東京海上日動の長期契約の住所調査

東京海上日動が長期契約で住所不明の契約者に対して、ローラー作戦で連絡をとって現在の住所を特定するようです。
 
「長期契約の「ご連絡先の確認」にご協力をお願いします。」
http://www.tokiomarine-nichido.co.jp/news/080820.html
東京海上日動火災保険株式会社 東京海上日動からのお知らせ 2008.8.20)
 
この時期に何故このようなことをするのか疑問でした。
2006年度から主に火災保険で問題となっている契約内容適正化関連かと思ったのですが、それにしては時機を逸しています。契約内容適正化での確認が目的ならもっと早くやっていたでしょうし、長期契約だけでなく住所不明すべてを対象にするべきでしょう。
 
しかし、ふとあることに気づきました。
それは、おそらく2010年に施行される保険法対応です。(現実的に2008年や2009年の施行は無理です。保険会社側の準備が全然できていませんから。)
「保険法案 法律案」
http://www.moj.go.jp/HOUAN/hoken/refer02.html
法務省 国会提出主要法案第169回国会(常会))
 
第10条(保険価格の減少)にて以下のとおり定められています。

損害保険契約の締結後に保険価額が著しく減少したときは、保険契約者は、保険者に対し、将来に向かって、保険金額又は約定保険価額については減少後の保険価額に至るまでの減額を、保険料についてはその減額後の保険金額に対応する保険料に至るまでの減額をそれぞれ請求することができる。

これは解釈によっては、減価償却による保険価格減少も含むように読めます。さすがに1年以下の契約には減価償却を考慮しないでしょうけど、長期契約となるとそうもいかないでしょう。もし、そう解釈するのであれば、定期的に長期契約の契約者に確認を行うのがよさそうです。
この第10条は、第12条(強行規定)により片面的強行規定とされているし、附則の第3条(旧損害保険契約に関する経過措置)で保険法施行前に締結された契約も対象とするように定められています。
従って、今の契約も将来対象となります。今のうちから長期契約の契約者の住所を調べておくと、スムースに事が運べそうです。
 
また、第29条(危険の増加による解除)第1項では以下の定めがあります。

損害保険契約の締結後に危険増加(告知事項についての危険が高くなり、損害保険契約で定められている保険料が当該危険を計算の基礎として算出される保険料に不足する状態になることをいう。以下この条及び第三十一条第二項第二号において同じ。)が生じた場合において、保険料を当該危険増加に対応した額に変更するとしたならば当該損害保険契約を継続することができるときであっても、保険者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合には、当該損害保険契約を解除することができる。
 一 当該危険増加に係る告知事項について、その内容に変更が生じたときは保険契約者又は被保険者が保険者に遅滞なくその旨の通知をすべき旨が当該損害保険契約で定められていること。
 二 保険契約者又は被保険者が故意又は重大な過失により遅滞なく前号の通知をしなかったこと。

これは通知義務について定めた条項です。杓子定規にやるなら、被保険者が知らないうちに通知事項に該当することが生じていたとしても通知しなければ、いざ事故があった時でも通知義務違反のため遡って契約を解除します!となります。これではあんまりですから、やはり長期契約は定期的に通知事項がないか尋ねるのが親切というものでしょう。
ただ、この第29条第1項も、第33条(強行規定)により片面的強行規定とされていますが、遡及適用は求められていません。でも、始期によって扱いを変えるのも変なので、同じように運用した方がよさげです。
実際にやるなら、これもちゃんと契約者住所を整備しておく必要があります。
 
つまり、長期契約に関して保険価額と通知事項の確認を定期的に実施するために契約者住所を調べておくのではないかということです。
と勝手に、保険法対応の観点から推測してみました。
この読みが当たっているかどうかは、2,3年後くらいに分かると思います。