弁護士費用保険の状況に対する策

昨日のブログ「弁護士費用保険の状況」の続きです。
昨日は弁護士費用保険の利用率が低いことの検証と損害率が低いことの推測について書きました。
今日は、損害率が低いことが事実であると仮定して、話を進めることにします。
 
おそらく自動車保険の特約の損害率は、50〜70%程度が予定されていると思います。これは各社マターですが付加保険料率をどのくらいにするよう定めるかに依存します。仮に営業保険料の30%を付加保険料とすると定めるなら、営業保険料に占める純保険料は70%になりますから、損害率も70%程度になるのが適正です。
もしも損害率25%程度が恒常的なものだとしたら、付加保険料を高く設定しすぎているか、純保険料の水準を高く見積もりすぎているかのいずれかです。そして、そのいずれかが原因であれば、付加保険料を低くするか、純保険料の水準を適正なものにするかという策が考えられます。
 
あるいは、記事内で弁護士が言っているように利用率が上がれば、総支払保険金と総収入保険料のバランスが変わり、損害率も上がります。
「裁判沙汰はちょっと… 「弁護士費用保険」利用者わずか0.05%」
http://www.sankeibiz.jp/econome/news/120601/ecc1206010616000-n1.htm
SankeiBiz 2012.6.1)

「保険に加入しているのに、気づかずに使っていない人も多いはず」と指摘するのは、大阪弁護士会総合法律相談センター運営委員会で弁護士費用保険のPRなどを担当する木村圭二郎弁護士。同会は所属の弁護士に対し、依頼者に弁護士費用保険が使えないか、契約内容を確認してもらうよう呼びかけているという。
木村弁護士は「弁護士費用は高いのでは、と依頼するのをためらっている人もぜひ保険を活用してほしい。そのためにも保険会社と連携してPRしていきたい」と話している。

ただし、弁護士費用保険が使えるケースにおいて、すべての場合で賠償額が増加して被保険者にメリットが生じるわけでもないことを考慮する必要があります。
おそらく、人身事故の場合には弁護士費用保険を使うことに意義があることが多いけど、物損事故の場合にはメリットが少ないのではないかと思っています。人身事故の場合には、加害者側の保険会社は最初は自賠基準での賠償を提示するのが一般的ですが、この基準が低くて弁護士を入れて交渉することに意味があるからです。
そもそも、加害者側の提示する賠償額に異議がなければ、弁護士費用保険が使えるケースであっても使う必要性が全くないことに留意する必要があります。
 
さて、上記のとおり『保険料下げ』と『利用の推進』が考えられますが、このことによって関係者の受ける影響をまとめてみました。

これを見ると、当事者であり、そのことによって利益を得る立場である弁護士が『利用の推進』を言うのは、自身の利益を増大させるためではないかという疑念を抱かざるを得ないです。
勿論、弁護士費用保険を利用することによって被保険者の損失が減る場合に、その利用を推奨することに異議を唱えるものではありません。ただ、PRを弁護士がしようと言うことに疑義を感じるということです。