セゾン自動車火災のおとなの自動車保険

セゾン自動車火災保険株式会社は、従来からあったセゾン自動車保険を大幅に改定し、「おとなの自動車保険」というペットネームを付けてインターネットで2011年初頭から大々的に宣伝して販売をするようになりました。
このことと会社の立場としての話を先週「セゾン自動車火災のネット進出」(2011.5.27)で書いたので、今度はおとなの自動車保険そのものにフォーカスして書くことにします。
 
保険そのものの中身に入る前に…
セゾン自動車火災は社運を賭けているのではないかと思えるほど、おとなの自動車保険に力を入れているように感じます。
同社のホームページにおいて真っ先に目に飛び込んでくるのはおとなの自動車保険へのバナーですし、そもそもおとなの自動車保険の発売に合わせて2011年1月11日にホームページをリニューアルしています。
俳優を起用してCM等の宣伝を大々的に展開してブランディングにも相当のコストを費やしていると思います。
また、「おとなの自動車保険」というペットネーム自体も、商品の特徴を誰にでも分かるように現しており、そして覚えやすくもあり、非常によく考えられています。
もともと同社は以前からネットでも自動車保険を販売してはいたのですが、その以前とはまったく力の入れ具合が違います。
同社のマーケット企画部あたりが質的に相当変わってきたのではないかと思います。
 
おとなの自動車保険は、その名のとおり記名被保険者が40・50歳代のときに保険料が安くなるように設計されています。
商品戦略的に40・50歳代をターゲットにして保険料で他社より優位に立つことによって契約を集めようとしていることは明らかです。おそらく、この層はどこの保険会社にとっても獲得したい層でしょうから激戦区と言えます。
このあたりは、競争の激しくないところで契約を集めようとしているイーデザイン損害保険株式会社と180度異なる戦略です。
その激戦区に保険料で勝負をかけにいったことは非常に興味深いです。契約量自体は自動車保険の正味収入保険料から推測すると一定取れているようです。この商品戦略が成功だったかどうかは、多分あと2年くらいすれば損害率という形で見えてくるのではないかと思います。
ただし、それが見える前にそんぽ24損害保険株式会社と合併するようなことがあれば、分からなくなってしまいますが。
 
40・50歳代のときに保険料が安くなるということは、年をとって60歳以降となると保険料が高くなるということを意味します。
また、保険料カーブを描いたときに40・50歳代の底が深ければ深いほど、高齢になる場合の上昇度合いが高くなります。
このことは、継続率に影響を及ぼし、契約量を頭打ちにする懸念があります。
ただし、この点に関しては、他の損保でも記名被保険者の年齢別料率を取り入れるところが多いため、どこで契約しても保険料が高い状態となり、継続落ちはそれほど起こらず問題にならないかもしれません。
 
おとなの自動車保険で興味深い点は他にもあります。
あまりアピールされていませんが、ロードアシスタンスが特約になっており、希望しないなら外すことができるようになっています。
これは同社にとって保険料で競争する上で優位に立てます。
また、ロードアシスタンスが特約ですから契約締結時に補償されている内容は必ず保障されています。保険会社都合でいつの間にかサービスがなくなってしまって、いざ利用しようとしたら利用できなかったということが絶対にありません。
なぜなら、サービスは金融庁の認可が不要で保険会社が正にサービスとして行っているに過ぎないものであるのに対し、特約(基礎書類である事業方法書の一部)の変更は金融庁の認可を要し、契約者不利となる変更については遡及適用はまず認められないからです。
実際、セゾン自動車火災のサイトを見ると、14.4%の契約がロードアシスタント特約なしとなっています。デフォルトで特約ありでしょうから、なしにした契約者は惰性でそうしたのでなく、自分の意思でなしを選択したのでしょう。
つまり、言い換えればロードアシスタント特約なしにしたいというニーズが14.4%あったということです。
そのことから、ロードアシスタンスを任意付帯の特約にするという選択をしたことは正しかったのではないかと思います。
ロードサービスそのものに関する話は「付帯サービスについての豆知識(其の弐)」(2008.8.31)あたりで書いたので、今回は深追いしないことにします。
 
車両保険については、イーデザイン損保との競争を意識してのことだと思いますが、割とオプションが豊富です。
「車両新価特約」,「車両無過失事故に関する特約」を持っており、これらの特約を希望する契約者を引き受けることができるようになっています。
また、「契約自動車の盗難事故対象外特約」,「車両「洪水・高潮・水没等」対象外特約」も持っており、他のダイレクト系損保では盗難リスクが高いために車両保険を断られるような車などであっても、これらの特約を付けて車両保険を引き受けられるようになっています。これは、営業面から見ても、保険引受リスクの観点から見ても妥当であり、ダイレクト系損保にしてはよくできています。
さすがに地震を補償する特約は持っていないようですが。