医療保険の広告規制見直し

2012年4月21日号の週刊ダイヤモンドの記事に医療保険の募集文書についての記事があります。募集文書に関する部分だけなら、ダイヤモンドオンラインにもほぼ同じことが書かれています。
金融庁も怒り心頭!ごまかしだらけの保険販売」
http://diamond.jp/articles/-/17170
(DIAMOND online 経済・時事 > 今週の週刊ダイヤモンド ここが見どころ 2012.4.16)

昨年10月末に開かれた衆議院財務金融委員会。質問に立った自民党あべ俊子議員は、中塚一宏金融担当副大臣を問いただした。医療保険の募集広告があまりに誇大で、消費者の誤解を招いているのではないかとの趣旨だった。
それから2ヵ月後、金融庁が動く。生命保険各社に対し、保険募集のパンフレットや広告の一斉検証を指示、今年2月までに報告するよう求めたのだ。さらには、報告に偽りがないか、金融庁自身がチェックする旨も通告。保険各社は震え上がった。
金融庁がかくも強硬な姿勢を打ち出すのには理由がある。実は募集文書をめぐっては、以前から誇大にならないよう指導がなされ、2006年には厚生労働省保険局長名で保険会社に要請までした経緯があるからだ。
にもかかわらず、金融庁などの元には、苦情が相変わらず寄せられている。そうした折に政治家からの質問を浴び、金融庁も腰を上げたというわけだ。
しかし、保険会社にとってはたまったものではない。というのも、大手ともなれば募集文書は数万件に上る。それを1件1件、しらみつぶしに点検し、問題があれば解消しなくてはならないからだ。

例によってマスコミのやることなので週刊誌が売れるのに都合の良いことを誇張して書いているきらいがあるのですが、概ね事実です。寧ろあまり表沙汰になっていないことなので、記者がどこでこんなことを聞きつけたのかが気になります。
私からは生保業界については正確なことは分からず、また記事は生保会社だけが対象であるかのように書かれていますが、損保業界も同じことが起こっていたことを知っているので事実だろうと分かるわけですが。
ただし、生保会社も損保会社も募集文書に不正確なことを書いていたのではありませんし、故意に誤解を生じさせようとしていたわけでもありません。
恐らくどこの保険会社も募集文書に関してはリーガルチェックを踏まえた社内規定で何がOKで何がNGなのかはっきりさせたチェックリストを作った上で、募集文書を作成の都度、作成部署および審査部署で確認して承認されたものだけが使われているはずです。
では、今更一斉検証をしなければならないことになったのか?というと、リーガルチェックでOKとされていた記載について、消費者の誤解を招く恐れがあるのでNGであると覆ったからです。だから、既にチェック済みでOKとされたものまで、改めて確認する必要が生じたのです。
 
この点に関しては、いずれ金融庁所管の「保険会社向けの総合的な監督指針」の「II-3-11 適切な表示の確保」の項に記載がされるのではないかと思います。
 
ついでなので、本件の発端となった第179回国会 衆議院 財務金融委員会 2号 平成23年10月26日でのあべ俊子議員と金融庁副大臣中塚一宏議員のやり取りを載せておきます。

●あべ委員 時間がもうございませんが、最後に、医療保険に関して金融庁にお尋ねしたいというふうに思います。大臣は結構でございます。このお話に関しましては、自見大臣のお話は何度も聞かせていただきましたので、きょうは、金融の副大臣にお尋ねしたいと思います。金融庁医療保険に関して、どういう見地から監督をしていますか。
●中塚副大臣 医療保険もそうですが、民間の保険会社が販売する保険ということについてですけれども、診療費の自己負担分や差額ベッド料等を保障する保険商品で、公的医療保険を補完し、一定の保険契約等のニーズと利便にかなうものであるというものについて、保険契約の内容が保険契約者等の保護に欠けるおそれがないか、保険料や責任準備金の算出方法が保険数理に基づき合理的かつ妥当なものとなっているかなどの観点から、商品の適正性について審査、認可を行っております。
●あべ委員 では、副大臣、保険に対する広告規制をどうやっているのか。誇大広告がないかどうかをどのように見ているのかを教えてください。
●中塚副大臣 保険会社は、顧客の知識、経験、財産の状況及び取引を行う目的を踏まえた重要な事項の顧客への説明、その他の健全かつ適切な業務の運営を確保するための措置を講ずることが求められております。このため、保険会社は、顧客のニーズに合致した保険募集をするため、必要に応じ、バイヤーズガイド等の資料を用いて公的医療保険制度の説明を行う体制を整備しているということであります。金融庁としては、引き続き、保険会社に対して、顧客のニーズに合致した保険契約が締結できるように、顧客への積極的な情報提供を促してまいりたい、そのように考えております。
●あべ委員 顧客のニーズと、さらには顧客が実際使うことができるサービスというのは、非常に乖離があります。副大臣、特にこのことに関しまして、広告規制を強化すべきではないかと私は思いますが、いかがでしょうか。
●中塚副大臣 民間保険会社が医療保険などの募集広告において公的医療保険に言及する場合には、その保障範囲について、消費者の誤解を招かないように配慮をしていただかなければなりません。この点に関しては、平成十八年に厚生労働省から保険業界に対して要請が行われているところでもございます。これも踏まえて、各保険会社において社内周知徹底が行われているものと承知をしておりますが、当庁としても、募集等において、民間の医療保険及び公的医療保険の保障内容等について、消費者の誤解を招く表示が行われていないかを引き続き注視してまいりたい、そのように考えております。
●あべ委員 これは、各家庭、かなりの金額を割いているものでありますし、実際、社会保障の補完システムになっていない部分がある。このことを考えましたときに、私は、さらに質問させていただきたいと思いますが、時間になりましたので、終わります。ありがとうございました。