保険商品の他社比較(大手損保の考え方)

比較の観点から保険の分かり易さを考えると、
A.各社の補償内容が同一の保険
B.個社が独自の補償内容の保険
では、どちらが上かというと一般的にはAです。
Bでも、「事故が起こったら、請求された金額をいくらでも無条件で支払います」くらいの単純な内容ならAよりも分かり易いと評価できます。しかし、残念ながら個社が独自にした内容でAを凌駕するほど単純になったものを私は見たことがありません。
 
しかし、自由化以降、Bが主流です。特に大手損保では、普通保険約款まで大幅に変更して独自性を発揮しようとしています。特に、大衆分野における自動車保険,火災保険ではその動きが顕著です。
保険が分かりにくくなった原因の1つはここにあると私は思っています。
補償内容を独自のものにする保険会社側のメリットはいくつかありますが、その中に1つに『他社の保険と単純比較できなくなるようにして、保険料競争を防ぐ』があります。もう1つには『補償内容を独自の方向に拡大して、保険料単価を上げる』というのもあるでしょう。
これは誰も表立って口にしないでしょうが、本音ではこれがないことは否定できないと思います。
 
今までは、消費者に誤解を与えないためという大義名分のもとに『補償内容が同一ではないから単純比較できないから他社比較を行わない』というスタンスを大手損保を中心に代理店系では通してきました。(その単純比較ができないようにしたのは、保険会社ですが。)
そのことは、誰も保険商品の比較情報を公開していないことから、間接的に窺い知ることができます。
 
しかし、近年では消費者サイドの声が高まり、他社比較解禁に向けての動きが感じられます。
そのことは、先日書いたブログですが、比較的新しいガイドラインに↓のように盛り込まれていることから垣間見ることができます。

比較を容認する流れということは2008年3月に作られた「保険約款のわかりやすさ向上ガイドライン」のP.3を見れば分かります。
"保険約款が活用される局面"として"契約締結前"において"保険商品の内容を確認し、比較・選択する。"ことを想定して、"求められる工夫"として"保険商品の内容の確認および比較・選択を容易にする工夫が重要"と要求していますから。

 
しかし、保険商品は複雑ですし、各社独自の部分まで踏まえて比較することは非常に困難であることは容易に想像できます。大手損保では保険約款すら公開しない方がまだ多数派ですから、比較の材料を入手することすら現時点では困難です。
実際に公正で正確な商品比較がなされるのは、残念ながらまだ先のような気がします。
 
ちょっと話がずれますが、保険商品を昔に戻せとは言いませんけど、真に契約者のためのことを考えるなら、普通保険約款はシンプルで基本的な内容とし、補償範囲を拡大する事項は任意付帯の特約とすべきであると私は思います。
ダイレクト系損保の商品は、これに近いです。
これは契約者のためだけではなく、募集時の説明を単純にするのみならず、保険金不払いの芽を摘むという面で保険会社にとってもメリットがあります。
ただし、大手損保がこれをやったら保険料単価は下がることになり、減収するでしょうけど。