住友生命の変額年金の扱い

この不況で変額年金から撤退する生保会社が目立ちます。
元本保証をするタイプの変額年金は、元本保証のある投資信託のようなものです。今の経済状況からすると、満期時に少なくとも元本を填補するために内部留保を厚くしておく必要が出てきます。勿論、それは保険料とは別口で用意しておく必要があります。なぜなら、預かった保険料をどのような手段・振り分けで運用するのかを契約時に約定してしまっているからです。
先般、住友生命保険相互会社ニュースリリースでその内部留保の積み増しと元本保証のある一時払変額年金を販売中止が発表されました。
「平成20年度 変額年金保険に係る標準責任準備金積立に関するお知らせ」
http://www.sumitomolife.co.jp/news/090508.pdf
住友生命保険相互会社 ニュースリリース 2009.5.8)
変額年金保険に係る標準責任準備金積立額は、平成19年度末では677億円だったのが、平成20年度末では1638億円(見込み)と大幅に増えています。景気が良くなり運用成績が上向けば、これがそのまま支出されるのを避けることができますが、万が一今の状況が十数年続くことになったら、この積み立てた分を実際に使う羽目になろうかと思います。
しかも、今後保有契約(保険料)が伸びれば、平成21年度末は更に大きな額を積む必要が出てきます。確かに、これはこのまま放置しておくのと拙いことになりそうだということは分かります。
 
そこで、住友生命が出した結論は以下のものでした。具体的には、今年の9月末から元本保証の一時払の変額年金を販売停止するというものです。

今後の金融機関・郵政代理店における販売の方向性について

  • 資産運用環境の悪化によって変額年金保険の資産変動が大きくなる中、競合他社の販売抑制等の競争環境変化もあり、当社の変額年金保険(年金原資保証タイプ)の販売が急激に増加しております(*)。
  • こうした市場の変化を踏まえて、当社に販売が集中し、保険引受量が想定を超えて急増するリスクを適切にコントロールしていく観点から、現在販売中の変額年金保険の一部について販売の一時休止を予定しております(平成21年9月末)。

(*)<新契約実績でみた銀行等窓販における市場占有率
  件数ベース:約5割、保険料ベース:約4割(平成21年3月実績・当社調べ)

一般論として、保険会社は自分の会社の体力に応じたリスク量の中でしか保険の引受を行いません。そのリスク量を超えそう場合に、最も簡単な調整の方法は販売停止です。
このような場合に、損保では、他にもよく使われる手があります。再保険に出すのです。契約をしても、自社で保有しなければ、それはリスクになりませんから。(厳密には、出再先の倒産リスクを考慮する必要がありますが。)
 
住友生命は販売停止という選択をしましたが、キャッシュフローの観点からすると一定量流入がある状態にしておいた方が好ましいような気がします。販売停止以外にも自社の保有リスクを軽減する方法として、2つ思い当たるものがあります。
素人考えですが、変額年金の再保険というのはできないのでしょうか?ちなみに再保険の場合は、Q/S を想定しています。既存契約はどうしようもありませんが、新規契約なら出再先が見つかれば不可能でもないような気がします。再保険の代わりに共同保険でも同じ効果が得られますが、共同保険の方がハードルが高いと思います。
もう1つが金額の制限です。例えば、1人の顧客につき、1年間の一時払保険料を100万円に制限するというものです。こちらは、名寄せの仕組みさえ作ってしまえば簡単にできそうです。