かんぽ生命の計算誤り対応

株式会社かんぽ生命保険が、当時の日本郵政公社時の簡易生命保険でプログラムのバグにより金額が誤っていた契約についての対応を開始した旨のニュースリリースを出しました。
「契約者配当金の誤計算等に関するお客さま対応の開始について」
http://www.jp-life.japanpost.jp/aboutus/press/2009/abt_prs_id000156.html
(株式会社かんぽ生命保険 プレスリリース 2009.7.31)
プログラムのバグにより影響を受けた現象は2パターンあり、それぞれに対して別個の対応を行うとのことです。

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(2)源泉徴収額等の誤り
定期年金保険、終身年金保険等について、毎年1回お客さまに送付する「支払年金額等のお知らせ」における必要経費金額を端数処理のプログラム誤りにより1%分少なく算出していました。支払年金額から必要経費金額を差し引いた金額が25万円以上になると源泉徴収税を徴収しますが、これに該当し過徴収となったご契約が4,317件あります。
なお、「支払年金額等のお知らせ」の必要経費金額を誤って通知したため、誤った必要経費金額を通知した年にお客さまが確定申告を行っておられる場合、税務署に対して過納税になっている可能性があります。

↑の現象に対して、契約者対応を↓のとおり行うこととしています。

(2)源泉徴収額等の誤り
ご迷惑をおかけしましたお客さまには、平成21年8月以降、順次、当社からおわび状と手続き案内を郵送させていただきます。
 
源泉徴収税の過徴収となったご契約>
源泉徴収税過徴収相当金額及び遅延利息相当額を弁償金としてお支払いします。

<「支払年金額等のお知らせ」の必要経費金額を誤って通知したご契約>
お客さまが当該通知書に基づく確定申告を行っておられる場合、お客さまの過去に遡る手続き負担の軽減のため、確定申告をした年とそれが確認できる書類をご提示いただくことで、当社が過納税金額相当額及び遅延利息相当額を弁償金としてお支払いします。

単純な憶測ですが、四捨五入すべきところを切り捨てで計算したような感じがします。COBOLでは、四捨五入の指定を明示しなければ、切り捨てる仕様になっていますから。
 
この問題のいやらしい所は、自社だけで責任を取れないところです。年金が課税対象になっているが故に、その税額に影響が出て、その分だけ契約者が損/得をしている可能性があるという部分について対処しなければなりません。
まずは、年間の利得部分が25万円以上の場合は 10%の源泉徴収があるので、そこの部分につき契約者が損をしていた場合は利息を付けて返金しますというのが1つ目の対応です。
そして、年金の利得部分は雑所得として、その他の所得と合わせて総合課税の対象になりますから、雑所得の違いにより税率が変わるケースでは相当な金額の損/得が発生し得ます。これについての対処が、2つ目の対応です。
いずれも、対契約者としてはリリース資料に記載のとおりのことを行い、その裏で個別に税務署と調整をしているのかもしれません。
 
難しいのは、2つ目の対応の方です。こちらは、かんぽ生命側では契約者にいくらの損/得が出ているのか全く掴むことができません。
実際の作業は、年度を遡って確定申告のやり直しということになろうかと思われます。そして、本来の税額との差があることが判明した場合に、その差額分について税務署ではなくかんぽ生命が利息を付けて補填するとのことです。
必要経費を誤って通知した対象契約は、87,957件もあります。このうち、どのくらいの人がきちんと確定申告したのか分かりませんが、もしもこの半分にあたる人々が税金の過払いをしていないか確認したいと申し出たら大変なことになりそうです。
勿論、そこまで見込んだ上で、このリリース資料や契約者向け案内の作成をしているのでしょう。ただ、ここでの対応を誤ると二次トラブルとなりかねません。
 
かんぽ生命が出した対応は至極真っ当なものだと思います。
後は、現場の能力次第ですが、そこが不安なところです。
 

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(1)契約者配当金の誤計算による支払年金額の誤り
契約者配当金を基本年金額に積み増して支払う終身年金保険等のご契約のうち、契約の種類変更や年金額の減額などの契約変更を行った場合など、一部のご契約で配当金計算を誤ったことにより、支払年金額を誤ったものです。

↑の現象に対して、契約者対応を↓のとおり行うこととしています。

(1)契約者配当金の誤計算による支払年金額の誤り
ご迷惑をおかけしましたお客さまには、平成21年8月以降、順次、当社から個別におわびと正当な年金額のご案内をさせていただきます。
その上で、年金額につきましては、正しく訂正させていただきます。
なお、不足払いとなっているご契約につきましては、正しい金額との差額に遅延利息を付してお支払をさせていただきます。

こちらは、年金額そのものを誤ってしまったというものです。
その場合、対応すべきこととして以下の2つがあると思います。
・支払った年金について、正誤の差額の清算をすること
源泉徴収または総合課税として支払った税金分について、正誤の差額の清算をすること
↑のかんぽ生命の対応を見ると、1つ目の方しか書かれていません。
(2)の方では厳密な対応を行うのに比べて、随分とこちらは検討のレベルが低いようです。
私程度の損保屋が気付くのですから、かんぽ生命も当然にこの問題に気づいているでしょう。
何故、その解決に向けた対応をしないのか疑問です。