保険料の仕組みを理解していない記事

モラルのない記事を堂々と掲載しているのを見て、これほど愕然としたことはありませんでした。自分さえ良ければ、詐欺まがいのことをしても構わないという内容の記事です。
「事故後の保険料率アップを阻止、リース会社活用で現状維持」
http://www.weekly-net.co.jp/logistics/post-4509.php
(物流ウィークリー 2009.10.15)

首都圏の事業者は、昨年12月に重大事故を発生させた。被害者への補償に損害保険を使ったが、その結果、保険料率の見直しが実施され、次年度に30%の料率アップが免れない状況となった。保有台数が100台を超える同社にとって、保険料の30%アップは甚大な影響だ。
そこで同社はリース会社を活用し、保険料率の据え置きを狙った。その結果、料率は事故を起こした後も、起こす前同様に最大の割引率の適用を受けられることになった。
昨年12月に発生させた事故は死亡事故が絡む重大なもので、損害賠償が多額になるため、当然、加入する損害保険を活用した。損保を使うと料率の見直しが行われ、翌年の保険料は割高となるのが通常で、同社も30%増の負担が免れない状況になっていた。
   (略)
同社の場合、4月が保険の更新月で、半年前に翌年の保険料率が決まるため、9月には保険料率が判明する。同社は昨年12月に事故を起こし、保険金の支払いが発生したため、料率アップは必至。9月に料率が決まるともはや逃げ道はない。
同社長は、8月中にリース会社に同社の全車両を引き取ってもらい、新たにリース会社とリース契約を結んだ。これにより、保険契約はリース会社と保険会社との間で交わされる。リース契約ではこれまでの料率が適用されるため、同社は最大の割引のままで契約。保険料のコスト負担を回避した。
   (略)
同社長は、「3年間このまま無事故を続ければ料率は元に戻る。その時、リース契約を解除し自社所有に切り替える」としている。

明らかなデメ逃れですが、この方法は確かに自動車保険の規定には反していません。当事者であるこの物流業者だけにとっては素晴らしい方法に思えます。
この方法による影響がこの契約者とその相手の保険会社だけにしか及ばないのであれば、問題視する必要はありません。
しかし、特に、自動車保険の保険料はそういう訳にはいきません。日本全国の自動車保険の契約者を1集団とし、領収した保険料のうちの純保険料と支払った保険金が等しくなるように料率が定められるようになっています。そして、フリート契約もノンフリート契約も一定のルールに従って、全契約者に対してその料率を適用して公正性を保っています。
保険金だけを受け取っておきながら、ルールの抜け道を利用して自分だけペナルティから逃れるということは、その分の保険金が料率のバランスを崩し、次の料率改定は上げの要素となり全契約者が負担することになります。つまり、一時の自分の利得のためだけに、多くの者に負担を強いるということになるのです。
1契約分だけなら微々たるものであっても、多くの人が同じことをやれば無視できない金額になります。インチキをしたものが得をし、真面目にルールどおりに従った者がその負担を負うということはあってはならないことです。
 
法律さえ守っていればモラルなんてどうでも良い!と主張する輩が稀にいますが、この契約者である物流業者やこの記事を書いた記者・そしてこの記事元の(株)物流産業新聞社はそういう類のモラルのない輩であると言えます。