朝日火災の運送保険不祥事の業務改善計画

昨年の12月28日に金融庁から出された「朝日火災海上保険株式会社等に対する行政処分について」に関して、朝日火災海上保険株式会社ヤマト運輸株式会社沖縄ヤマト運輸株式会社は、1月28日に業務改善計画を提出したらしく、そのことが3月12日に公表されました。
ちなみに、「朝日火災とヤマト運輸の運送保険不祥事」(2009.12.29)で、このような問題があるのは朝日火災とヤマト運輸に限った話ではないのでは?と書きましたが、類似事例に関する摘発は行われていないようです。芋づる式に出てくると思ったのですが。
 
「ヤマト便運送保険の取扱いにかかる業務改善計画の提出について」
http://www.asahikasai.co.jp/topics/detail.html?id=135
(朝日火災海上保険株式会社 トピックス 2010.3.12)
 
「運送保険募集業務に係る業務改善計画の提出について」
http://www.yamato-hd.co.jp/news/h21/h21_83_01news.html
ヤマト運輸株式会社 ニュースリリース 2010.3.12)
http://www.okinawayamato.co.jp/pdf/20100312new.pdf
沖縄ヤマト運輸株式会社 ニュースリリース 2010.3.12)
 
今回の行政処分の理由を大雑把に分けると「運送保険の募集に関する問題」と「求償権を行使しなかったこと」の2つです。後者の方に関しては、朝日火災の問題とされており、業務改善の指示も朝日火災だけに対して行われています。(朝日火災が求償権を行使しようとしたけどヤマト運輸が拒んだということであれば、ヤマト運輸の問題ですが、そのような報告はされていないようです。)
 
求償権の行使に関しては、朝日火災の業務改善計画に以下のように記されています。

弊社はお客様への保険金支払時に取得した求償権につきましては、お客様の目線に立って適切な行使に関する態勢の整備をすすめ、運用することといたします。
平成22年7月までに、「求償権マニュアル」を作成し、「ヤマト運輸社に責任があるものの求償権」および「ヤマト運輸社以外の第三者に対する求償権」の適切な行使を実施します。

これを見る限りでは、統制の取れた形での求償の態勢はなかったようです。(既にマニュアル等があって、それをきちんと実施するという内容ではないので。)
このマニュアル作成は商品部が作成することになっています。損害サービスの実務に商品管理部門がどこまでかかわって把握できるのかということには少々疑問を感じます。しかし、商品開発に携わる部門が損害処理の実態を把握し、統制をとることは良いことであると思います。一般的に、商品開発自体はどちらかというと販売の方に目を向けることが多いので。
それよりも、私個人としては1センテンス目に違和感を感じます。それは「お客様の目線に立って」の部分です。本来は、ヤマト運輸が負担すべき金額を結果として保険契約者が負担していることを是正するのが改善の趣旨ですが、それは契約者のためにというよりも元々求償すべきものを当然に求めるということです。
結果として、適切な運用が継続できれば問題ないのですが、何故そうしなければならないのかを実行する人たちがきちんと理解していないと、将来は形骸化するリスクが高いと思います。
 
運送保険の募集に関する問題に関しては、現行の商品・募集ルールをきちんと遵守することが書かれています。
とりあえず、無資格募集は行わないように、以下のように既にしています。

コンビニエンスストア取扱店でのヤマト便の取扱い停止と一般取扱店でのセールスドライバー用携帯端末システム(ポータブルポス、以下「PP」といいます。)を改修し取扱店で保険の取扱いができないしくみを構築しました。これにより、全ての取扱店での無資格募集は発生いたしません。

また、重要事項説明をきちんと行う旨も業務改善計画書に記載されています。
ただ、そもそも宅配便にかける保険について、現在の保険規制に則るルールをそのまま適用すること自体に無理があると感じます。コンビニエンスストアから宅配便を送る際は、運送約款で保証されない事故の場合は一切補償を付けることができないことになりますが、それが利用者にとって好ましいとはとても思えません。
しかし、送り主を保険契約者とする限りにおいては、どうしても現在の保険規制ではこのような対策しか出てきません。
この点に関して、朝日火災は以下のとおり運送保険の見直しを検討することとしています。

今回の事象を踏まえ、社外メンバー(弁護士、消費者など有識者)、ヤマト運輸社、他損保社(共同保険会社)を委員に含む検討チームで『Task Force 運送保険商品最適化の検討』を平成22年2月中に発足させ各種検討を行います。『Task Force 運送保険商品最適化の検討』では、運送保険の商品性や管理の体系を検証、再検討し、運送保険の商品性を最も時代に則した最適なものを構築します。なお、本タスクフォースは平成22年9月以降も実効性が確認できるまで継続実施してまいります。

今回の業務改善計画で最も注目すべき点はこの部分だと思っています。
ここでどのような検討がなされ、どういう結論が出されるのか期待しています。
単純に考えるなら、運送業者が保険契約者となる保険商品にし、送り主に対しては運送約款の中に保険で補償する事故も運送業者が保証することとすれば良いのではないかと思いますが、どうなのでしょうか?