物価変動と火災保険金額の調整

最近の火災保険は長期のものでも、再調達価額で価額協定して付保するケースが多いようです。その場合、将来物価の変動があって今よりも安い/高いコストで再建できたらどうなるのだろうと思う人がいてもおかしくありません。
正にYahoo!知恵袋の保険のカテゴリにそういう質問がありました。
「火災保険で、再調達価格で契約しているとして物価が下がったりなどで建築コストが...」
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1023780110

火災保険で、再調達価格で契約しているとして物価が下がったりなどで建築コストが下がった場合、保険金額が下がることもあり得るのでしょうか?

この質問者が保険金と保険金額を意図的に使い分けているとしたら、この質問に対する直接の回答は『適正な保険金額で契約をしていた前提で、「保険金額調整等に関する追加特約条項」等が付帯されているなら下がることがありえます。』ということになろうかと思います。
なお、「保険金額調整等に関する追加特約条項」は株式会社損害保険ジャパンでの特約名称です。損保ジャパン以外にも同様の特約を持っている損保はあります。特約名称は各社で微妙に異なりますが、中身は概ね、物価変動等で再調達価額が変わったら保険会社からの通知で保険金額を変更するというもののようです。
 
ところで、この特約はいつ発動するのでしょうか?この特約の発動は、保険会社が保険金額を調整する必要が生じたときと定められています。
まさか保険会社が物件の再調達価額を常時ウォッチして一定のずれが出たら適用するということはできないでしょう。なぜなら、再調達価額の計算に必要な情報すべてを契約情報として持っていないでしょうから、論理的にシステムにて対応できないからです。
とすると、保険事故が起こったときに改めて物件の再調達価額を計算して、それとずれていたら、この特約を適用するのでしょうか?それをやるなら、価額協定の意味がまったくなくなってしまいます。
 
契約締結時に双方で合意した保険金額を保険会社が一方的に下げることは、普通は許されません。この「保険金額調整等に関する追加特約条項」はそこを一方的にやってしまおうという非常に大胆な特約です。契約者不利なことが起こりうるこの特約が、今度の保険法対応を乗り越えて存続するのか私は疑問に思います。