保険商品の他社比較(原則)

ダイレクト系損保で自動車保険の他社比較をしているところがいくつかあります。
他社比較をするのは、自社商品が優れていることをアピールして購入してもらい、自社が利益を得るのが目的です。
なお、損保会社が自社商品同士を比較すること,乗合代理店が自分の取り扱っている保険同士を比較すること,保険会社と金銭的に繋がっていない第三者が保険の比較をすることについては、比較した当人が比較による特段の利益を得ないことから、今回のお話に含めないことにします。
 
比較する際の大原則として、不当な方法で自社商品を優位に見せるのはNGということは常識的に理解できることですし、保険業法第300条第1項第6号で禁じられています。

(保険契約の締結又は保険募集に関する禁止行為)
第300条 保険会社等若しくは外国保険会社等、これらの役員(保険募集人である者を除く。)、保険募集人又は保険仲立人若しくはその役員若しくは使用人は、保険契約の締結又は保険募集に関して、次に掲げる行為(次条に規定する特定保険契約の締結又はその代理若しくは媒介に関しては、第1号に規定する保険契約の契約条項のうち重要な事項を告げない行為及び第9号に掲げる行為を除く。)をしてはならない。
 (略)
6.保険契約者若しくは被保険者又は不特定の者に対して、一の保険契約の契約内容につき他の保険契約の契約内容と比較した事項であって誤解させるおそれのあるものを告げ、又は表示する行為
 (略)

この保険業法第300条第1項第6号がポイントですが、"誤解させるおそれ"とは具体的にどのようなものを指すのでしょうか?
私の知る限りでは、ここまでやれば"誤解させるおそれ"にあたらないと示されているものは現時点において存在しません。いずれ近い将来に基準ができるものと思ってますが。
逆に、これは"誤解させるおそれ"にあたるからやるな!というものはあります。
「保険募集の適正な活動に関するガイドライン」のP.10
http://www.sonpo.or.jp/about/guideline/pdf/index/tekiseiboshu_guideline.pdf

・内容・条件の違う他社の保険契約と、意図的に保険料のみを比較して、自社の保険料の方が安くて有利であると説明した。

他にもNGの例はいくつも考えられるのですが、常識的すぎるせいか具体的には書かれていません。
 
なお、国内損保のほとんどは日本損害保険協会のメンバーとして、外資系損保のほとんどは、外国損害保険協会のメンバーとして、それぞれのガイドラインに従うこととしています。ただし、両者のガイドラインは同一ではないようで、日本損害保険協会のものの方がきっちりと作られているようです。先に示したガイドライン日本損害保険協会のものです。
日本損害保険協会ガイドラインのページ」
http://www.sonpo.or.jp/about/guideline/
「外国損害保険協会のガイドラインのページ」
http://www.fnlia.gr.jp/guideline/information.html
とは言え、ガイドラインで定めていないから冒頭の原則を無視したことをやって良いという理屈にはならないので、ここでは明文化されている日本損害保険協会ガイドラインをベースに進めることにします。外国損害保険協会のサイトにあるものは貧弱すぎて、これがすべてなのか逆に疑わしいです。
 
ちなみに、業界としては比較を妨げない方向に向かっているようです。おそらく、大手損保は本音では反対でしょうけど。
比較を容認する流れということは2008年3月に作られた「保険約款のわかりやすさ向上ガイドライン」のP.3を見れば分かります。
"保険約款が活用される局面"として"契約締結前"において"保険商品の内容を確認し、比較・選択する。"ことを想定して、"求められる工夫"として"保険商品の内容の確認および比較・選択を容易にする工夫が重要"と要求していますから。
なお、このガイドラインは新しいので、まだ一部の会社の一部の種目でしかガイドラインに従った保険約款の修正が済んでいません。尤も、修正が済んでいるのに保険約款を契約前に公開しない三井住友海上のような会社もありますが。