音声テキスト変換

AIGエジソン生命保険株式会社が、音声をテキストに変換するシステムをコールセンターに導入するというニュースリリースを4月27日に出していました。
このニュースリリースのタイトルを見た時に、てっきりコールセンターにおける録音した音声ファイルの代わりに、テキストにしたものを保管・管理するのが目的だろうと推測しました。特に電話で契約申込や異動の受付をするなら契約者が何を言ったのかを後日(数年後かも)に確認する必要が出てくることもあるし、電話でオペレーターと契約者がトラブルを起こした場合にどのようなやりとりをしたのか上長が火消しのために知る必要が出てくることもあります。このようなときにテキストファイルになっていれば簡単に情報の共有が可能だからです。ただし、口調や間などのノンバーバルな情報が落ちます。それはそれで、幾分客観的に見れるという長所がある一方で、現場の状況を掴みにくいという短所があります。
しかし、この推測は↓の内容を読んで、外れだったことが分かりました。
「リアルタイムで音声認識を可能とするシステムをコールセンターに導入」
http://www.aigedison.co.jp/company/news/pdf/n_158.pdf
AIGエジソン生命保険株式会社 新着情報 2009.4.27)
このリリース資料によると、エジソン生命は音声認識保険テンプレートというみずほ情報総研株式会社のシステムを導入して利用するとのことです。エジソン生命がそのシステムをどのように利用するのかは書かれていませんが、システムの機能による効果として以下の3つを挙げています。

コンプライアンスの強化
リアルタイムにテキスト化したオペレーターの通話内容と、データベースに登録した「重要事項」や「商品説明等の必須項目」など、お客様にお伝えすべきチェックポイントを即時自動照合します。重要事項の説明が不足している場合にはオペレーターのパソコン上に訂正指示が表示され、重要事項の説明漏れを防止します。また、あらかじめ指定した用語をオペレーターが発した場合に注意メッセージが表示される等、昨今の法令に適応したコンプライアンス強化を実現します。
② お客様対応の品質向上
オペレーターの音声を自動でテキスト化し、通話内容をリアルタイムで管理者のパソコン上に表示します。同内容は遠隔地のパソコンにも表示することが可能で、複数の管理者による多面的なチェックと対応サポートを実現することによりお客様対応の品質を高め、お客様満足度のさらなる向上を目指します。また、オペレーターの音声からキーワードを認識し、キーワードに関連する資料や情報を、オペレーターのパソコン上に自動表示させることで、お手続きをはじめとしたお客様対応の迅速化を実現します。
③ 業務効率化とトレーニング品質の向上
通話内容記録の入力作業負担を軽減することで、業務の効率化を図ります。また通話中の、内容メモ記録等の負担も軽減されることで、お客様との電話応対により集中することが可能となります。さらに、通話データ(*)を元にしたオペレーター教育が可能となり、コールセンター全体のサービスレベルの一層の向上を図ります。
(*)録音された通話データは、個人情報保護法に基づき、取得時から6ヵ月以内に削除いたします。

これらを見ると、対象としている音声は主にオペレーターの方であることが分かります。そして、ちょっと凄いぞと思うのは、単にテキスト化するだけでなく、リアルタイムでチェックリストの消し込みをする点です。
また、リアルタイムでテキスト化するなら、1人のスーパーバイザーが複数のオペレーターのやりとりを同時に確認し、口ならぬ文字をはさむことができます。スーパーバイザーが常にチェックをするなら、このこともやりとりのレベルUPに寄与することと言えそうです。もしこれが電話だったら、7人の言うことを同時に聞ける聖徳太子並みの能力が求められるところですから。
オペレーターが自分でメモしなくても良くなる点に関しては、短所にもなりえます。重要なことをメモした場合は、普通は復唱して書いたことの確認をすると思います。復唱すれば、相手にも自分が言ったことが重要であることやその内容の確認にもなりますが、それも不要になってしまうからです。
最後の注釈を深読みすると、このシステムで取得した情報は「個人情報の保護に関する法律」第2条第5項の保有個人データとして扱わない…つまり、電話相手からの開示要求や訂正・消去の要求には応じないということも含んでいるような気がします。
 
この音声認識保険テンプレートは開発元のみずほ総研のサイトにも紹介のページがあります。
http://www.mizuho-ir.co.jp/it/voice/index.html
このみずほ総研のサイトの内容とエジソン生命のリリース内容にそれほど大きな違いはないことから、大きなカスタマイズなしにエジソン生命は導入したのではないかと思われます。
ちなみに、このシステムにおける音声認識技術は株式会社アドバンスト・メディアが開発した AmiVoice で、同社のサイトでもこの件のニュースリリースがされています。
「生保業界向け、「音声認識保険テンプレート」実用化へ
 〜 AIGエジソン生命、7月の本稼動に向け試行稼動を開始 〜」
http://www.advanced-media.co.jp/newsrelease/file/20090424151207_0.pdf
(株式会社アドバンスト・メディア ニュースリリース 2009.4.27)
余談ですが、この件の影響でアドバンスト・メディアの株価が上がっているようです。