保険商品の他社比較(ソニー損保のケース)

ソニー損保は自動車保険医療保険を扱っていますが、自動車保険について自社サイトで2項目での他社比較を行っています。
 
まず1つは保険料をメインとした比較です。
ソニー損保の広告に掲載している他社との保険料比較について」
http://www.sonysonpo.co.jp/qa/auto/estimate/estimate/common/ac104012.asp
ソニー損害保険株式会社 自動車保険のよくあるご質問 > お見積り・お申込み > インターネットでの見積り・申込み)
本体は以下の PDF ファイルです。
http://www.sonysonpo.co.jp/pdf/a06004.pdf
見てのとおり、実名で大手損保5社を比較対象としています。
ソニー損保はダイレクト系損保の中では、保険料は高い方です。そこで自社を優位に見せるために相手として、保険料の高い代理店系損保を選んだのでしょう。これはこれで建前として、シェアの大きいところを選んだらたまたまこうなったと言えば筋が通らないこともありません。
そして、保険料だけの比較では明らかに「保険募集の適正な活動に関するガイドライン」(P.10)に反するので、とって付けたように補償内容の比較も付けています。本当にとって付けたような貧弱な内容で判断の根拠にはできないものです。
また、大手損保は自動車保険を複数販売しているので、比較をするなら商品の正式名称を明らかにすべきでしょう。それと保険料の実額を出しているなら、その算出条件も明らかにすべきと思います。
いずれにせよ、ソニー損保のサイトの内容は2008年1月のもので、東京海上日動,損保ジャパン,三井住友海上,あいおい損保(日本興亜損保以外の全部)はその後に自動車保険の大改定をしていますから、この比較は保険料も補償内容も現時点では無意味なものになっています。それを募集行為に用いるなら、契約者等に誤解させることになるため、保険業法第300条第1項第6号の禁止行為に該当します。サイトに有効なものとして掲載していること自体が募集行為の補助と見られるのでNGと思われます。
 
私は保険商品の比較を行うことは賛成ですが、一部分だけをクローズアップして比較をすることには反対です。
もちろん、保険料も商品決定の上での重要なファクターですが、それだけで選ぶことは誰もしません。例えば、パソコンを買うときでも、単に安いだけの5万円程度のものを選ぶかというとそれは違います。スペックと価格を総合的に勘案して選択するはずです。保険もスペック…補償内容を軽視した選択はありえません。
 
 
「ロードサービス 他社との比較」
http://www.sonysonpo.co.jp/prod/auto/oneonone/N2010306.html
ソニー損害保険株式会社 自動車保険トップ > 充実のロードサービス > 他社との比較)
こちらは、匿名で大手損保1社とダイレクト系損保3社を比較対象としています。
匿名ですが、その内容から、
A社:不明(少なくとも現時点で大手5社でこんな貧弱なのはない)
B社:三井ダイレクト
C社:そんぽ24
D社:アメリカンホーム
であろうと思われます。(ソニー損保のサイトの内容は2007.8.1時点のものなので、現在と異なるので断定できません。)
ロードサービスに関しては大手損保とでは負けっぱなしになるので、相手としてダイレクト系損保を選択しているようです。保険料比較で大手5社を選択したのなら、こちらも同じにするのが筋というものでしょう。弱い相手を意図的に選んで、ソニー損保のサービスが優れているように見せかけるというのは、契約者等に誤解させるおそれがある行為と考えられ、保険業法第300条第1項第6号の禁止行為に該当すると思います。
また、ロードサービスは保険商品の改定とは別個に比較的頻繁に変更されるし、サービス拠点や指定修理工場はサイト更新のタイミングでその時点のものを載せます。従って、ソニー損保のサイトのものは情報が古いためにまったく意味がないものとなっています。
意味がないものを意味ありげに掲載するのは、契約者等に誤解させるおそれがあると考えられ、その点でも保険業法第300条第1項第6号の禁止行為に該当すると思います。
 
そもそもロードサービスのみの比較は論外です。ロードサービスは、付帯サービスとよく書かれているとおり、保険本体に付帯されているおまけ的なものです。
そのあたりの話は、8/11のブログのとおりです。
本体である保険について、同じレベルのものが複数あってどれにするのか迷っている状態なら、おまけが良いものを選ぶという考えもありますが、最初からおまけメインで選ぶことはすべきではありません。
それに、付帯サービスではやっていなくても、特約を付ければ同内容のことをできるようにしている会社もあります。これは、付帯サービスだってタダではないので、その費用を全員から徴収するか、サービスを希望する人だけから徴収するかの違いであり、そのことを考慮せずに比較するのは正当ではありません。
 
 
ソニー損保の会社機構から推測するとダイレクトマーケティング部かウェブサイト企画部にて比較広告を推進しているのではないかと思います。
これらの比較は、自分が勝つように項目によって相手を変えるという卑怯なものだと言えます。
私自身ソニー損保はその設立経緯や総合的な評判や損害サービス部の勇気ある取組から好印象を持っているのですが、一部の部が会社全体の品位を著しく貶めていることが非常に残念です。