損保協会の次期中期基本計画

昨日、日本損害保険協会の定例記者会見の内容が同社サイトにて公開されました。
「定例記者会見(2009年3月19日)」
http://www.sonpo.or.jp/news/release/2009/0903_05.html
日本損害保険協会 ニュースリリース 2009.03.19)
その中で、最後に2009年度から開始する中期基本計画の概要についても公開されました。
「損保協会の第5次中期基本計画(2009年度〜2011年度)」
http://www.sonpo.or.jp/news/file/00416.pdf
 
この中期基本計画では事業の柱として以下の5項目を挙げており、その中でも特に1と2を注力事業とすると宣言しています。

1.消費者とのコミュニケーションの推進
2.業務品質の向上に向けた取り組み
3.損害保険事業の基盤強化に向けた取り組み
4.社会の安全・安心への貢献
5.国際社会への働きかけ

 
「1.消費者とのコミュニケーションの推進」に関しては、目標・方向性として、以下の内容を掲げています。

消費者の声に誠実に対応し、満足度の高い相談・苦情対応を行うとともに、ADR機能を一層強化する。また、消費者と保険会社(代理店)の情報量のギャップを埋めるべく、消費者との直接対話、情報提供活動等をさらに充実させ、消費者が適切な商品・補償の選択ができる環境を整備する。

これは、冒頭に"消費者"とあることからも、主にリテール分野を対象とした施策のようです。ここで述べられているのは事後と事前の2つに分けられそうです。
事後の方は、照会・仲裁の取り組みです。特に、ADR に関しては、つい最近(3/6)金融商品取引法の改正案で盛り込まれたばかりなので、法が成立したらそれに則った制度の整備を行うことを言っているような気がします。尤も、この点に関しては、「格付会社とその格付の規制をJ-SOXで」で書いたとおり、既に存在しているので大した話にはならないと思います。
事前の方は、そもそも苦情が起こらないように消費者にわかりやすくきちんと保険に関する情報提供をするという内容だと思います。
わかりやすさに関しては、損保協会は「保険約款のわかりやすさ向上ガイドライン」(2008.3)や「保険約款および募集文書等の用語に関するガイドライン」(2008.6)を策定しましたが、これらはまだ損保各社の商品において、最近改定された商品を除けばほとんど実施されていない状況にあります。これは所謂約款の平明化として保険約款に関しては保険法対応と同時に実施されますが、それ以外の募集ツール(パンフレット,ご契約のしおりやWebサイト等)に関しても損保各社にアンケート等を通じて間接的に求めていくものと思われます。
また、損保各社は保険に関する情報を十分に消費者に伝えていないのが現状だと思います。損保各社または損保協会からの正しい情報の開示を十分にしないままであれば、契約者の保険商品の選択の自由を奪っていることになりますし、告知義務・通知義務違反に問うことも困難になってきます。保険約款の単純な開示すら、十分にできていないのが現状です。特に、保険商品の選択の話は、「みんなが主役、保険商品の比較に関する自由討論会」の報告結果を受けて損保協会で検討した結果をそろそろ出す時期が来ています。討論会で出た内容と異なる期待外れな検討結果が出ないことを祈ります。
 
「2.業務品質の向上に向けた取り組み」に関しては、目標・方向性として、以下の内容を掲げています。

ガイドラインの実施状況、コンプライアンスに係る取り組みのフォローアップ等による自主規制機能の実効性の向上を図るとともに、募集人の資質向上策の更なる検討を行う。

自主規制の実効性の向上に関しては、先にちょっと書きましたが、策定されたガイドラインの実施状況に関するアンケート等によって行っていくものと思われます。そもそも損保協会のガイドラインはあくまでガイドラインであって法律ではないので、各社にそっくりそのまま強要することはできないため、間接的に圧力をかけることになろうかと思います。ただ、個人的にはガイドラインが法で定めているものよりも固すぎるせいで、募集人に対して適切な指導ができていない面もあると思います。特に、比較募集に関する事項です。まずは、その点を改めるのが先決ではないでしょうか。
募集人の資質向上策に関しては、「損害保険募集人試験の更新制度」(2009.6開始)、「保険商品教育制度」(2009.11開始)を今年度から実施しました。これで一段落だと私は思っているのですが、これらとは別に何かやるということでしょうか?それとも、「保険商品教育制度」を強化する程度のことでしょうか?この表現ではちょっと分かりません。