自動車保険の年間走行距離と告知義務

自動車保険のリスク細分項目は、保険業法施行規則第12条(保険料及び責任準備金の算出方法書の審査基準)第3項にて、以下の9項目と定められています。

(1) 年齢
(2) 性別
(3) 運転歴
(4) 営業用、自家用その他自動車の使用目的
(5) 年間走行距離その他自動車の使用状況
(6) 地域
(7) 自動車の種別
(8) 自動車の安全装置の有無
(9) 自動車の所有台数

このうち、任意の項目を保険料算出の区分として使って良いこととなっています。
保険料算出の区分として使うということは、当然に告知事項ということになってきます。
 
いくつかの損保の自動車保険では、「年間走行距離」を保険料算出の区分として使用しています。
ちょっとややこしいのですが、契約申込書に「年間走行距離」があっても、保険料算出の区分の項目でなければ告知事項ではなく単なるアンケート項目です。損害保険料率算出機構で統計をとっている項目なので、保険料とは無関係にアンケート項目として入力させている損保も少なくありません。
 
告知事項ということは、契約時に悪意または重過失によって事実と異なることを申告した場合は、告知義務違反による契約解除、そして保険事故の免責の可能性があります。
ここでいう「年間走行距離」は過去1年間のものではなく、これからする保険契約の保険期間1年間のものです。これを正しく申告するのは、長年ドライバーをやっている人ならともかく、そうでない人にはなかなか難しいのではないかと思います。(実は私も失敗したことがあります。)
告知義務違反を問うには、悪意または重過失が必要なためなかなか難しいと思いますが、それでなくともトラブルが頻発するであろうことは容易に想像できます。
そのような項目を保険料算出の区分として利用するのには、相当の工夫が要ると思いますし、そのつもりがないなら利用を止めるのが賢明だと思います。
 
その相当の工夫をして、「年間走行距離」を保険料算出の区分として利用している損保もあります。
1つは、ソニー損害保険株式会社の総合自動車保険 Type S です。申告時の手順をルール化することと「こえても安心サービス」でトラブルの芽を摘んでいます。
もう1つは、あいおい損害保険株式会社の実走行距離連動型自動車保険『PAYD』です。名前のとおり、実際に走った距離分を毎月確定精算するタイプの自動車保険です。
その実際に走った距離分というのも、本人が申告するというあいまいなものではなく、車載端末から情報を取得することになっています。良くも悪くもトヨタとがっちり組んでいるあいおい損保らしい保険です。
いずれも実施するにはかなりの手間がかかりそうです。やはり止めた方が無難のような気がします。