アメリカンホーム自動車保険の衝突被害軽減ブレーキ装置割引の失敗と顛末

10月13日に書いた「アメリカンホーム自動車保険の衝突被害軽減ブレーキ装置割引の勇み足」に関して、日経ビジネス(2013.10.14 第1711号)でも『時事深層 安全カーが衝突した保険の壁』で取り上げられていました。
そこには当事者であるアメリカンホーム保険会社に取材しなければ分からないことが書かれており、私の推測は概ね合っていたけど一部外れていました。
そこで、記事の解説を兼ねて思うところを書いてみようかと思います。
私の推測で外れた部分は「(付加保険料の整理でOKと勘違いした?)」です。ここは記事には以下のように書かれています。

同社は、各保険会社の裁量によって料率を変更できる範囲料率という仕組みを使って割引しようと考えていた。だが、金融庁は「安全装置は事故低減効果を検証して、料率に反映すべきというのが法律の趣旨」(保険課)と、範囲料率の適用領域外であるという判断を示した。

これは、保険業法施行規則第12条(保険料及び責任準備金の算出方法書の審査基準)第3項に次のとおり規定されていることに関する内容です。

自動車の運行に係る保険(自動車損害賠償保障法 (昭和三十年法律第九十七号)第五条 (責任保険又は責任共済の契約の締結強制)の自動車損害賠償責任保険を除く。)の引受けを行う場合においては、次に掲げるすべての要件を満たすものであること。
イ 純保険料率の算出につき危険要因を用いる場合には、次に掲げるいずれかの危険要因により、又はそれらの危険要因の併用によること。
(1) 年齢
(2) 性別
(3) 運転歴
(4) 営業用、自家用その他自動車の使用目的
(5) 年間走行距離その他自動車の使用状況
(6) 地域
(7) 自動車の種別
(8) 自動車の安全装置の有無
(9) 自動車の所有台数
ロ イに規定する危険要因による純保険料率の格差が統計及び保険数理に基づき定められていること。
ハ イに規定する年齢、性別及び地域に係る純保険料率が、別表の上欄に掲げる区分に応じ、同表の下欄に掲げる要件を満たすものであること。
ニ 法第四条第二項第四号 に規定する書類に、免許に係る保険料を中心とした一定範囲内で保険料を修正することを記載する場合には、その範囲が免許に係る保険料に対し、千分の百二十五を乗じたものを加えたもの又は減じたものを、それぞれ上限又は下限とするものであること。

この「ニ」の12.5%で調整できることを範囲料率と記事では書いています。
この範囲料率というのは、好き勝手に保険料を12.5%の範囲で上げ下げして良いということではなく、リスク区分の中で使うべきであり、安全装置についてはリスク区分として設けた上で純率の認可を取得すべきというのが金融庁の見解です。
ちなみに、12.5%の範囲での調整に関しては、金融庁の認可不要で適用できます。
だから、アメリカンホームは認可不要と思って割引をしたけど、結局認可が必要と金融庁に言われて撤回することになったのでしょう。