富士火災の中期経営計画

富士火災海上保険株式会社が、『富士事業強化プラン』と銘打った2009〜2010年度の中期経営計画を公表しました。
昨今の経済状況や AIG の影響を特に富士火災は強く受けているせいか、縮小均衡方向の過激な内容となっています。
 
「『富士事業強化プラン』の策定に関するお知らせ」
http://www.fujikasai.co.jp/news/attach/09214.pdf
富士火災海上保険株式会社 ニュースリリース 2009.2.13)
 
この資料では、課題として以下の4つを挙げています。

● システム投資や人件費の増加などにより、一時的に事業費が過大となった
● 世界的金融危機の影響と資産運用リスクの偏りにより、多額の有価証券評価損が発生した
● 種目構成比の適正化により、収益性をさらに高める必要がある
● “お客さまの声”に基づいた業務品質の向上が強く求められている

1番目については、コスト削減で解決しようとしているようです。事業費の軽減はどこの損保でも進めようとしていることですが、富士火災は具体的かつ大幅な人員削減の施策を打ち出してきました。(余談ですが、例の3社統合も事業費の削減を目論んでいると明言されています。)
2010年度末までに70億円のコスト削減を目標とし、そのために、本社組織を3割減らす,営業・損害SCを60店統合する,事務の一極集中処理を進める,代理店の統廃合(5000店)を行う,一部システム案件の延期・凍結をする等のことを行うとのことです。これらのほとんどは、直接・間接的に人員の削減を織り込んでいるらしく、約600名(約10%)を削減するとのことです。自然減で対処できるレベルではないので、おそらく早期退職を募ることになるのではないかと思います。
 
2番目については、資本の増強と資産運用方針の見直しで対処するようです。
資本の増強は昨年末から年初にかけて既に行われました。そう言えば、その時に「今般の第三者割当増資およびそれを受けたAIGグループとの関係強化を踏まえて、当社では可及的速やかに中期経営計画を見直す予定です。」とコメントがありましたが、その"中期経営計画"がこれなのでしょか?それにしては、ほとんど AIG 色は出ていません。(cf.「富士火災の増資と AIG」
資産運用方針の見直しというのは、投資の比率について、リスクの高いものを減らして、リスクの低いもの(主に円建債券)を増やそうということのようです。
 
3番目については、儲けに繋がる部分の比率を高めようということのようです。人保険と火災保険を高めようと記されていますが、逆に言えば自動車保険の比率を下げようということに他なりません。ちょっと気になるのは、損害SCの縮小と共に、富士火災自動車保険の特色とも言える24時間365日の初期対応を止めるということでしょうか?
なお、増収率や損害率についても触れていますが、こちらは手段が具体的に書かれていません。
 
4番目は明確に施策として示されていないように思えます。"業務品質の向上"は、今更施策として出すようなものはなく、現場での地道な改善ということになりそうな気がします。