似非保険屋のコラム(2)

前にも「似非保険屋のコラム」で紹介しましたが、朝日新聞のコラムでまたいい加減な内容のものがあるので、一保険屋として否定しておきたいと思います。
「オリンピック選手は保険に入れるか」
http://www.asahi.com/health/seiho/TKY200808190397.html
朝日新聞 2008.8.20)

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 結論から書くと、答えは「競技によって加入できないことがある」です。保険会社によっても異なりますが、マラソン、野球、サッカーなどの選手の加入は問題がないとしても、ボクシングや競輪の選手は「死亡保険」も、主に入院に備える「医療保険」にも加入できないといった取り決めがあるのです。基本的に格闘技は敬遠されていて、オリンピック種目ではありませんが、プロレスラーも「入れない職種」です。「空手の師範代」も不可だったりします。しかし、相撲の力士の場合、「医療保険」は入れないけれども「死亡保険」は1000万円までなら引き受けるという会社もあります。
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 では「スポーツ選手向けの生命保険」を開発しては?という考えも浮かびます。が、これも成立が難しいはずです。いつも書いていることですが、保険の仕組みは「胴元が負けないギャンブル」のようなものです。前提となるのは、「参加者が賞金を獲得できない確率が高い」ことです。ところが、「ボクサーやレスラーも入れる保険」「故障を抱えている人も入れる保険」を売り出すとしたらどうでしょう?いかにも賞金(保険金)を獲得しそうなお客様ばかり集まることになります。となると、胴元は、あらかじめ馬券を高く売る、配当率を低くする、といった対策を取るしかなくなってしまいます。
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 繰り返しになりますが、保険というシステムに、その真価を発揮させるには「賭けに負ける圧倒的多数の参加者」が必要です。(保険が)役に立ちそうな人ほど遠ざけることで存続するわけです。最初から「おいしい話」にはならないのだ、と改めて感じます。お客様にも、善し悪しの問題ではなく、「仕組み」の問題として認識していただきたいと思います。

 
スポーツ選手に対する保険が存在することができないなんて、常識的に考えておかしいです。万が一、事故があっても補償がまったくない…スポーツ選手はそんな後先考えない人の集まりだとでも言うのでしょうか?
このコラムを書いている後田亨という人物は、デタラメな価値観に基づいてそれをばら撒いているような常識のない人ですから、このコラムも真に受けるものではありません。
 
私は、生命保険は一般論を知っているくらいでそれほど詳しくないし、傷害保険のこの手の分野は門外漢ですが、それでもこのくらい↓のことは分かります。

  • スポーツ選手といえども、競技(練習を含む。以下同様)中以外の日常生活においては、リスクは一般人と比較して高くないと考えられる
  • リスクが高い競技中の補償に関しては、傷害保険でカバーできると考えられる

このことから、以下のようにリスク別に異なる手段でカバーすれば保険をかけることは可能と思われます。
 
競技中以外の日常生活においては、普通の生命保険でカバーすればいいと思います。競技中は免責とするという契約にすれば、生命保険会社も謝絶する理由がありません。(ドーピングをしていれば別ですが。)寧ろ、現役のスポーツ選手は体が資本なだけに健康面に気を配っているはずですから、一般人よりも疾病リスク(特に三大疾病)は低いと思います。
あとは、生命保険会社側が競技中は免責という契約を引き受けることができる体制(認可も含む)になっているかだけの問題です。
 
競技中のカバーについては、2つの方面から考えられます。
まず1つは、個人または所属する団体等を通じて傷害保険に加入するということです。競技内容によっては独自の割増料率を適用することになろうかと思いますが、どの会社でも引受をできないスポーツはありえないと思います。そんなのがあれば、そんなスポーツは危険すぎてスポーツとして倫理的になりたたないでしょう。また、保険会社側は一社で保有するのが問題なら、再保険に出すという手があります。
もう1つは、大会主催者がその大会のリスクに関して保険をかけるということです。これは一時的なものですが、少なくともその大会の競技中での傷害に関してはカバーされていると見ることができます。
 
以上の内容は、突飛で非現実的なものでしょうか?
保険はギャンブルだなんて見方しかできない人にとってはどうだか知りませんが、保険屋としてみれば至極常識的で妥当な内容だと私は思います。
 
オリンピックは大会としていろんな面できちんとしていますから、大会の競技中の事故に関して保険をかけている可能性が高いと思われます。
また、日本のオリンピック選手に関して言えば、JOCAIU保険会社あたりに保険をかけているのではないかと私は思っているのですが、どうなんでしょう?