損保における保険の原価

先ほど「ライフネット生命と付加保険料の開示」について書いたのですが、損保ではどうなのかについて書いておこうと思います。
損保において、保険の原価に相当するものは「予定損害率」です。これは、今では、純率により計算した純保険料を営業保険料で除したものということになります。
 
実際の損害率(保険金支払+支払備金)と予定損害率(保険金額×純率)の差は、それが+なら損保会社の丸儲けになりますし、−なら損になります。ただし、当然、料率の見直しをする際には、実際の損害率が純率となるようにするのが基本なので、頻繁に料率の見直しをしている種目に関しては、この差による損益はほとんどありません。逆に、料率の見直しを全然していない古い種目で現在販売しているものは、この差による益が大きいものもあると思われます。
余談ですが、自動車保険の人身傷害も実は儲けが大きいと言われています。人身傷害は損保料率機構の参考純率の対象外で各社マターです。そして、実際の損害率は予定していた損害率よりも低いようですが、料率の見直しがされていないようです。各損保が熱心に人身傷害を売る背景の1つには、このような理由があります。大手損保の一般向け自動車保険は人身傷害がもはや外せないようになっています。
 
今は違いますが、一昔前は保険料算出方法書に予定損害率が営業保険料に対するパーセンテージで記載されていました。つまり、営業保険料が分かれば、それに対していくらを保険金支払分(つまり、保険の原価)として見込んでいるのかは電卓で計算できました。実は開示はしていませんでしたが、主だった種目は各社同じパーセンテージだったので、業界内の人にとっては筒抜けだったのです。
なので、別に一生懸命隠すものでもなかったし、他社の値を知る必要もないものでした。これは料率自由化以前の話です。
 
現在、損保において、保険の原価とも言える予定損害率あるいは純率を開示している会社があるか?そういう動きがあるか?というと、全くないということになろうかと思います。
実際のところ予定損害率の開示は、私は契約者にとってあまり意味がないのではないと思っています。損保は1年契約が主体なので、複雑な利息計算の影響を受けませんし、実際の損害率を見た方がはるかに分かり易く意味があります。つまり、実際の損害率が保険の原価とみなせるのです。
そして、実際の損害率は、日本社ならどの損保もディスクロージャー資料でおおまかなくくりですが既に公開されています。それを見れば、自動車保険の損害率,火災保険の損害率などは簡単に分かります。
ただ、ディスクロージャー資料にこのような情報があるということがほとんど知られていないという問題はあります。でも、知りたい人だけが活用すれば良いと、私は思ってますが。