保険契約の分割譲渡についての方向性

フジサンケイビジネスアイに非常に興味深い記事がありました。
多分、金融分科会第二部会「保険の基本問題に関するワーキング・グループ」(以下、WGと書きます)で取り上げるテーマの話だと思われます。
 
ちなみに、WGは直近では、第46回が 9/16 に,第47回が 10/3 に開催されています。内容は公開されるはずですが、どうも怠慢らしくて公開されるのが非常に遅いです。
第46回については、9/17 の日記で分かる範囲(推測だらけ)で書いています。
その日記の最後でちらっと書きましたが、保険の規制緩和関係で「保険契約移転時における移転単位の見直し」も論議することとなっていたはずです。
 
「保険契約の分割譲渡 金融庁規制緩和を検討」
http://www.business-i.jp/news/kinyu-page/news/200810020066a.nwc
フジサンケイビジネスアイ 2008.10.2)
 

 金融庁は、保険契約の分割譲渡に関し、規制緩和の検討に入る。年明け以降、金融審議会(首相の諮問機関)で本格的な検討を始める。保険業法で事実上禁じられている契約の分割譲渡が可能になれば、保険会社は事業モデル構築の自由度が増し、「業界再編を後押しする」との声もある。世界的な金融危機を背景に、国内業界の再編が加速する可能性もある。
 
 現在は、保険会社が採算性の悪い保険契約だけを同業他社や子会社に譲渡したり、譲渡先の経営基盤が弱いなどによって契約者に不利な事業譲渡ができないよう、保険業法で分割譲渡が制限されている。だが、こうした規制は、経営の自由度を損なうため、保険業界が規制緩和を要望していた。

AIG の話もあるので、まってました!という感じですが、"年明け以降"ということは3か月は何も進めないのでしょうか?それが本当なら、随分とのんびりしたもんです。
もともと AIG の件がなくてもテーマにする予定だったことは分かっていますが、状況が変わってただちに決めるべき話になったのだから、もっとスピード感をもってやってもらいたいもんです。WGで整理をした後で、法律を手直しして成立させて施行するまでの部分でもそれなりに時間がかかるのですから。
分割譲渡が可能になれば、資金が潤沢な大手社でなくとも、他の会社の契約を受け入れやすくなります。また、フルラインで商品認可を持っていない会社でも、自社が認可を持っている種目(同系列の種目)だけを受け入れることが容易になります。
そう考えると、今回の AIG の件にまさにうってつけだと思います。(AIG が売却リストにのせれば、の話ですが。)
 

規制緩和の主な論点
・地域、顧客層など分割基準
・譲渡時の保険契約者の保護
・会社破綻時と通常時の区別
・保険契約者の保険会社選択
・保険会社の財産状況の確認

記事によると、本件の論点として↑の点があるそうです。
実は、保険会社はある意味でどんぶり勘定です。もちろん、種目別の損害率は把握しています。しかし、財布(一般勘定)は1つで、その財布にいろんな種目の保険料を入れて、その財布からいろんな種目の保険金を支払うのです。例外的に積立勘定という別の財布に分けている部分もありますが、そうしている保険は限られています。
なので、ロスの良い契約だけを選択的に他の会社へ移転してしまうと、残った部分のロスが悪化して、最悪は保険会社が最終的に破綻してしまう可能性があります。すると、その契約者は100%補償されないので不利益を被ります。
そういうことが起こらないように一定の基準を設ける必要があり、そのためには様々な角度からの検討を要します。
おそらく論点の主旨はそういうことだろうと思います。
 
この記事は今後の保険業界のトレンドを知る上で非常に意味のあるものです。10/2 に気付いていたら、絶対にその日のブログに取り上げる内容です。それが何故か見落としていて偶然に本日気づきました。どうも、10/2 付になっているけど、どうも 10/1 にUPされたようで、そのあたりがチェックから漏れた原因のようです。
 
余談ですが、保険に関する記事では新聞社のサイトの中で、フジサンケイビジネスアイはピカイチだと私は評価しています。ややタイムリーさに欠けるところが見受けられますが、それを補って余りある内容の充実ぶりと的確さで他の新聞社のサイトを引き離しています。おそらく記者がかなり勉強していると思います。
それに比べて、日経の酷いことと言ったら…。