代理店系損保のネット手続きの疑問

先日、読売新聞に株式会社損害保険ジャパンが携帯で自動車保険の更改契約の手続きができるという記事がありました。
モバイルでは代理店系損保の中では損保ジャパンが初めてかもしれませんが、PCでは他の代理店系損保も既にやっていることかと思います。
「携帯で自動車保険を更新…損保ジャパン」
http://www.yomiuri.co.jp/net/news/20100215-OYT8T00354.htm
YOMIURI ONLINE 2010.2.14)

郵送で送られた更新通知に記された「QRコード」を携帯電話で読み取るなど、簡単な操作で更新手続きを完了できるという。
携帯電話での契約更新を行うのは、大手損保では初めて。損保業界は、インターネット経由で契約を結ぶことができるダイレクト系損保が、割安な保険料と、契約手続きの手軽さなどを武器に販売を伸ばしている。これに対抗し、契約者がダイレクト系損保に契約を乗り換えることを防ぐ。手続きの簡素化が、保険料の値下がりにつながる可能性もある。今後も、新規契約については商品の丁寧な説明が必要だとして、対面販売とする。

この記事を読んでいくつか疑問があります。
 
まず第一は、この更改契約の扱者は誰になるのだろうか?ということです。
代理店系損保の代理店は大抵、告知受領権および契約締結権を持っています。だから、契約手続きを代理店が行うときは、代理店が責任を持って告知の受領をし、契約の締結をします。
しかし、この記事を見る限りでは代理店はノータッチのように思えます。
もし、告知義務違反などがあっても代理店にかぶせるわけにはいかなくなります。保険の説明についても同様です。なお、更改の場合は、新規のときと同じ手順が必要ですから、簡素化を図っても告知や重要事項説明をなくすことはできません。
ちなみに、ダイレクト系損保は、代理店があっても告知受領権も契約締結権もない媒介代理店なので、告知の受領も契約の締結も保険会社が行うため、契約者と保険会社の2者間の問題にしかなりません。
 
それでも、扱者は恐らく代理店になるだろうと思います。
もしも、ここで損保ジャパンの直扱になるとしたら、代理店手数料が代理店に全く入らなくなるので、物凄い大問題になるからです。
すると、募集行為を何らしていないのに、代理店手数料を保険会社が支払うのは妥当なことなのか?という疑問が生じます。
これは、保険期間中の保全業務を代理店が負うから、その手数料として支払うという理屈はあるかもしれません。
しかし、保険会社が代理店に代わって告知の受領および契約の締結をするのは、業務の代行にあたるのではないか?という問いに対しては回答はできるのでしょうか?
 
まったく別の方面からの疑問なのですが、そもそも当初体面販売した契約者に対して、モバイルでの契約手続きというのは馴染むのか?という疑問もあります。
最初の契約時から、ネットで行った契約者であれば、ある程度のITリテラシーがあり、ネット契約について理解があることが推測されます。そもそもネットを利用する層には、そのような特性があると思っています。
しかし、対面で契約した人は、代理店が説明することを受け身で聞く特性が強いのではないかと思います。
「簡単な操作で更新手続き」をそのような層にさせて本当に大丈夫なのか?契約条件や免許証の色は改めてきちんと確認しなくてもよいのか?という不安があります。