により保険会社又は外国保険会社等が行うことができる業務をいう。以下同じ。)に係る顧客(当該兼業特定保険募集人にあっては、当該保険会社から委託を受けた業務に係る顧客に限る。)の利益が不当に害されることのないよう、内閣府令で定めるところにより、当該保険関連業務に関する情報を適正に管理し、かつ、当該保険関連業務の実施状況を適切に監視するための体制の整備その他必要な措置を講じなければならない。
2 前項の「兼業特定保険募集人」とは、第276条に規定する特定保険募集人のうち、第294条の3第1項に規定する保険募集の業務以外の業務(当該業務の対価にその所属保険会社等から保険契約に基づき支払われる保険金が充てられる業務であって当該保険金の支払に不当な影響を及ぼすおそれがある業務として内閣府令で定めるものに限る。)を行う者をいう。
3 第1項の「親金融機関等」とは、保険会社の総株主の議決権の過半数を保有している者その他の当該保険会社と密接な関係を有する者として政令で定める者のうち、保険会社、銀行、金融商品取引業者(金融商品取引法第2条第9項(定義)に規定する金融商品取引業者をいう。以下同じ。)その他政令で定める金融業を行う者をいう。
4 第1項の「子金融機関等」とは、保険会社が総株主等の議決権の過半数を保有している者その他の当該保険会社と密接な関係を有する者として政令で定める者のうち、保険会社、銀行、金融商品取引業者その他政令で定める金融業を行う者をいう。
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