数値化と契約のしおりの評価

「保険の基本問題に関するワーキング・グループ(第49回)議事次第」で公開されていた(砂田委員提出資料)保険会社の「契約のしおり・約款」比較評価表(PDF:1,090K)がいつの間にか差し替えられていました。実は、4月6日に「明治安田生命の「保険がわかるサイト」」を書いた時にそのことに気付いていました。最初にUPされた資料では会社名が実名だったのですが、それが匿名に差し替えられていたのです。
 
その経緯については、「保険の基本問題に関するワーキング・グループ(第50回)議事録」で明らかにされていました。

貴重なお時間をちょうだいいたしまして申しわけございませんが、金融庁ホームページの資料の差しかえのお願いをさせていただきます。
平成20年12月19日に開催されました保険の基本問題に関するワーキング・グループ第49回におきまして、私、消費者の代表として発言の機会を頂いたときに使用しました資料1の「保険会社の『契約のしおり・約款』比較評価表」は、NPO法人消費者情報ネット生損保研究会ぐるーぷ31が調査研究されたものです。 …(中略)… 当会の評価表の評価は、保険会社の関心を集めるための導入部で、そこから評価基準となった理由を読んでもらい、消費者視点の約款見直しにつなげたいという意図を持って調査研究されたものです。評価表に掲載された12社は、当会の調査研究のため、約款などの提出に協力された会社であると伺っております。それがホームページ上で公開されたことで、評価点数がひとり歩きし、興味本位にとらえられるおそれがあり、全く当会の意図に反する行為として、早急にホームページ上からの削除の申し入れがありました。私の思い違いで関係の皆様に多大なご迷惑をおかけしております。以下の3点について、資料の差しかえ、削除のお願いをいたします。
1、資料1の評価表の個別の会社名をA、B、C・・・に差しかえる。
1、当会の資料とは関係がない、私が作成した集計、対応の1ページを削除する。
1、資料2の「お客さま訪問活動」97名のアンケートは私が調査作成したものですが、訪問活動はスタートしたところであり、数値のひとり歩きを危惧し、個別の会社名を1、2、3・・・に差しかえ、作成者の私の名前を明記する。

以前に「保険の基本問題に関するWG(12/19)」で書いたとおり、あの資料の評価はあくまで「契約のしおり・約款」の見た目だけで保険商品そのものにはまったく踏み込んでいないものです。しかし、なまじ点数として数値化されただけに○○会社はXX点という数値だけを捉えた誤った評価が出回ったようです。特に中途半端な知識を持つ人は、安易にそのような傾向を示しがちです。数値というのは非常に分かりやすい指標ですから。
 
あの評価自体は分かりやすさという面で見れば間違ったものではないと思います。
しかし、紙ベースの帳票では、分かりやすさとコストはトレードオフの関係にあります。色数・余白・文字の大きさ・イラスト・紙質・ページ数などは、デザイン代,印刷費,紙代,郵送料などに跳ね返ってきます。そして、そのコストの元は言うまでもなく保険料です。
分かりやすい文書を作成することは良いことです。しかし、限られた保険料の中でコストをかけないようにしているという別の見方の評価があっても良いのではないかと思います。勿論、ペラペラの裏が透けて見えるような紙を使うことを評価するつもりは毛頭ありませんが。要は、バランスが大切であるということです。
一般に、1契約における保険料総額は生保の方が大きいです。従って、保険料中の新契約費も生命保険の方が多くなります。損保の契約のしおりが安っぽいのも、このあたりの背景があろうかと思います。