保険の基本問題に関するWG(6/19)議事録

6月19日に開催された金融分科会第二部会 保険の基本問題に関するワーキング・グループの議事録が、9月1日に公開されました。
「保険の基本問題に関するワーキング・グループ(第54回)議事録」
http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/dai2/gijiroku/20090619-2.html
金融庁 審議会・研究会等 > 金融審議会 > 議事録・資料等 2009.9.1)
やはり、6月20日「保険の基本問題に関するWG(6/19)資料」で書いたとおり、今回の内容は「中間論点整理」のとりまとめでした。
議事録前半部分は単なる読み上げなので飛ばして、後半部分の興味深い意見を見ていきます。
 
日本労働組合総連合会総合政策局長の小島 茂 委員から、要約すると次の3点が意見として述べられていました。

  • 募集時の重要事項の整理(現状は多過ぎ・複雑過ぎではないか?)
  • 適合性の原則に従った意向確認書面の取り付けの商品毎の必要性
  • 募集人の資質向上に向けた試験制度などの取り組みの検討

1つ目は、重要事項説明書(契約概要・注意喚起情報)の契約概要やそれ以外の重要項目をひっくるめて、重要事項が何かということが分かりにくいから整理すべきということのようです。確かに、保険会社の資料は、何か問題がある都度、膨らむ一方で、真に重要なことが埋もれているのは事実だと思います。真に重要な事項が何であるのか分かるようになっていなければならないという指摘はそのとおりです。
尤も、これは訊いていない/書かれていないから保険会社が悪いと主張する一部の契約者にも責任があると思います。某国では、電子レンジに猫を入れてはいけないと書かれていないから、猫を入れたら死んだのはメーカーに責任があると言い張った人がいるらしいのですが、それと同じような状況になりつつあるように感じられます。
2つ目は、商品によって意向確認の取り付けのレベルは異なってしかるべきという意見です。これもそのとおりだと思います。
保険と一口に言っても、変額保険のような金融類似商品から自動車保険のような義務に近い保険まで様々です。それを全部同じレベルで意向確認を行うというのは、どう考えてもおかしいです。
3つ目の募集人の資質向上は、これからの課題だと思います。国家試験がどうのという話が出ていますが、保険商品の知識面に関しては各社商品がバラバラですからそれだけではうまくいかないだろうと思っています。かと言って、自社商品しか知らない募集人というのもそれはそれで問題がありますけど。
 
慶應義塾大学経済学部教授の吉野 直行 委員と明治安田生命保険相互会社企画部調査グループ課長の隈部 朗 委員とのやりとりで、アクチュアリーを含めた商品開発部門は当然に保険商品を開発する際に数理的な意味合いを約款や引受基準、そして保険料や解約返れい金に込めますが、それが募集の現場まで伝わっているのかという点について触れられています。
ライフネット生命保険株式会社が付加保険料の公開をしていますが、基本的に生命保険は保険料の根本的な仕組みについて契約者どころか募集人にすら知らせていないと思います。
各年の金利計算と死亡率/生存率を乗算・加算することで純保険料が得られるはずで、ここまでは高校の数列に関する知識があれば誰でも理解できると思うのですが、それすら説明していません。寧ろ、生保レディを主とした募集人の学力が低いために契約者に説明させるのを避けているのではないかという印象を受けます。
そもそも、社員にすらきちんと教育していないようです。朝日新聞に生命保険の記事を寄稿している後田亨氏(日本生命に勤務していた)の記事を見る限りでは、生保レディだけでなく営業社員も保険数理について教育を受けていないように見受けられます。
 
埼玉大学経済学部非常勤講師・金融オンブズネット代表の原 早苗 委員と(社)全国消費生活相談員協会常任理事の丹野 美絵子 委員が広告について述べています。特に、テレビ広告についての扱いがポイントになっていますが、議論されていた時から状況は変わりました。
この点については、WG の対処が遅すぎるのか、そもそも保険の基本問題ではないのかについても考慮すべきだったと思います。
 
同志社大学法研究科教授の木下 孝治 委員が述べている保険金支払に関する部分について、議論してきちんと整理すべきというのはそのとおりだと思います。

このペーパーだけを見ますと、支払い時の行為規制の問題がかなり抽象化されて、具体的なものが出てきていないかと思いますけれども、募集時の行為規制としても情報提供と適合性原則という原理原則については、かなり明らかになっていますけれども、支払い時の問題につきましても、例えばその保険金の請求をして、第一報をした後、正式な保険金支払い請求書を出す前に支払い拒絶の書類が届くとか、そういった弊害も幾つか相談に聞いたりするもんですから、やはりその支払いのプロセスといいますか、それを適正化するような何か原理原則というのを考えていただければ、あるいは考えてまいりたいというふうに思っております。

確かに保険契約において重要であるにもかかわらず、外部からの適切な評価がされてこなかったのも支払に関する部分です。
募集と同じように支払についてもガイドラインを定めて、広く周知することは必要なことだと思いますし、それができていない会社は公開されるのが業界や契約者にとって良いことだと思います。