損保ジャパンと日本興亜損保の経営統合(其の弐)

10月30日に株式会社損害保険ジャパン日本興亜損害保険株式会社が予定どおり統合に関する事業計画等の公表を行いました。
この両社の統合関連については、7月29日に「損保ジャパンと日本興亜損保の経営統合」で取り上げてから約3か月ぶりです。ただし、日本興亜損保側のみで、いろいろ噴出している問題については何度か取り上げています。
「株式移転計画書の作成および事業計画の策定について」
http://www.sompo-japan.co.jp/news/download/20091030_4.pdf
(株式会社損害保険ジャパン ニュースリリース・トピックス 2009.10.30)
http://www.nipponkoa.co.jp/news/whatsnew/2009/news2009_10_30_jigyoukeikaku.pdf
日本興亜損害保険株式会社 ニュースリリース 2009.10.30)
このリリース資料である PDFファイルは前日(29日)に損保ジャパンで PDF化したものを日本興亜損保に送り、両社が同じものをサイトにて公開したようです。このことから、トップだけでなく統合事務も損保ジャパン主導で進められていると推測されます。
 
内容については、当初の計画からの大きな変更点は見当たりません。
いろいろごたごたはありましたが、株式移転比率は 1(損保ジャパン):0.9(日本興亜損保)であり、この点に関しても7月の時のとおりです。
取締役・監査役の構成についても7月の契約書どおりです。なお、今回の資料では具体的に誰が就くのか記載されています。
国内損保事業におけるシナジー効果については、7月のものと異なる金額になっています。算定年度を2012年度から2014年度に変更している点もありますが、それだけではありません。
  商品・事務・システムの共通化によるコスト削減効果:約340億円 ← 約125億円
  インフラの共同利用・共同発注等によるコスト削減効果:約30億円 ← 約50億円
  ノウハウの共有・高度化による収益向上効果:約130億円 ← 約105億円
そして、『統合後5年程度は一時的なコスト(累計約600億円)を別途見込んでいます。』とのことです。正直なところ、合併ではなく両社存続でこれほどのコスト削減ができるとは到底思えません。
 
NKSJホールディングス配下となる保険会社を見ると、損保ジャパンが出資しているセゾン自動車火災保険株式会社日本興亜損保の子会社であるそんぽ24損害保険株式会社は現行どおりであり、両社ともNKSJホールディングスの直下に直接ぶら下がるわけではないようです。この両社はNKSJホールディングスの"国内損害保険事業"の定義からも外されていて、"金融サービス事業等"の定義に含まれています。尤も、これは数字をよく見せるための方便かもしれません。
一方で、両社の生保子会社である損保ジャパンひまわり生命保険株式会社日本興亜生命保険株式会社は統合後2年以内に合併予定となっています。損保ジャパンDIY生命保険株式会社はそのまま存続ですが、販売チャネルや商品性からして前記の2社と合併するメリットはないからだと思います。
 
12月に行われる臨時株主総会に先んじて、10月23日の「日本興亜損保の保険金支払遅延(其の弐)」で触れた「日本興亜損保の真の発展を願う株主有志」と自ら名乗る4人組(北澤 新,松澤 建,小松 敏行,下井 健守)の株主提案に対する考えを以下のとおり公表しました。
「株主提案に対する当社の考え方について」
http://www.nipponkoa.co.jp/news/whatsnew/2009/news2009_10_30_kabunushiteian.pdf
日本興亜損害保険株式会社 ニュースリリース 2009.10.30)

当社は、平成21年10月23日付でお知らせいたしましたとおり、当社株主6名の共同により、平成21年12月開催予定の当社臨時株主総会における株主提案権の行使を受けておりますが、平成21年10月30日開催の取締役会において、この株主提案の内容に反対することを決定いたしましたのでお知らせいたします。

この株主提案は、松澤氏らの兵頭氏に対する個人的な難癖である性質が高いものであり、明らかに誤った経営をしたという判断もできないことから、日本興亜損保としては反対するのが妥当だと思います。
しかし、これが火種となって12月の臨時株主総会も6月の時のように品性のない松澤氏との見苦しい言い争いとなる可能性は非常に高いです。論理構成がきちっと組みたてられた主張であれば傾聴するに値しますが、そうではない嫌がらせなら邪魔なので引っ込んでいて欲しいものです。