保険の基本問題に関するWG(3/3)

3月3日に開催された金融分科会第二部会 保険の基本問題に関するワーキング・グループの議事録が公開されています。この回については配布資料が公開された時に、3月6日のブログで配布資料から推測される内容を書いたのですが、今回は議事録なので議論された中身を見て書くことができます。
「保険の基本問題に関するワーキング・グループ(第50回)議事録」
http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/dai2/gijiroku/20090303.html
金融庁 審議会・研究会等 > 金融審議会 > 議事録・資料等 2009.5.8)
 
冒頭の資料差し替えの話は本題と関係ないので置いておきます。
最初は、日本損害保険代理業協会の話からです。どうでも良い認定保険代理士とやらのPRを延々とした後に漸く、議論できる話をおまけのようにしました。

まず1つは、保険募集現場における消費者に理解しやすい仕組みづくりということについて申し上げたいと思います。
   (中略)
したがいまして、募集現場の適正化のための各種ルールと、現実の消費者ニーズとのはざまに改めて目を向けて、形式に流れることなく、実効性のあるルールとする必要があると考えております。特に、私どもは損害保険代理店の業界でございますので、損保商品の即時加入の利点、また短期・低額という特性には十分配慮していただくことが必要かと思います。
具体的には、消費者向け各種書類の整理・統合を行い、契約者への説明は保険会社作成のパンフレットに集約して行うことができるようにすることが望ましいと考えております。今現在、各社のパンフレットにつきましては、かなり工夫がなされ、わかりやすく、イラスト等も多く、内容等の改善がされつつあります。このパンフレットの中に契約概要、また注意喚起情報、すべてではありませんが、重要な部分は盛り込まれていると思っております。
意向確認につきましては、確認項目のさらなる簡素化・平易化、また各社で確認項目の統一、確認書類と申込書の一体化を行い、より消費者に理解しやすい仕組みとする必要があります。こちらの書面を用いてこちらのことを説明するとか、かなりお客様にとってはわかりにくい、確認しにくいというところがあるのではないかと思っております。まずはお客様に理解していただけるよう、もっともっと努力することが大事だと思います。そして、何よりも募集人が商品説明を正しく行う、これが基本でありまして、これなくして実効性あるルールは完成しないと思います。

これは至極まっとうな意見です。規制ができたり問題が生じたりする都度、その問題の解消(あくまで保険会社が免責を主張するための道具に過ぎないわけですが)のために、様々な帳票を作り、それの使用を押しつけてきました。
その結果、契約者が確認をするべきことになっている書類・項目は膨れ上がり、実効性を失っているのが現状だと思います。
例え、そうだと分かっていても、もはや保険会社からそれを改善することはできないでしょうから、これは誰かが声をあげる必要があることです。この場で、日本代協がこのことを指摘したことは価値があると思います。
その後の残り2つの提言は↑に比べれば、日本代協とそこに所属する代理店の利害がメインの内容に思えます。ただ、乗り合いの際の既存保険会社の事前承認でハードルが高いというのは、問題視されても良い話だと思います。それは既存保険会社のエゴなのですから。
 
その次は、日本保険仲立人協会からの話です。ブローカーはその実態・実務そのものが広く知られていないこともあって、その説明がかなりのボリュームを割いています。おかげでいろいろと知ることができましたし、かなり厳しい規制に縛られているということも分かりました。なるほど、これではそれなりの規模の法人でなければブローカーになれないというのも分かります。

以上のところで要約をいたしますと、仲立人には、保険募集上の細かいところまで法律上に定まった規則がございますので、その規則に沿った形でビジネスモデルが今日でき上がっております。しかしながら、この12年間で結局のところ33店しか仲立人が存在しない。このことは、この制度が保険募集面で基本的にうまくいっていないと、結論から申し上げると、そういうことだと思います。社会に貢献できる仲立人制度にもなっていない。我々としてはこれが本当に申し上げたい大きい趣旨でございます。

しかし、その規制は、規制のための規制である印象を受けます。また、逆に本来は法的な効力を持たせるべき書類にその効力がまったくなく、慣行で行っていることやその取り決めを理解していない保険会社社員が存在していることが述べられています。
このあたりもこれを機に制度を整理し直すべきかと思います。

社会環境が、個人にてもリスクの認知度が広がり始め、特にファイナンシャルプランナーの方の増加によって、個人リスクのコンサルティング業務が消費者には違和感なく受け入れられておりますので、そういうところから仲立人のビジネスが受け入れられる環境が生まれていると判断しております。したがって、申込書記載内容と変わらないような個人保険・家計保険の分野に仲立人が活躍することになれば、このことについては極めて工夫が必要であると思っております。
さらに最近では、生保を主として取り扱う乗合代理店から私どもの協会に仲立人としてやりたいという問い合わせが結構多くなりまして、早急にこの交付環境の整備を求めたいと思っております。

これはなかなか興味深い意見です。現在はブローカーと言えばホールセールのみですが、確かにFPは保険を販売するなら乗合代理店になるよりもブローカーになる方が、その存在意義からしても理にかなっています。
リテール分野でブローカーが活躍できるようになれば、今までの保険会社の論理で保険商品が開発・販売される状況が変化してくると思います。言うなれば、契約者が保険アドバイザーを雇って、保険会社の代理人ではなく、契約者の保険アドバイザーのアドバイスに基づいて保険を選択・購入するという具合です。(保険会社の情報開示と保険アドバイザーに高度なスキルが前提となります。)
その次の手数料の話も尤もな内容だと思うのですが、これは4月22日に「保険代理店の保険料に対する裁量」で書いた内容とかぶるので今回は割愛します。

応諾義務についてです。応諾義務は業務の課題であって、参入要件でございます。仲立人と保険会社の関係において、仲立人取引を円滑に進めることへの整備を要望したいと思います。顧客の代理人としての立場をとる仲立人が、仲立人であるという理由だけで業務契約を事実上拒否している保険会社がございます。このことは、保険業の公共性にかんがみ、保険募集の公正を確保することの検証として、明らかに法の精神をゆがめているというのが私どもの主張でございます。個々の保険契約にあっての、引き受けの可否を決めることとは意味合いが違います。保険会社が、「非常に高いリスクがあるので引き受けません」ということとは理由が違うのです。このことが仲立人参入障壁として、また参入不安の要因とも現在なっております。現在の仲立人取引を拒否する保険会社の言い分によりますと、対応ができないということを第一の理由に挙げ、また保険会社の会社方針であると堂々と言われます。

↑はまったく予想していなかった話です。是非、具体的に保険会社の名前を挙げてもらいたかったところです。と言うか、これは金融庁が正式に調査して、保険業法の趣旨に反していることが認められれば当該保険会社に対して行政処分をすべき内容ではないかと思います。
 
この両者の話が一通り終わった後のやりとりもなかなか読みごたえがあります。
いろいろな課題が浮き彫りになってきたので、その解決に向けてどのような手段をとるのか興味があります。