損保ジャパンの火災保険改定

日経が酷い記事を書いたおかげで、損保ジャパンがその訂正のために火災保険の改定についてのニュースリリースを出しました。(本日、この内容がこのタイミングで出されたということはそういうことを意味していると思います。)
さすがに保険会社が書いた内容だけあって、これならどういうことかはっきり分かります。
2つの改定に分かれているので、トピックも別建てにすることにし、こちらでは第1弾の改定について書くことにします。
 
「個人向け火災保険の全面的見直し」
http://www.sompo-japan.co.jp/news/download/200810061500.pdf
(株式会社損害保険ジャパン ニュースリリース・トピックス 2008.10.6)
 
リリース資料に書かれている改定内容は2点です。

(1)個人用新価保険特約の新設
    (略)
 時価額を基準としてご契約いただいている契約の場合は、損害の額から経年減価や使用による消耗分を控除して保険金をお支払いするため、建物の修理費用や再築に必要な費用が保険金だけでは賄えないケースがありました。また、時価額基準でご契約いただいている長期契約のお客さまからは、昨年度から実施してきた火災保険の調査点検の際に、再調達価額基準への変更のご要望を多数いただいておりました。
 こうした事情をふまえ、保険金のお支払い時の評価方法を時価額基準から再調達価額基準に変更する「個人用新価保険特約」を新設することとしたものです。この特約の付帯により、罹災時には再調達価額を基準として保険金をお支払いすることができます。
 時価額基準で既にご契約いただいている約40万件の長期契約のお客さまには、2008年12月からダイレクトメールで「個人用新価保険特約」をおすすめし、特約付帯の意思確認を行ったうえで、2009年4月1日以降、追加で付帯します。
 この特約を追加で付帯していただくことによって、超過保険問題(注3)(「火災保険を1,000万円で契約していたのに、全焼しても700万円しか支払われなかった」といったトラブル等)を未然に防ぐよう努めてまいります。

私が予測していたのと違って、損害額の認定基準の変更は普通保険約款の変更ではなく、特約の新設でやるそうです。よく考えたら、昨今の方針は、例え契約者有利な内容であっても契約者に告知して選択してもらうこと,契約時の普通保険約款・特約の条文は変更しないことが一般的なので、特約による中途付帯方式をとるのが自然です。
それはともかく、主旨としては、時価基準で締結した契約であっても損害額の認定基準は再調達価額で行うということで間違いなさそうです。
これって、早い話が代理店が適切に保険金額の設定をしなかったから、超過保険になってしまい、保険事故が発生したときに損調部隊がきっちりと仕事をしたためにクレームになったということです。時価を基準として付保するという契約だったら、ハナから時価で保険金額を設定しておけばよかったという話です。
無能な代理店の辻褄合わせを商品改定で行うというのはどっかおかしいです。寧ろ、代理店教育に力を注ぐべきだと思うのですが…。まぁ、契約者にとっては歓迎すべきことなのかもしれませんけど。
こう言っちゃあなんですが、こんなくだらない改定を誇らしげにやるのは、損保ジャパンくらいじゃないかと思います。ちなみに、このリリース資料では、そもそも原因の一端が代理店にあったことも、代理店教育にも注力することも一切書かれていません。
 

(2)異動規定の簡素化
 現在、火災保険では、最長36年までの保険期間の契約をお引き受けしています。この保険期間の中途で、お客さまからのご申告やご要望があった場合には、契約内容の変更やそれに伴う保険料の返還・請求を行っています。
 しかしながら、過去にさまざまな商品改定や料率改定などが実施されてきたために、この変更手続きにおいて、商品やお申し出内容により変更保険料の計算方法が異なり、手続きに多くの時間を要し、お客さまにご不便をおかけしていました。
 そこで、損保ジャパンでは、従来、商品やお申し出内容などで異なっていた計算方法を、お申し出前の契約内容に対する保険料とお申し出後の契約内容に対する保険料の差額をもとに計算する、簡便な方法に統一して、契約内容の変更手続きを効率化します。

計算方法が変わることによって、一方的に追徴保険料が安くなる/返戻保険料が高くなるということなら、契約者にとって歓迎すべきことですが、これはそういう類の話ではありません。
この改定の真の目的は、契約者に不便をかけていたからではなく、営業現場の負荷を減らすためだというのはちょっと考えればすぐに分かることです。
言葉で誤魔化したってすぐにばれるのだから、契約者のためにという余計な事を言わずに改定内容だけを伝えればいいのにと思います。
 
この2点を見る限りでは、契約者のための改定とは到底思えません。日経新聞のあのどうしようもない記事がなければ、サイトに一般公開されなかった内容のような気もします。
もしかしたら、ここに書かれていないこととして、募集ツールや約款の平易化が入っているのかもしれませんが。