弁護士費用保険の状況

本日のサンケイビズ(SankeiBiz)に興味深い記事がありました。
弁護士費用保険の利用率が低いというものです。具体的な数字が出ているので、その数字を使いながら検証してみたいと思います。
 
「裁判沙汰はちょっと… 「弁護士費用保険」利用者わずか0.05%」
http://www.sankeibiz.jp/econome/news/120601/ecc1206010616000-n1.htm
SankeiBiz 2012.6.1)

交通事故の被害に遭った際などに弁護士費用を保険金で賄える「弁護士費用保険」の加入者が、年々増え続けている。自動車保険などの特約として販売されており、平成22年度の契約件数は1400万件を超え、全国の総世帯数の3割近くを占めるまでに普及した。一方で、利用件数は年間1万件未満と低調。
(中略)
弁護士費用保険は年額2千円前後の保険料で、相談費用や示談交渉、訴訟などの弁護士費用が300万円を上限に保険金から支払われるタイプが一般的。

 
まず気になったのは、利用者が0.05%という数字です。これが本当に低いものかどうかは、この数字単独で見ても評価できません。。
弁護士費用保険を利用するということは、法律上の賠償責任が発生することが前提になるので、自動車保険の対人賠償保険・対物賠償保険と比較してみることにします。
損害保険料率算出機構の「自動車保険の概況 平成23年度(平成22年度データ)」を見ると、以下のとおりでした。
 対人賠償 契約台数:62,112,774台,支払件数:481,449件
 対物賠償 契約台数:61,905,304台,支払件数:2,778,300件
支払件数/契約台数を計算してみると、対人賠償:0.78%,対物賠償:4.49%となり、合計で5.26%になります。
勿論、弁護士費用保険は法律上の賠償責任が発生すればすぐに使う類のものではなく、特に自動車保険では自分にも過失があれば保険会社が示談代行をするので利用機会がなく、この5.26%が本来の利用率になることはありません。
それでも、2桁少ないというのは、確かに少なすぎると評価できるレベルと言えるでしょう。
 
利用率がかなり低いということは、損害率もかなり低いのではないだろうか?という疑問がでてきます。
これは保険料にも依存します。保険料が極端に低ければ、利用率が低くても損害率は高くなりますから。
記事に保険料が2,000円前後とあるので、これを使ってちょっと計算してみました。
物凄いざっくりの式ですが…
損害率=総支払保険金/総収入保険料
   =(平均支払保険金×事故件数)/(保険料×契約件数)
   =(平均支払保険金×契約件数×事故頻度)/(保険料×契約件数)
   =(平均支払保険金×事故頻度)/(保険料)
   =100万円(※)×0.05%/2000円
   =25%
(※.保険金額が300万円なので平均支払保険金を100万円と仮置き)
本当に?と思える低い損害率が出てきました。
もしもこの数字が実態に近いものならば、弁護士費用保険は保険会社にとってドル箱と言えます。