ちょっと異色なau損保

2011年5月25日にあいおいニッセイ同和損害保険株式会社KDDI株式会社の合弁によるau損害保険株式会社が開業しました。
本当は、今回のタイトルは「au損保開業」にしようかと思ったのですが、今更開業という言葉を使うのもおかしいのでこういうタイトルにしました。
 
au損保は明らかにダイレクト系損保に位置付けられますが、ちょっと異色な存在です。
そう捉えているのは、傷害保険だけをケータイで販売しているからです。これは中々バランスが難しいのではないかと思ってます。
 
au損保が取り扱っている商品は、平たく言えば『傷害保険』です。
以前に「ネット販売に向く保険とは(其の参)」(2009.1.25)で書いたとおり、傷害保険自体はネットで販売するのに向いている保険だと思います。この日記を書いた後のことですが、東京海上日動火災保険株式会社が「ドコモ ワンタイム保険」を販売したことからも、そのことは言えると思います。
しかし、傷害保険だけをネットで販売するのはどうなのか?というと、違った面から課題が出てくると思ってます。
 
ネットで保険を販売して保険会社として安定して運営するには、比較的単純な商品を大量に販売して一定規模の収入保険料が必要です。傷害保険は比較的単純な商品なので、この点については問題ありません。
ケータイでの販売においてはPCのように保険料を比較して検討するということはあまりないこと、KDDIルートでの加入であれば広告費を一般的な広告費よりも安く抑えることができるだろうと思われること、ネットで傷害保険を販売している競合他社が少ないことから、現在のダイレクト系損保の自動車保険で行われているような価格競争は少なくとも今はないでしょう。
しかし、ケータイで実際に売れる価格設定…保険料にすると、普通の保険業界での感覚からすると安すぎる金額になりそうな気がします。
とすると、一定規模の収入保険料を得るためには、相当数の契約件数を集めなければなりません。
また、自動車保険と違って保険に入りたいと思うニーズは傷害保険ではそれほど強くありません。今は自転車事故による賠償がクローズアップされていますが、それがずっと世間の関心が高いまま続く保証はどこにもありません。契約件数を集めることに関しては、競合他社が少ない点はプラス要因ですが、このことはマイナス要因として働くわけです。
つまり、保険会社の事業の採算性を鑑みるとどうなのだろうか?と疑問に思うわけです。
勿論、そんなことは承知の上で事業計画を立て、いずれ黒字化して事業を継続できる見通しがあるからこそ保険会社を設立したのでしょうが。しかし、あいおいニッセイ同和が合弁で作ったアドリック損保は5年経たないうちに廃業したことからすると、au損保もあまり安心して見てもいられないなと思ってます。