損害保険は四角い三角?

よく生命保険のトークとして「貯蓄は三角、保険は四角」で、貯蓄と保険の違いを説明するようです。非常に分かり易く、それぞれの仕組みの本質をついたうまい表現だと思います。
 
損害保険の場合も、同じように考えることができます。第3分野はちょっと横に置いといて、第2分野をターゲットにすることにします。
不慮の事故による損害に対して、手持ち資金で対処する方法(自家保険)もあれば、保険を利用する方法もあります。後者の場合は、保険始期から保険終期まで保険金額分の補償がある・・・つまり「保険は四角」と言えます。
 
しかし、長い目で見るとそうは言えなくなってきます。損害保険は保険期間が1年のものが基本です。第2分野で一般的な保険というと、火災保険や自動車保険が挙げられます。このうち、物保険については保険金額は特に約定がない限り時価となります。そのことは、商法および保険法(保険法施行までは商法に従い、施行後は保険法に従う)に定められています。
【商法】

第六百三十八条 保険者カ填補スヘキ損害ノ額ハ其損害カ生シタル地ニ於ケル其時ノ価額ニ依リテ之ヲ定ム
②前項ノ損害額ヲ計算スルニ必要ナル費用ハ保険者之ヲ負担ス

【保険法】

(損害額の算定)
第十八条 損害保険契約によりてん補すべき損害の額(以下この章において「てん補損害額」という。)は、その損害が生じた地及び時における価額によって算定する。
2 約定保険価額があるときは、てん補損害額は、当該約定保険価額によって算定する。ただし、当該約定保険価額が保険価額を著しく超えるときは、てん補損害額は、当該保険価額によって算定する。

物の価格は、新品だった時から経年減価により時を経るごとに下がってきます。つまり、時価は下がるので、保険金額もそれに応じてだんだん低い金額で保険契約をするということになります。
そう考えると損害保険というのは、右肩下がりで段々高さが低くなる四角形の集まりということになります。
万が一、不慮の事故による損害が起こったときに、元の状態に復旧したいと思っているなら、その低くなった分は自分で埋めなければなりません。幸い、なだらかに低くなるので、その部分は貯蓄することで備えることができるでしょう。
時価で保険契約をするというのはこういうことなんだと意識している人がどれほどいるか、募集する側はそこまで説明しているのか疑問です。時価で契約したら、そんだけ分しか保険金が出ないのできっと復旧はできませんよで説明が終わっている気がします。
勿論、最初から再調達価格で保険金額を約定した保険契約を結ぶという手をとれば、その必要もありません。四角形の高さは変わりませんから。
 
火災保険で各社が再調達価格で契約させるものばかりを売るのは、貯蓄を含めた総合的な説明をできないと見ているからなのではないかと思えます。
それ以外にも、再調達価格で契約させれば保険料が高くなるので、保険会社が儲かるからというのもあるでしょうけど。