政策評価財務省議事録−地震保険

財務省のサイトにおいて、4月24日に「第36回財務省政策評価の在り方に関する懇談会 議事録」の公開がされました。
「第36回 財務省政策評価の在り方に関する懇談会 [議事要旨]」
http://www.mof.go.jp/singikai/hyouka/gijiyosi/a210325.htm
「第36回財務省政策評価の在り方に関する懇談会 議事録」
http://www.mof.go.jp/singikai/hyouka/gijiroku/210325.htm
「第36回 財務省政策評価の在り方に関する懇談会 資料」
http://www.mof.go.jp/singikai/hyouka/siryou/a210325.htm
財務省 審議会・研究会等 > 財務省政策評価の在り方に関する懇談会 > 議事録等)
 
今年度は財務省政策評価として地震保険が取り上げられています。
政策評価制度は総務省行政評価局が主管するもので、評価対象となった政策の評価はその政策を所管する各省庁が行うもののようです。政策評価制度に関しては、↓のリンク先に一通り揃っているようです。
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/hyouka/seisaku_n/index.html
 
地震保険の販売は民間が行っていますが、損保会社はその保険料をすべて日本地震再保険株式会社に出再し、地再社はその一部を国に再々保険しています。つまり、国は単に保険を監督する立場というだけでなく、財政的に影響を受ける立場でもあるというわけです。これは、地震保険創設時において、民間の保険会社でリスクを保有すると巨大地震が発生した際に、破綻してしまう可能性があったこともあって、このような仕組みにしたようです。詳しい経緯は、損害保険料率算出機構のサイトにあるので割愛します。
 
前置きが長くなりました。議事録の中身から、どんなことが検討されているのか見ていこうと思います。とは言いつつ、この会議自体が地震保険のみにスポットをあてたものではないため、地震保険について述べられている箇所はほとんどありませんでした。

○田辺国昭 3点ほどお話し申し上げたいと思います。
  (略)
特にこれ、地震保険と書いていますけれども、全体の設計は地震保険だけではありませんで、災害に対する対策というのはもうハード面だけできちんきちんとやるのは無理だと。むしろ、そのリスクをどういう形で民間が考え、それをどういう形で政府の方がサポートするのかという体制がここ数年ぐらい、もう少し長くかかっても地震とかは余り早く来てほしくないんですけれども、その間に体制を整えようということですので、地震保険だけではなく、国交省のいろいろな助成政策等もありますので、それと絡めて次に何をしなければいけないのかというのが明確にわかるような評価書をつくっていただければ利用できる、次に役立つものになるのではないかと。御負担ではありますけれども、しっかりやっていただきたいというのが2番目です。
  (略)

↑は、東京大学大学院教授の田辺氏の発言です。
ここで言われている全体の設計が指すものは「地震が発生しても被災者が生活を継続できる制度の設計」で、ハード面というのは地震がきても被害が出ない建物(耐震)の普及を意味しているのではないかと思います。建物の耐震に関しては、国土交通省が建築物に対してかけている規制に関連する内容が当たりそうです。
言わんとしていることは尤もな話で、保険だけをクローズアップするのではなく、全体を見て政策評価をしてはどうかということのようです。
例えば、地震保険の普及についてよく注目されますが、耐震建築物/非耐震建築物での加入率といった見方はあまりされません。全体から考えると非耐震建築物での加入率を高めることが重要だと思います。

○川北総括審議官 平成21年度に地震保険につきまして総合評価をするということの御言及がありましたので、一言補足させていただきます。
地震保険につきましては、財務省としては民間保険会社が負います地震保険再保険するという立場でかかわっておりますが、今回の総合評価ということで、地震保険の加入率を向上させるというような観点も評価のポイントに入っております。したがいまして、財務省として再保険を提供する立場から、どのような形でその調査をし、評価をするかということが、総合評価にかけまして手法の課題となってくると思いますが、この辺は御指摘もありましたし、よく政策評価の担当と相談いたしまして、適切にやりたいと思っております。

↑は、財務省サイドの発言です。地震保険の加入率はもともと調査対象に入っていて、その具体的手法はこれからとのことです。
調査についてのポイントは、↓の資料2に記載されていました。
政策評価独立行政法人評価委員会 政策評価分科会(3月27日開催) 議事要旨」
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/hyouka/dokuritu_n/gijiroku/090327_gijiyosi.html
総務省 組織案内 > 審議会・委員会 > 政策評価独立行政法人評価委員会 2009.4.20)
これによると、保険会社へのアンケート,消費者へのアンケート,各種データによる分析の3種類を主に使うようです。
このデータの分析に関しては、損保料率算出機構のものだけでなく、国交省とも協力してやってほしいと思います。例えば、耐震建築物での加入率を分析しようと思ったら、分子はともかく、分母の方は損保料率算出機構では分かりません。また、ここはイ/ロ構造の切り口ではなく、国交省の政策での切り口で調査した方が政策とその効果の検証に役立つはずです。
 
地震保険は、現在は保険者側の理屈がほぼ一方的に通っていて、消費者サイドから見れば補償が限定的な割に保険料が高い商品です。とは言え、損保会社も地震保険は儲けにならないので、販売することに必ずしもメリットがあるわけではありません。
しかし、自由化して各社まかせにしたら、間違いなく地震保険の規模は縮小するでしょう。いろいろな課題がある中で、国が関与するのも仕方ないし、政策として税金を投入して行う以上はその評価をするのも当然です。
ただ、評価結果による拙速な判断がないようにと思います。