震災パートナーズがSBI損保とコラボするなら?

日本震災パートナーズ株式会社SBIホールディングス株式会社の子会社になっていて、6月28日から社名も変更する話は「震災パートナーズがSBI少短に」(2012.6.9)で書きました。
そのプレスリリースの中に以下の記載がありました。

この度、SBIを冠した商号へと変更したことを機に、統一化されたSBIブランドのイメージを訴求し、SBIグループ各社との一層のシナジーを追求してまいります。また、今後は主力商品である地震補償保険のみではなく、顧客ニーズに合致した幅広い少額短期保険商品の開発・販売にも取り組む予定です。

震災パートナーズの平成20〜22年度の損益計算書の保険料等収入を見ると伸びてはいるものの、このペースの伸びでは経常収益が経常費用を上回るのに少なくともあと5年はかかりそうです。また、まだ公開されていませんが、平成23年度の損益計算書では支払保険金が2億円程度乗ってくるでしょうから、更に黒字化は先になると予想されます。
この状況を打開するには、費用を切り詰めて何とかなるレベルではないので、収入を大幅に増やすしかありません。
従って、SBIHDも単に増資を引き受けただけでなく、収入増加に向けた手を打つだろうと思っています。
 
そこで、勝手に震災パートナーズがSBI損害保険株式会社と業務提携をして何かやるとしたら、どんなのができるか考えてみました。
なお、以前に書いた「震災パートナーズが拡販するとしたら?」(2009.8.9)では、震災パートナーズの手持ち商品を前提にしていました。この時は地震補償をベースとした新商品の開発は念頭においていなかったのですが、選択肢として除外する必要もなさそうです。どうせ再保険市場がハードなのには変わりはないでしょうし、リスク管理も既にあるノウハウを利用することができるでしょうから。
 
言うまでもなく、震災パートナーズの特色は地震補償保険をノウハウを含めて持っていることです。
SBI損保自動車保険をネット主体で販売しており、SBIHDの決算説明会資料によると40万件ほどの契約があるようです。そして、勿論、SBI損保自動車保険地震は免責です。車両保険で地震を拡張担保する特約もありません。
しかし、昨今では車両保険で地震補償をするよう望むニーズが結構あるようで、大手損保は保険金額を50万円に押さえて支払事由も全損のみとした小さな地震補償がある特約を2011年に新規開発して販売しています。この特約の話と掘り下げると長くなりそう(既に長くなってますが…)なので、また改めてネタとして取り上げることにします。
また、インターネットで募集している自動車保険で、地震補償があるものは私の知る限り現時点では存在しません。
 
これらの前提を材料に考えると、SBI損保の個人総合自動車保険に震災パートナーズが車両の地震補償商品をセットして販売するという手が思い浮かびます。
この震災パートナーズの新商品は、車両を保険の目的とするモノ保険とするのではなく、既存の地震補償保険Resta(地震被災者のための生活再建費用保険)のように費用保険とするのが適切かと思います。そのポイントは、車両保険の地震免責を撤廃する位置付けのものではなく、別の保険であり、損害額や支払保険金の計算も車両保険とはリンクしないようにすることにあります。
また、損害調査のことを考えると上で書いた大手損保の新特約のように支払事由を全損のみにするのが妥当でしょう。
保険金額は車両価額を上限に10万円単位で任意に設定可能でいいのではないかと思います。モノ保険ではないので、不当利得が発生しないよう上限だけを縛れば、車両価額=保険金額としなければならない理由もないでしょう。
勿論、全損のみの支払なので、免責金額は0円でよいと思います。
すると保険料は完全に保険金額比例となります。一本料率とし保険金額10万円あたり保険料1,000円くらいの水準でいけるのではないかと思います。なお、地域別の料率にするという選択肢もありますが、SBI損保自動車保険は地域をリスク細分項目としていないので、販売・契約保守のし易さを考えると全国一律料率にした方がよいと思います。
 
と、こういう商品を震災パートナーズで開発したとします。
これをSBI損保にて直接販売するようには、まずSBI損保がその商品の契約締結権(告知受領権も)を持つ必要があります。現状、震災パートナーズは代理店で商品販売をしても媒介代理のみでやっているようなので、そのあたりの業務委託契約に手を入れる必要があります。これは契約の問題だけならそんなに難しいことではないと思います。
寧ろ、リスク管理の点で既に地震が発生した地域や余震の可能性が高い地域からの契約申込みをいかに制御するかがポイントです。
これらの地域の場合、自動車保険単品の契約締結は問題ありませんが、新商品の付帯は防ぐ仕組みを考える必要があります。逆に、新商品の付帯を防いだら、自動車保険単品も契約できないということが起こってはSBI損保にとってはマイナスになるので要注意です。
それには、SBI損保自動車保険の申込みの一連の処理の中に新商品の申込みを組み込むのがベストだろうと思います。
つまり、以下のような感じです。
[a.自動車保険の見積り]→[b.自動車保険の申込み]→[c.新商品の案内]→[d.新商品の申込み]→[e.保険料の払込み]
この[c.新商品の案内]の時点では記名被保険者の住所は判明しているでしょうから、地震リスクが高い地域の場合には[c.新商品の案内]・[d.新商品の申込み]を通らないように制御すればいいわけです。勿論、車両保険を付帯していない契約の場合も同様です。
そして、SBI損保に契約締結権を持たせるもう1つの意味は、契約保守にあります。セットで販売した商品ですから、自動車保険契約の異動・解約と同時に新商品の方のも同じ内容の異動・解約が発生することは普通にありえます。その時に契約者に別々の窓口に承認請求をさせるというのはナンセンスです。
異動・解約を一本の窓口で受けるなら、SBI損保側でやるのが妥当でしょう。それで、媒介しかできないのでは拙いわけです。
 
この新商品による業務提携のメリットは、以下のとおりです。
震災パートナーズにとっては、収入保険料を伸ばすことができます。しかも、莫大な広告宣伝費を投下する必要はありません。コストパフォーマンスの良い方法だと思います。
SBI損保にとっても、競合ダイレクト系損保の他社との明白な差別化になり、自動車保険本体の契約量の増加が期待できます。また、新商品に対しては代理店手数料収入もおまけでついてきます。尤も、代理店収入に関しては、SBIグループ内でのお金の移動なのでSBIHDの立場からはメリットになりませんが。
 
勝手な構想を軽く書くつもりでいたら、思っていたよりも具体的になり、書いた分量も増えてしまいました。
悪くない案だと思いますが、どうでしょう。