保険法施行後の疑問…重複保険の事故受で

前回のブログ「超過保険…今・未来」で書いたとおり、保険法の第二章 損害保険 第二節 効力の第9条(超過保険)には、超過保険について以下の規定があります。

(超過保険)
第九条 損害保険契約の締結の時において保険金額が保険の目的物の価額(以下この章において「保険価額」という。)を超えていたことにつき保険契約者及び被保険者が善意でかつ重大な過失がなかったときは、保険契約者は、その超過部分について、当該損害保険契約を取り消すことができる。ただし、保険価額について約定した一定の価額(以下この章において「約定保険価額」という。)があるときは、この限りでない。

つまり、保険価額を超えた超過分は取り消すことができるとあることから、超過分相当分の保険料を返してもらうことができるはずです。
 
例えば、ある契約者が保険価額2000万円の建物に対して、火災保険のことを知らなかったために、A損保に2000万円で付保、B損保に2000万円で付保してしまったとします。所謂、超過重複保険です。
ある時、保険事故があって全損したとします。この時に初めて、2000万円しか保険金が出ないことを知ったとします。
本来は、A損保およびB損保のそれぞれから1000万円の保険金をもらって、超過分相当の保険料を返還してもらうべきです。
しかし、この契約者がA損保に対して事故報告・保険金請求をすると同時に、B損保に対して契約取り消しの申し出をしたとしたらどうなるのでしょう?契約者の立場からは、先に書いた手続きでも金銭的にはまったく同じ結果になります。手続きはこの方が楽かもしれません。
実は、契約者がA損保だけに保険金請求しても、保険法第20条第2項によってA損保からの請求でB損保は1000万円の保険金支払の負担が生じます。(A損保がこの契約が重複保険だということを知っていることが前提となります。)
しかし、B損保の取り消し手続きが完了してしまっていれば、A損保は請求できなくなります。
 
こういうことが万が一起こったら、どうなるのでしょうか?
もしも例のように事故後の契約取り消しが無条件で認められるなら、先に事故受した損保が相手先の損保に保険金請求して自社の契約を取り消すように契約者を唆すことが起こりうるかもしれません。