現状の損保会社についての考察

日経ビジネスのオンライン記事に興味深い記事がありました。残念ながら、2ページ目の方が読むべき内容なのですが、そちらは会員限定です。その一部分を引用します。
「売れない、の正体は「価格不信」」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/person/20091007/206517/
日経ビジネス 企業・経営>遙 洋子の「男の勘違い、女のすれ違い」 2009.10.9)

安いから買うのではない。価格に納得と安心があるからそれを買うのだ。高いものを買わなくなったのではない。その価格への不信感が購買を慎重にさせる。
  (略)
景気が悪いのではない。価格設定そのものを疑う客の目が育ってきたのだ。その結果、従来の業者のやり方にノーを言う客が増えてきたのだ。
  (略)
客に気付かれない巧妙な箇所で、気づいた客だけが思う「そんなバカな」という価格設定。
  (略)
大型店舗並みの安さは提供できないが、ぼったくりもしない。それなら私は喜んで近所の業者にすべてを委ねただろう。あくまで私の場合だが、誰が好き好んでわざわざ港の遠い倉庫まで買いに出かけ、誰が忙しい中、家具を組み立てたいだろうか。
安さへの固執ではない。適正価格へのあくなき追求は、市場の姿をも変える。

これは家具を題材にしていますが、おそらく一般論としての価格に関する筆者の見方を記事にしたものと考えられます。
保険というものは一般よりも少々遅れているというのが私の見方ですが、そうだとすればいずれこの記事の内容は保険についても当てはまることになるのではなかろうかと見ています。ただ、その遅れに対して追いつくのは、少々どころかかなり先になるのではと思っていますが。
 
「安いけど粗雑なもの」も「必要以上に機能があって高いもの」も消費者に受け入れられないのは当たり前の話です。儲けを考えるメーカーはどちらかと言うと値段を上げるために必要とは言えない機能をつけて売る方向に走りがちです。
保険業界においても2年くらい前まではそれがやはり主流でした。今は逆にシンプルにするのが主流ですが、それは自主的に消費者の方を向いたからではなく、不祥事対策という面が本音の主な理由です。
従って、不祥事対策の熱が冷めた時にどうなるのかはまだ分かりませんし、消費者の方を向くとも限りません。
 
「客に気付かれない巧妙な箇所で、気づいた客だけが思う「そんなバカな」という価格設定」…これはまさに代理店系損保がやっていることです。不要かもしれない補償を外せないようにセットした商品を万人向けに売ることがそれに当たります。
本来、代理店系損保は、顧客と対面で向き合う代理店に商品を供給する立場なのですから、補償の脱着について自由度の高い商品を供給するべきで、それをどのようにカスタマイズすべきかは代理店に任せるべきと考えます。
しかし、現状はそうではありません。ガチガチの補償てんこ盛りで高額な商品をうまく顧客に売れと代理店に押しつけていると私は感じています。
そして、それに対して自由度の高い設計ができるのは、自動車保険について言えばダイレクト系損保の商品です。車両保険が外せるのは当たり前ですが、国内ダイレクト系損保は人身傷害や搭乗者傷害も外すことができるのが普通です。
でも、顧客のニーズの汲みとりやリスクを勘案した上での商品のカスタマイズは、どちらかと言えば代理店の方が向いていると思います。それができない代理店や適切な商品を供給できない損保会社は消費者にそっぽを向かれてしかるべきです。
 
この矛盾に代理店系損保が気付いて、それを是正する日が来るのでしょうか?
少なくとも、今の大手損保を見ている限りでは、メーカー主導が続きそうな気がします。
代理店が損保会社と距離をおき、製販分離が進まなければ難しいでしょう。代理店の収入が損保会社に代理店手数料の形で完全に握られているうちは、期待できそうにありません。
ただ、いずれ消費者がおかしいのではないか?と気づいたときには、業界全体が信頼を失うのではないかと危惧します。