監督指針の保険法対応

保険法対応を踏まえた「保険会社向けの総合的な監督指針」の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果と監督指針の確定について、金融庁のサイトにて公開されています。
内容としては、2/27の「「保険会社向けの総合的な監督指針」の保険法対応」の続きということになります。
「保険会社向けの総合的な監督指針等の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等について」
http://www.fsa.go.jp/news/20/hoken/20090428-2.html
金融庁 報道発表資料 2009.4.28)
項目毎のコメントの数は以下のとおりです。
 1-1 保険法関係(告知制度) …21
 1-2 保険法関係(保険給付の履行期) …4
 1-3 保険法関係(重大事由解除) …7
 1-4 保険法関係(他人の生命に関する保険契約) …13
 1-5 保険法関係(態勢整備、危険の増加、約款の審査基準) …7
 1-6 保険契約の引受け …6
 1-7 損害査定、支払管理態勢 …8
 2 保険会社の業務継続体制の構築 …7
 3 四半期開示等における開示の充実 …2
 4 保険会社の業務範囲の明確化 …2
 5-1 その他(募集人の資質向上、募集人試験) …7
 5-2 その他(募集時における契約関係書類・商品の簡素化) …8
 5-3 その他 …8
この中で気になったいくつかを見ていこうと思います。
 
No.9の金融庁の考え方です。

告知書の様式は、必ずしも独立した書面とする必要はなく、保険契約申込書と一体となっているものなども認められると考えます。いずれにせよ、保険契約者等に求める告知事項は、当該事項が告知であることに加え、告知すべき具体的内容を明確に保険契約者等が理解して告知できるものなっていること、更には、保険契約者等にとって告知書の様式が分かりやすく、必要事項を明確にしていることが必要です。

No.9はおそらく傷害保険を販売している損保会社からのものだと思います。監督指針内で告知書とあるのは、それが他の帳票と一体化したものであっても良いとされています。これは当たり前の話です。これ以上、契約時の必要書類が増えるのは勘弁してくれと思っているのは、保険会社だけではないでしょうから。
重要なことは、告知事項であることが分かるようになっていなければならないということです。今回の保険法対応で、申込書は間違いなく改定されることになろうかと思います。ここで気になるのは、インターネットで募集している商品で、保険料比較サイト経由で加入する場合です。この話はまた別途掘り下げて考えてみたいと思います。
 
No.14のコメントの概要です。

告知義務違反による解除の制裁的効果を緩和することが望ましいことから、いわゆるプロ・ラタ主義的な保険給付(あるいはそれに準ずる措置)を行うことを推奨すべき。

保険金請求時に告知義務違反が発覚した場合を想定したコメントかと思います。この場合、保険契約の解除ではなく、保険金の削減払を規定した約款も認めるべきということのようです。これに対しては、金融庁の見解は、保険会社がそういう約款を作るなら、それはそれで否定しないと読めます。
 
No.21のコメントの概要です。

保険媒介者の媒介による募集を行うことがない商品においては、「保険媒介者による告知妨害又は不告知教唆」を前提とした規定を約款に記載することは必ずしも要しないことを確認したい。

これはおそらく損保会社からのものだと思います。損保の代理店には、締結代理店と媒介代理店の2種類がありますが、媒介代理店が存在しない損保会社/媒介代理店では販売しない商品については監督指針にある規定を適用しないで良いか?ということのようです。これに対して、金融庁の回答は YES です。逆にいうと、No.13にもありますが、媒介代理店での販売があるなら、約款の告知義務の項に保険媒介者に関する規定をおく必要があるということになります。
 
No.28のコメントの概要です。

従来の約款にみられるような事故の通知義務違反を理由とする免責や損害の不実申告を理由とする免責については、解除事由が生じる前の事故についてまで保険者を免責することを認めるものであることから、保険法が片面的強行規定としている点に反するので、認可しないことを明記すべき。

このコメントと金融庁の見解により、事故の通知義務違反,損害の不実申告の場合に保険金を支払わないと規定する約款は認められないと明確にされました。ここは、調査による保険金支払までの日数の延長やプロ・ラタ方式での支払という約款の規定になろうかと思います。
 
No.46のコメントの概要です。

「被保険者による解除請求」に「適切に対応できる態勢」とは、必ずしもシステム対応までを求めるものではなく、社内規則やマニュアルなどによる対応も含まれることを確認したい。

例えば、家族傷害保険契約において配偶者から「自分だけをこの保険の被保険者から外してもらいたい」と請求があった場合などに備えたシステム対応をしなければならないか?という質問と思います。確かにシステム対応は大変そうですが、この実運用を社内規則やマニュアルだけでやるのも現実的ではないような気がします。金融庁の見解は、きちんとやるならシステム対応しなくてもよいと読めますが、実際にどのように実効性を確保するのかは当然に確認するでしょう。
 
No.59のコメントの概要と金融庁の考え方です。

約款には詳細に規定されていないことを社内規定等で定めていることがあるが、約款の解釈で消費者とトラブルになった場合、よく社内規定で決められていると回答するのを聞く。社内規定、運用の開示を求められれば、開示する義務を課して欲しい。
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仮に、保険会社が、約款の解釈の根拠を社内規定から引用していると保険契約者等に説明するのであれば、保険契約者等の請求に応じて、当該社内規定の内容を開示することが望ましいと考えられます。

そのまんまです。つまり、「社内規定で定められているから、それはできない」と保険者(代理店を含む)が言ってしまったら、「じゃ、その社内規定を見せて、説明しろ」という請求に応えなければならない日がやってくるかもしれません。何故、社内規定がそう定めているのかということについて、保険者(代理店を含む)は説明できるように理解しておく必要がありますし、規定を定めた者(部署)はその理由を周知させる必要があります。