10年定期保険のイロハ

生命保険の死亡保険(定期保険)に関連する質問としてでしょうか、Yahoo!知恵袋の保険のカテゴリに以下のようなものがありました。どのくらいの数値になるのか少々興味があったし、ヒマでもあったのでちょっと手をつけてみました。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1324369613

死亡率について調べてみたい思っています。
今の年齢から、10年間の間にどのくらいの人が死ぬのか?
具体的に20歳、30歳、40歳、50歳、60歳、70歳、80歳と10歳きざみで、10年の間にどの程度の死亡率になっていくのかを知りたいのですが、調べ方ってあるのでしょうか?

私は生保屋ではないので自信ないのですが、入手可能な資料からやるなら、厚生労働省公表の簡易生命表を元に計算することになろうかと思います。
現時点における最新の簡易生命表は以下のものです。
「日本人の平均余命 平成19年簡易生命表
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life07/index.html
厚生労働省 報道発表資料 2008.7.31)
ここには、男女別年齢別に1歳刻みの死亡率や生存率が載っています。
ある年齢の人が10年間の間に死亡する率を求めるには、以下(0)〜(9)の率を求めて、合算すればいいはずです。
(0) 今年中に死亡する率
(1) 1年間生存して、その次の1年で死亡する率
(2) 2年間生存して、その次の1年で死亡する率
(3) 3年間生存して、その次の1年で死亡する率
(4) 4年間生存して、その次の1年で死亡する率
(5) 5年間生存して、その次の1年で死亡する率
(6) 6年間生存して、その次の1年で死亡する率
(7) 7年間生存して、その次の1年で死亡する率
(8) 8年間生存して、その次の1年で死亡する率
(9) 9年間生存して、その次の1年で死亡する率
厳密にやるなら、満年齢と保険年齢の違いも考慮すべきなのでしょうが、そこまできちんとやるつもりもないし、面倒なのでそれは手抜きします。
 
実際にやるには、紙と電卓でもできそうですが、Excel を使った方が楽です。幸い、厚労省の簡易生命表Excel でダウンロードできるようになっています。ダウンロードしたブックには余計なところに空白が入っているので、空白行を削除して0〜105歳がずらっと並ぶ状態にしておきます。
 

手始めに20歳男性が10年以内に死亡する率でやってみます。
まずは、X年間生存する確率を Q列に出すことにします。(0)は"0年間生存"とみなすことにします。これは、20歳の人が20+X歳まで生存している割合なのだから、Q34に"=F34/F$34"と入れて、Q43までコピーすれば出せます。
次に、その次の1年で死亡する率を掛けたものを R列に出すことにします。それは、Q列の値にその行にある死亡率をかければいいので、R34に"=Q34*D34"と入れて、R43までコピーすれば出せます。
後は、=SUM(R34:R43) で求めたかった20歳男性が10年以内に死亡する率が出ます。
 
同じことを各年代・男女別に行った結果は以下のとおりです。左が男性、右が女性です。
20歳 0.0060435 0.0029860
30歳 0.0092415 0.0048395
40歳 0.0210691 0.0109263
50歳 0.0517927 0.0243014
60歳 0.1179240 0.0504735
70歳 0.2872156 0.1391215
80歳 0.6317411 0.4282036
 
ここまでやると10年定期の死亡保険の一時払保険料の純保険料率は目と鼻の先のような気がします。というのも以下(0)〜(9)の合計のはずですから。
(0) 今年中に死亡した人への死亡保険金
(1) 1年後に死亡した人への死亡保険金×1年分の現価率
(2) 2年後に死亡した人への死亡保険金×2年分の現価率
(3) 3年後に死亡した人への死亡保険金×3年分の現価率
(4) 4年後に死亡した人への死亡保険金×4年分の現価率
(5) 5年後に死亡した人への死亡保険金×5年分の現価率
(6) 6年後に死亡した人への死亡保険金×6年分の現価率
(7) 7年後に死亡した人への死亡保険金×7年分の現価率
(8) 8年後に死亡した人への死亡保険金×8年分の現価率
(9) 9年後に死亡した人への死亡保険金×9年分の現価率
それぞれの死亡率は先ほどやったとおりなので、後は現価率をかけるだけです。X年の現価率は 1/(1+予定利率)^X です。仮に予定利率を1%とおいて20歳男性で、S列に(0)〜(9)を出してみることにします。それには、S34に"=R34*(1/1.01)^(B34-B$34)"と入れて、S43までコピーすればいいはずです。
後は、=SUM(S34:S43) で20歳男性の10年定期の一時払保険料の純保険料率が出ます。
 
同じことを各年代・男女別に行った結果は以下のとおりです。左が男性、右が女性です。
20歳 0.0057714 0.0028504
30歳 0.0087923 0.0046017
40歳 0.0200130 0.0103783
50歳 0.0491811 0.0231151
60歳 0.1121706 0.0479762
70歳 0.2730587 0.1319746
80歳 0.6039325 0.4068907
これは、例えば、40歳男性が5000万円の10年定期に一時払で入ろうとした場合、1,000,650円の純保険料がかかることを意味します。勿論、営業保険料はそこに付加保険料が加わるので、これより高くなります。
逆に捉えると、営業保険料からこうやって計算した純保険料を差し引いたものが、付加保険料とも言えます。ライフネット生命保険株式会社が付加保険料を出していますが、計算の考え方は多分こんな感じなのではないかと思います。