AIG に関する金融庁長官コメント(10/6)

10/6(月)夕方に行われた佐藤金融庁長官の記者会見が金融庁のサイトに掲載されています。
既にマスコミから公開済みの内容ですが、ソースとして意味があるので取り上げておきます。
 
「佐藤金融庁長官記者会見の概要」
http://www.fsa.go.jp/common/conference/com/2008b/20081006.html
金融庁 記者会見 2008.10.6)

問) 保険の関係で、米保険大手のAIGアメリカン・インターナショナル・グループ)が、国内でも営業しているアリコの売却と、それに加えて、AIGエジソン生命AIGスター生命の売却方針を発表しました。これについての金融庁としてのお考えをお聞かせください。また、それに絡んで、売却のスキームの関係で、保険契約の分割譲渡を金融庁のほうとしても認めるのか認めないのかという報道が一部にありますが、その契約の移行に関してのお考えもお聞かせください。

答) 10月3日金曜日にAIGが事業再編計画を公表し、日本のAIGグループの保険会社につきましては、生命保険会社3社、すなわち、アリコ、AIGスター生命AIGエジソン生命を売却する意向を示したところでございます。

お尋ねの、我が国保険業界の再編につきましては、民間企業同士の経営判断に属する事柄でございますので、当局としてのコメントは差し控えたいと思います。ごく一般論として申し上げれば、保険会社各社においては、それぞれの経営判断の下で、しっかりとした財務の健全性を維持しつつ、顧客のニーズにマッチした質の高いサービスを提供していっていただく。そういった事業展開に取り組むことによって、経営基盤の強化と顧客サービスの質の向上ということの実現につなげていっていただくとありがたいと思っております。

これは、お尋ねの中には入ってございませんけれども、念のために申し上げておきますと、今回のこの3社の売却、あるいは株主の移動による我が国における保険契約者への影響については、一般論として、仮に保険会社の株主が変更した場合であっても、既存の保険契約に直接に影響が及ぶものではないと考えております。保険会社は、現地法人の形態であれ、支店の形態であれ、我が国において引き受けた保険契約の額に見合った責任準備金を積み立てることとされておりまして、契約者の保険の支払いが確保される枠組みとなっているところでございます。

いずれにいたしましても、この我が国にあるAIGグループの保険会社については、今後の動向を注意深く見ていきながら、引き続き適切な監督に努めていきたいと思います。

それから、保険契約の移転単位の見直しにつきましては、昨年秋、金融審議会金融分科会第二部会において議論が行われまして、12月の第二部会報告では、十分に議論を深めつつ、引き続き丁寧に検討すべき、と位置づけられたところでございます。本件につきましては、本年9月、第二部会より保険の基本問題に関するワーキング・グループに対して、今後の検討テーマの一つとして検討が付託されたところでありまして、同ワーキング・グループで、今後議論されていく(テーマの)一つであると考えております。ただし、本件については現時点において、いつから議論を行うのか、いつまでに結論を出すのかという具体的なスケジュールは固まっていないと理解しております。いずれにいたしましても、金融庁としてはその議論にも注視していきたいと思っております。

問) 今、おっしゃいましたけれども、AIGの保険についてなのですけれども、実際に契約者の方はすごく不安に思っていらっしゃると思いますけれども、改めてそのような皆様に対してのコメントをお願いいたします。

答) 先ほど申し上げましたように、我が国の保険業法に基づく保険会社の財務、経理のあり方につきましては、我が国で契約された保険契約については、それに対応した責任準備金を積み立てることとされております。そういう枠組みが整っているわけでございまして、今般の米国におけるAIGグループの問題が表面化する以前から、我が国における3社の営業というものは、こういったルールに則って、適切に財務の健全性を維持しながら行われていたと思っております。加えまして、日本にあるAIGグループの生命保険会社3社自身が、以下のようなメッセージを発表しているということでございます。すなわち、今般のAIGの事業再編計画に関して、当該3社の株主が変更となっても、顧客の保険契約が変更するものでないこと、サービス体制等についても変更がないこと、こういった点を発表していると承知しております。

あたかも他人事のような言いぶりですが、それは毎度のことなのでおいときます。
枕詞として「一般論として」と付けていますが、一般論から外れるケースは個別の特例として説明がなされるはずなので、AIG の件も一般論の中で捉えればよいと思われます。
従って、「仮に保険会社の株主が変更した場合であっても、既存の保険契約に直接に影響が及ぶものではないと考えております。」と述べていることは、AIG について当てはまることですし、既存の保険契約の契約内容を変更することについて金融庁が認可をすることも現時点では想定していないことを意味しています。
 
保険契約の移転単位の見直しの論議については、テーマとして取り上げられているが、いつまでに結論を出すのかまったくスケジュールされていないと言っています。この発言は、金融審議会 金融分科会第二部会 保険の基本問題に関するワーキング・グループの動きと合致します。
このWGでは、直近のテーマとしてこの件を取り上げていないことから、この話は AIG の件に関して全然間に合わないので、無関係と言えそうです。現在の報道を見ていても、一括で買えるところ以外は話にならないという前提で動いているようです。
先月(9/17)のブログで最後にちょこっと触れたのですが、先にこのテーマを取り上げて欲しいもんです。ただ、余計な憶測をすると、今の協会長会社が業界再編に否定的(というか下手すると当事者になりかねない)な日本興亜損保なので、そこが代わるまで塩漬けにされるかもしれません。