ネット生保2社のアンケート結果

ダイレクト系生保であるライフネット生命保険株式会社SBIアクサ生命保険株式会社が合同でアンケート調査を行った結果が、4月23日に公開されています。
「〜業界初、「ネット生保に関する共同調査」〜
 ネット生保に興味がある人はどんな人?生命保険をネットで買う時代が到来」
http://www.lifenet-seimei.co.jp/newsrelease/2009/1683.html
ライフネット生命保険株式会社 ニュースリリース 2009.4.23)
http://www.sbi-axa.co.jp/corporate/news/news_090423.html
SBIアクサ生命保険株式会社 ニュースリリース 2009.4.23)
 

調査対象 ネットエイジアリサーチのモバイルモニター会員を母集団とする20代〜50代の既婚者の男女 1,000名を対象
年代 20代  30代  40代  50代  合計
男性 125名 125名 125名 125名 500名
女性 125名 125名 125名 125名 500名
合計 250名 250名 250名 250名 1,000名
■ 調査期間 2009年4月10日〜4月14日
■ 調査方法 モバイルリサーチ
■ 調査地域 全国
■ 有効回答数 1,000サンプル
■ 実施機関 ネットエイジア株式会社

調査対象は、携帯ユーザーです。性別・年代のバランスを均等にして実施したのが分かります。
ただ、有効回答数がきっかりすぎるのが気になります。質問を投げる対象は調査会社がコントロールできますが、それに対する有効回答はそうもいきません。多めにアンケートを投げて、性別・年代別に有効回答が125になった時点で打ち切ったのでしょうか?それとも、100%の回収率なのでしょうか?アンケート内容とは無関係ですが、興味がそそられる部分です。
調査対象に関して、もう1つ気づいたポイントがあります。それは、この生保2社の契約者を対象としたものではないということです。外部の調査会社にわざわざ委託していることから、それは明らかです。その目的は、潜在的な顧客の存在を把握するためではないかと思います。
携帯ユーザーでこのようなモニタに登録している人と言うフィルタがかかっていますが、現役以下の世代は携帯をいろんなことに利用する人が多くなってきているので、そういう意味では現時点よりもやや近い将来の傾向を示すものになっているのではないかと思います。
 
しかし、この調査対象と調査内容で不整合のある箇所があります。
調査対象では「既婚者」と限定しているにもかかわらず、アンケートでは「結婚している」かどうかをヒアリングしています。しかも、↓で分析までしてしまっています。これは、調査会社が実は既婚に限定していないのか/回答者が適当に回答しているのかのいずれかではないかと思います。もしも後者だとしたら、調査結果の信頼を揺るがす問題だと言えます。

ネット生保に関心を持っている人はどんな人?
20代〜50代の男女で『インターネットで生命保険を買うことに興味がある』と回答した471名と『興味がない』と回答した529名の価値観やライフスタイルの違いについて調べてみたところ、『興味がある人』の回答が『興味のない人』の回答を上回ったのは上から順に、「金利の動向には敏感なほうだ」0.44ポイント差、「スマートフォンに興味や関心がある方だ」0.39ポイント差、「結婚している」0.36ポイント差、「金融商品の良し悪しについて、自分なりの判断ができる」0.35ポイント差、「子供がいる」0.22ポイント差、という結果となりました。
このように、ネット生保に興味がある人は、ネット生保に興味がない人に比べ、①結婚して子供がいる割合が高い、②スマートフォンなどのデジタル機器に興味がある人が比較的多い、③金融にある程度精通しており、自分なりの判断ができる、というような人物像が浮かびあがる結果となりました。

尤もこの調査結果の信頼度が仮に低くても、保険に限らずネットで購入する人には自分で能動的に考えて行動し判断する特性が強いと言えると私は思っています。なぜなら、ネットというのは基本的に利用者がプルする仕組みとなっていて、販売側がプッシュして受動的な人に購入させるのに向いていないからです。
 

生命保険はネットで買う時代が到来
20代〜50代の男女1000名に対し、今後インターネットで生命保険を買うことについて、どのように思うのかを聞いてみたところ、47.1%の回答者が『興味がある』(「すでに加入した」1.9%、「興味がある」14.1%、「やや興味がある」31.1%の合計)となり、『興味がない』(「あまり興味はない」33.9%、「興味はない」19.0%という結果になり、)との回答は52.9%という結果になりました。
次に『興味がある』と回答した471名に対し、インターネットで生命保険に加入する“メリット”はどのようなところに感じるのかを複数回答形式で聞いたところ、1位「自分の好きな時間に手続きが行える」60.5%、2位「手続きがはやい」57.5%、3位「安い」54.8%という結果となり、“デメリット”の回答結果(複数回答形式)は、1位は同率で「きちんと支払ってくれるか不安」、「まだ新しい会社・方法なので信用が不安」44.8%となり、3位「相談できない」39.1%という結果になりました。

ネットはもはや単なる通信手段の域を出て、職場の繋がり,地域の繋がり,取引先の繋がり,趣味の繋がり等と並列して広くて緩いネットの繋がりを形成していると思います。そのような状況にある人にとって、インターネットで生命保険を買うことについても、一定の条件が整えば抵抗なく受け入れられることは容易に想像できます。
では、その一定の条件とは何なのか?それは解消可能なものなのか?という視点で見ると将来が見えてくると思います。
 
これらの他にアンケート項目として、生保会社・生保業界に求められることがありました。それらの結果は今の業界動向・課題とほぼ一致したものと言えそうです。
これは、先に述べた「自分で能動的に考えて行動し判断する特性」を持つ人が、モノをネットで購入するにあたり何を望むかと関連付けて見ると興味深いです。そのあたりは、アンケートを実施した2社は分かっていて、設問を用意したのでしょうけど。