日本興亜損保と損保ジャパンの商品共同開発より

昨日発表された株式会社損害保険ジャパン日本興亜損害保険株式会社のリリース資料の中に、損害保険商品を共同開発する旨の記載がありました。
当初、読んだときは「日本興亜損保と損保ジャパンの統合(其の弐)」で書いた程度でどの種目で実施するのかくらいしか気になりませんでした。しかし、よくよく考えてみるとこれは今後の両社の行方を推測するにあたり、非常に大きな試金石であるように思えてきました。
「株式会社損害保険ジャパン日本興亜損害保険株式会社の共同持株会社設立による経営統合に関する合意について」
http://www.nipponkoa.co.jp/news/whatsnew/2009/news2009_03_13_keiei_togo.pdf
日本興亜損害保険株式会社 ニュースリリース 2009.3.13)
「株式会社損害保険ジャパン日本興亜損害保険株式会社の共同持株会社設立による経営統合に関する合意について」
http://www.sompo-japan.co.jp/news/download/200903131700.pdf
(株式会社損害保険ジャパン ニュースリリース・トピックス 2009.3.13)

> わかりやすさ
④ 両社で把握したお客さまの声を徹底的に分析したうえで、「わかりやすく」「安心していただける」損害保険商品の共同開発を実施します。
⑤ 商品およびそれを支える事務・システムの一元化を推進します。

この部分↑で冒頭に述べたとおり、損害保険商品の共同開発について触れています。
一方で、"Ⅳ.経営統合に向けた基本合意の骨子"の中↓で合併しないことを謳っています。

(3)いずれの企業・金融グループからも独立したグループ
持株会社傘下で両社の存続を前提とし、独立系の新グループとして、いずれの企
業・金融グループとも等距離かつ友好な関係を構築します。

両社の商品開発部門が共同で保険商品の開発すること自体は、どの販売チャネル向けのどの種目であってもそれほどハードルは高くないものと思います。しかし、それは金融庁の商品認可を取得するまでの話です。
実際に販売するには、その商品の契約を管理するためにシステム対応を行う必要があります。ここで問題になるのは、代理店システムなどの入口ではなく、契約管理システム等の基幹部分です。言うまでもなく、両社のシステムは別々です。合併をしないのだから、損保システムの根幹とも言える契約管理システムを統合することもしないし、片方のシステムを廃止することを前提にもう片方だけのシステムで受け入れるということもしないでしょう。なぜなら、契約管理システムというのは事務処理と密接につながっており、損保の実務のバックボーンとも言える存在だからです。従って、既存商品については、当面はそれぞれの会社のシステムでしか扱うことができない状態が続くものと思われます。
 
これらのことを踏まえて、共同開発した新商品をどうするのかを考えてみたときに、取り得る選択肢は以下のいずれかになります。
A案.両社のシステムで受け入れることができるよう両方に改修を施す。
B案.片方のシステムでのみ受け入れるよう片方のみに改修を施す。
当たり前ですが、A案はB案の2倍のコストがかかります。コスト重視なら、当然にB案ということになりますが、その場合は新商品対応したシステムを持つ会社がその契約の引受保険会社となるでしょう。
 
両案のどちらをとるのかについて、ざっくりと考察すると以下のようになります。
A案をとった場合は、両社存続は当面の間保持されると思われます。少なくとも、国内における既存販売モデルに関しては、両社が緩やかに提携することはあっても抜本的に変化する見込みは小さいと思います。事業費の改善についても、それほど進まないでしょう。
B案をとった場合は、両社合併を見据えた動きが想定されます。単純な合併ではなく、分野別の再編という形式も将来はあり得ると思います。いずれにせよ、既存商品は随時新商品に置き換えられ、システム対応した会社の方に寄せられます。片方の会社としか代理店委託契約をしていない代理店はもう片方の会社と委託契約をする必要が出てくると思われます。A案に比べれば、新商品の販売準備にかかるコストは半分になりますし、既存商品を売り止めにして片方のシステムに保有契約が寄ってくれば、維持コストも僅かに軽減できてきます。また、こちらの場合、もっと積極的に片寄せをすればシステムコストや事務コストの軽減が見込まれ、事業費の改善も進むでしょう。
そして、A,B案のどちらにするのか決めかねて、いつまでたっても新商品が出てこない場合は、社内の勢力争いのごたごたが予想されます。この場合は、両社の未来はおそらく暗いものになるでしょう。
 
大胆な予想ですが、スジは通っていると思います。
個人的な感触では、日本興亜損保はA案をとりたがり、損保ジャパンは自社システムで対応することを前提にB案をとりたがるような気がします。