保険法と自動車保険

今回の話は、再来年に施行されるであろう保険法関連です。
「保険法案 法律案」
http://www.moj.go.jp/HOUAN/hoken/refer02.html
法務省 国会提出主要法案第169回国会(常会))
保険法は、以下の5つの章で構成されています。

  • 第一章 総則(第1〜2条)
  • 第二章 損害保険(第3〜36条)
  • 第三章 生命保険(第37〜65条)
  • 第四章 傷害疾病定額保険(第66〜94条)
  • 第五章 雑則(第95〜96条)

損保会社の扱う大衆分野の商品に関しては、第二章の損害保険か第四章の傷害疾病定額保険のいずれかの縛りを受けることになります。
第二章と第四章はほとんど同じ内容ですが、当然異なる部分もあります。なので、どちらに属するのかきちんと把握しておく必要があります。
 
さて、傷害系の補償は無条件に第四章に属すると言えるのでしょうか?
例えば、自動車保険の人身傷害と搭乗者傷害は両方とも傷害疾病定額保険なのでしょうか?
私の考えでは、その問いに関してはNoで、
人身傷害 → 損害保険
搭乗者傷害 → 傷害疾病定額保険
です。
そう考えた理由は以下のとおりです。
(現時点ではどこからも人身傷害をどちらと解釈すべきか公式の見解は出ていないと思います。)
 
保険法第2条(定義)の第6号〜第9号に以下の定義があります。
なお、第7号の「傷害疾病損害保険契約」は、傷害疾病定額保険ではなく損害保険です。

六 損害保険契約 保険契約のうち、保険者が一定の偶然の事故によって生ずることのある損害をてん補することを約するものをいう。
七 傷害疾病損害保険契約 損害保険契約のうち、保険者が人の傷害疾病によって生ずることのある損害(当該傷害疾病が生じた者が受けるものに限る。)をてん補することを約するものをいう。
八 生命保険契約 保険契約のうち、保険者が人の生存又は死亡に関し一定の保険給付を行うことを約するもの(傷害疾病定額保険契約に該当するものを除く。)をいう。
九 傷害疾病定額保険契約 保険契約のうち、保険者が人の傷害疾病に基づき一定の保険給付を行うことを約するものをいう。

人身傷害と搭乗者傷害の補償がこのどれにあたるのかを考えるのが真っ当な手順かと思います。
東京海上日動のトータルアシスト(一般自動車保険)でどうなるのか確認してみることにします。
人身傷害に関しては、第2章第1節 人身傷害条項の第1条(この条項の補償内容)および第4条(支払保険金の計算),第5条(損害額の決定)から、"被保険者が被った傷害による損害に対して損害額を支払う"ことが読み取れます。
従って、人身傷害は保険法第2条第7号の要件に合致するので「傷害疾病損害保険契約」となり、つまり損害保険ということになります。
搭乗者傷害に関しては、第2章第2節 搭乗者傷害条項の第1条(この条項の補償内容)および第4条(支払保険金の計算)から、"被保険者が被った傷害に対して定額を支払う"ことが読み取れます。
従って、搭乗者傷害は保険法第2条第9号の要件に合致するので「傷害疾病定額保険契約」となります。
 
これで人身傷害と搭乗者傷害がどちらの規定に従うことになるのか明らかになったのですが、保険法の条文にあてはめようとするとこれはどうすればいいんだろう?というところが出てきます。
その話は、また気が向いたときに書くことにします。