日本興亜損保の自動車保険改定(3)

ある伝手で日本興亜損保のカーBOX(くるまの総合保険)の証券セット用の約款(安心ガイドというものです)が手に入ったので、先日「日本興亜損保の自動車保険改定(1)」で書けなかったことを書いてみます。
こないだのブログでは、特約について書いたのですが、今度は補償についてです。
 
日本興亜損保のカーBOX(くるまの総合保険)の普通保険約款は補償に関しては4つの章からなっていて、その概要は以下のとおりです。

第1章 賠償責任条項

対人賠償と対物賠償について定めている条項です。
単なる対人賠償・対物賠償ではない部分や独自内容として、以下のものがあります。

  • 対人臨時費用保険金(死亡 10万円,入院 2万円)
  • 同僚災害を対人賠償の免責事項から除く特則が含まれている
  • 対人賠償・対物賠償について他車運転危険担保を定めている

後ろの2つは他社では一般的には特約でやっている内容です。それを普通保険約款に組み込んでいるということです。
 

第2章 人身傷害条項

人身傷害について定めている条項です。もともと成立の経緯からして人身傷害は各社固有の部分が多く、他の傷害に関する補償との兼ね合いもあり、分かりにくいものです。ちなみに、カーBOX(くるまの総合保険)には、搭乗者傷害の死亡補償と自損事故傷害は特約にもありません。傷害系に関するメインはこの条項になっています。
単なる人身傷害ではない部分や独自内容として、以下のものがあります。

  • 人身傷害入通院一時金を、部位・症状別で支払う。ただし、5日未満は定額1万円。
  • 被保険者範囲に搭乗者傷害の被保険者が含まれている
  • 被保険自動車以外の交通事故危険についても補償範囲に含めている
  • 交通事故の定義の中に「建物または交通乗用具の火災」が定められている

後ろの2つは他社では一般的には特約でやっている内容です。それを普通保険約款に組み込んでいるということです。
 

第3章 車両条項

車両保険について定めている条項です。
単なる車両保険ではない部分や独自内容として、以下のものがあります。

  • 搬送・引取費用として保険金額の10%(10万円限度)を支払う
  • 全損時諸費用保険金の支払いがある
  • 車両盗難対策費用保険金の支払いがある
  • 他車運転危険担保を定めている

付随的な保険金支払に関するものが多い印象を受けます。
 

第4章 事故・故障付随費用条項

他社では特約にしている内容です。臨時宿泊費用保険金,臨時帰宅費用保険金,搬送・引取費用保険金,キャンセル費用保険金について定めている条項です。金銭での支払いについて規定されていますが、現物支給も可能という内容になっています。
なお、どこにも明記されていませんが、付帯サービスである「くるまの安心サービス」の一部がココにある可能性があります。なお、この補償は不担保にする手段がないようです。
 
以上の現在の補償内容とニュースリリースされた内容を突き合わせて推測してみると…
 
「〜「わかりやすい」「社会にやさしい」をコンセプトに〜
 2008年12月より自動車保険を改定します!」
http://www.nipponkoa.co.jp/news/whatsnew/2008/news2008_08_14_kaitei.pdf
日本興亜損害保険株式会社 ニュースリリース 2008.8.14)

◆補償内容をわかりやすさの観点から見直しました。
人身傷害保険の入通院一時金、搭乗者傷害保険の医療保険金を大幅に簡素化し、補償内容を充実させた「一時金払」を新設しました。
また、「駅の改札内で転んでケガをした場合」を人身傷害保険の補償の対象外とするなど、お客様が自動車保険で請求できるとは気付きにくい補償を廃止しました。

 
前半については、平たく言うと
「搭乗者傷害「医療保険金・日数払」担保特約」を廃止する
普通保険約款の人身傷害条項の入通院一時金の補償内容を広げて保険料を上げる
ということではないかと推測されます。
カーBOX(くるまの総合保険)は搭乗者傷害保険の内容が人身傷害保険に組み入れられており、搭乗者傷害保険単独に関する特約はほとんど残っていません。傷害周りで具体的にやることと言ったら、この程度のような気がします。(私の想像力が貧困なだけで、実はもっとマシな内容の可能性もあります。)
傷害関係の一本化は分かり易さの観点で簡潔・単純にするなら良い方向と言えますが、内容の見直しはせずに単に合体させただけということなら強制付保になった分だけ性質が悪くなったと思います。
 
後半については、他社が特約でやっている人身傷害の交通事故危険補償特約を普通保険約款の中に組み込んでしまっていることによって、契約者に特段の説明の機会もなく、建物内火災や構内事故が補償範囲にしてしまっていることを改善するものでしょう。
改善方法としては、
・補償内容を見直す(料率の変更,金融庁の認可要)
・契約者に含まれることを説明する
の2点が考えられます。補償内容の見直しを日本興亜損保は選択したということです。
これは特約でやっている会社も自動付帯にしているなら同じ問題があります。任意付帯なら、契約者の意思が入るし、その際に補償の確認をするはずなので大丈夫かと思いますが。
なお、補償内容の見直しのついでに交通事故危険を普通保険約款から外して特約化することは考えなかったのでしょうか?おそらく考えたと思います。しかし、実は人身傷害補償というのは儲かる部分なので、多くの契約者に厚い補償のままつけてもらいたいというのが本音かと思われます。(これは保険料の安さで勝負するダイレクト系損保以外は、多分どの会社も同じです。)
そこで今回の改定内容にしたのでしょう。
 
個人的な印象としては、リリース資料のページ数の割に保険としての改定内容はかなり小さいもののように思えます。ここ1年で他社がやった自動車保険の改定(東京海上日動のトータルアシスト,損保ジャパンのONE-Step,三井住友海上のGK,あいおい損保のトップラン)に比較して、改定規模が一回り小さいようです。保険法対応の前にちょっと整理しておこうかくらいの感じです。
それに、どうも、契約者の財布にはやさしくない方向のようです。損害率が悪いから値上げというのなら理解できますが、個社事情による単価UPのための値上げということなら、そのうち契約者に見捨てられることでしょう。